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惑星ダラパシャイ

 その時だった。突然地震か台風のような、猛烈な衝撃が襲う。立つ事ができず、蒼介も夏映も床に叩きつけられた。

 けたたましい音が天井のスピーカーから鳴り響く。

 どうやらこれは、警報を鳴らしているようだ。スピーカーから地球の言葉ではなさそうな言語で、鬼気迫る声が聞こえてきた。

 ネックレス型の翻訳機をつけているが、何をしゃべっているのか理解できない。

 おそらくショードファ人の言葉だろう。今度ばかりは絶体絶命かもしれない。さらに大きな衝撃が襲い、蒼介は気を失った。



 ショードファ宇宙軍所属ワキーファ准将の乗る長さ1キロの宇宙戦艦グドンファは、チャマンカ軍との戦いに敗れ戦線を離脱し敗走していた。

 ショードファ艦隊が集結している宙域をチャマンカ軍に見破られ、奇襲攻撃を受けての敗北である。

 チャマンカ艦隊はショードファ軍の3倍の数の軍艦を誇り、惨敗は時間の問題だ。

 唯一の収穫らしき物が、ドローンを操縦していた地球人ソースケと、一緒にいたカエの捕獲だが、大した獲物というわけでもない。この2人がいなくなったところで大軍を擁する帝国軍は、痛くも痒くもないだろう。

「ワキーファ准将、チャマンカ軍の戦艦が前方に10隻ワープ・アウトしました。ダラパシャイ人の乗る艦です」

 同じブリッジにいるワキーファの部下が、脳波で准将の脳内に情報を送りこんでくる。 

 全長700メートル程の銀白色の戦艦が全部で10隻、銀貨をばらまいたような漆黒の大海に実体化した。敵艦のカタパルトが開き、次々に戦闘機が射出される。

 グドンファからも迎撃のため多数の戦闘機が射出された。すぐに見えないビームの応酬が始まった。

 ショードファ機もダラパシャイ機も半数は無人機でもう半数は有人機だが、1・5Gの重力下で生まれ育ったダラパシャイ人が操縦する戦闘機は普通の有人機ではありえない動きをするので戦闘能力が高かった。

 ダラパシャイ艦から吐きだされた小型強襲艦が次々と接近してくる。内部には、敵のバトル・ドール部隊が、ごまんと乗っているだろう。

 強襲艦はショードファ機の迎撃をシールドではねかえしながら、グドンファのシールド内にゆったりとしたスピードで突入してきた。ゆっくりした速度なら、シールドを突き破れるのだ。

 強襲艦から放たれたビームとミサイルが、グドンファの艦体に突っこんで穴を開ける。すると強襲艦の先端が開いて、中からバトル・ドール部隊が内部に踊りこんできた。

 ショードファ人のバトル・ドール部隊と戦闘ロボットが応戦するが、多勢に無勢。戦闘ロボットは次々と、倒されてゆく。

「もはや、これまでか」

 ワキーファが、苦い声で命令する。

「敵艦に量子テレポート通信を送れ。降伏する」



 目が覚めた。宇宙服を着た蒼介は、自分がベッドにベルトで縛りつけられてるのに気がついたが、無理もない。

 室内は重力がなかった。少し離れたベッドに、やはり宇宙服を着た夏映が寝台に縛りつけられている。彼女は目を閉じていた。どうやら眠っているようだ。寝顔を見るとスリーピング・ビューティーという言葉が似あう。

「目が、覚めたか?」

 聞いた事がない言語で呼びかけられたが、ネックレス型の翻訳機が、日本語に訳した。そちらを見たが、相手は地球人ですらない。

 身長は140センチくらいだろうか。その姿は全身サーモンピンクだった。

 頭の上に大きく広がった硬そうな傘が広がっており、頭部の下に首がなく、直接胴体にめりこんでいる。

 2つの目にはまぶたがあるが、目の半分ぐらいまでたれさがり、何だか眠そうな表情に見える。

 全身が硬そうな物質が覆われており、甲殻類のようにも思えた。2本の腕と2本の脚は丸太のように太かった。

「おれは、ダラパシャイ人のズロッシャイだ。チャマンカ帝国軍の命令で、ワキーファ准将率いる戦艦に攻撃をかけ、准将は降伏した。君ともう1人の地球人を救い出し、現在本艦は地球に向かっている。今眠っているもう1人の地球人も、命に別状はない」

「ありがとうございます」

 蒼介は、深々とお辞儀をする。

「自分は、一色蒼介と言います。本当に助かりました」

「重力区画に案内したいところだが、君達の惑星の1・5倍の重力に設定してあるのでちょっと無理かな。それが、ダラパシャイ星の引力なんだが」

「そうでしたか。ワキーファ准将が降伏したんなら、戦争はもう終わりですかね?」

「恐らくな。銀河系の各地で抵抗運動を続けていたショードファ人だが、組織的なレジスタンスを行うのはもう無理だろう。後は、戦争好きなバサニッカ宰相が今後どう動くかだ」

 ズロッシャイの口調には、ワサビと唐辛子が混じっていた。



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