ザースコ少佐
ショードファ人のザースコ少佐は結局3人の部下と一緒に在日チャマンカ総督府から脱出した。チャマンカ人の宇宙船を強奪し、ワープで地球を離れたのだ。
同胞であるショードファ人を裏切り、チャマンカ人の元からも離れたかれらに、帰る場所はない。
銀河を流浪するかれらの元にも、ショードファ軍がチャマンカ軍に破れ、ワキーファ准将が捕囚の身になったニュースは届いていた。
「ザースコ少佐。ここは思いきって、ワキーファ准将の救出に向かってはいかがでしょう?」
部下の1人が提案した。
「裏切り者の我々がか!?」
ザースコは驚いた。そんなふうに考えた事もなかったのだ。
「このままでは我ら4人、ただ真空の大海を放浪するだけの身で、最期には朽ち果てるだけです。無謀な計画かもしれませんが、やってみる価値はあるかと。裏切ったとはいえ、我ら4人、ショードファ人の愛国者です」
その場にいた他の2人も、賛同した。
「宰相閣下」
側近から声をかけられ、バサニッカはそちらを振り向いた。
「ショードファ人のザースコ少佐から入電ですが、いかがしますか? 直接閣下とお話ししたいと」
「誰だ、そいつは?」
「同胞を裏切って我々についておきながら作戦に失敗し、地球のチャマンカ総督府から宇宙船を強奪して脱出した男です」
バサニッカはアゴで、通信をつなぐよう指示した。
やがて彼女の眼前に、ショードファ人を映しだしたホログラムが現れる。
「お初にお目にかかります。宰相閣下。自分はショードファ宇宙軍所属ザースコ少佐です」
「裏切り者が、何の用か?」
「我ら4名、逃避行に疲れ果てました。かくなるうえは捕囚となったワランファ准将共々、刑場の露となる覚悟であります」
「まだ、准将がどうなるかは決まっておらん。チャマンカ帝国はこれでも法治国家でな。ワキーファの処遇は裁判によって決定される。貴様らが投降するのは勝手だが、やはり裁判でその行く末が決まるのだ」
「承知しました。それでは甘んじて裁判を受けましょう。もはや我らに行く場所はありません。現在我らの乗る船は、チャマンカ星に向かっております。座標もすでにそちらへ向かって送信しました」
「承知した。迎えの艦をよこすから、待っていろ」
「送信を確認しました」
横から側近が、声をかけた。
「送信された座標には、盗まれた宇宙船が確かにあります」
早速バサニッカの命令で、6隻からなる宇宙艦隊がザースコ少佐を迎えるために派遣された。
そしてザースコの乗る宇宙船と接触し、その船を囲むように6隻の艦が上下左右前後に各1隻ずつ配置され、チャマンカ星に向かって発進する。全部で7隻の船は、チャマンカ星の近くまで来て停止した。
その後武装したチャマンカ兵がマイクロ・ワープでザースコ少佐の乗る宇宙船に乗りこんだ。
そしてそこにいる4人のショードファ人の身体検査をして非武装なのを確認すると、数名のチャマンカ兵を強奪した宇宙船内に残し、他の兵は4人と一緒にマイクロ・ワープでチャマンカ星の首都へ降り立った。
首都は準光速ミサイルの攻撃で、悲惨な光景と化している。所々に廃墟と化したビルがあり、ザースコ達ショードファ人は、思わずそちらに目をやった。
「貴様らの蛮行の結果がこれだ」
チャマンカ兵の1人がそうつぶやいた。やがて4人はバサニッカの前に連行される。
「わざわざ、我らと会う時間を作っていただき、恐れ入る」
ザースコ少佐は、ピンクの毛並みに包まれた宰相に向かって話した。バサニッカは黒いトーガに身を包んでいる。
「なに、裏切り者がどんな面で現れるのか、好奇心が動いただけよ」
動物のクマに似たその顔には、冷笑が浮かんでいた。
「ワキーファや、捕囚となった他の同胞に会いたいか?」
「どちらでも。いずれにしろ、准将閣下や同胞達は、我らの顔等見たくないかと」
「かもしれんな」
バサニッカが鼻で笑う。




