第二十八話
あの日の事件のニュースは収まるどころか留まる事を知らずに世間に広がっています。そんな場所にいた私も連日事情聴取を受けています。
高校生だったあの時のように……。
ですが今は一人ではありません。他の皆さんも一緒です。もちろん事情聴取自体が一人で受けていますが、同じ立場を共有出来る人の存在は非常に大きいです。
あの後、私達は駅員さんの協力のもと生きていた全員が運び出されてそれぞれ病院へと搬送されました。一見怪我なく無事な人もいましたが、殆どの人が電車の中で大きく揺さぶられていた事も考えると検査は必要だったのかもしれません。
でも、不思議な事にあの時の電車は存在しなかった事になっています。そもそも遅延なんかもしていなかったみたいで、じゃあ私達は何の電車に乗ったんだという話に変わってきます。
これは警察には話せないですが。私が考えるに小鳥遊詩音が迎えに来たんじゃないかななんて思ったりします。
どちらにせよこんな幽霊騒ぎを警察が調査したとしても真実を掴めるはずがありません。ある意味夢物語と化してしまうわけですね。
それを肯定するかのように観月駅にあれだけあった血痕や死体は一切なかったそうです。
帆秋さんの言うように神隠しにあったんじゃないかな。なんて思ったりもしてしまいますね。
ところで生還したメンバーについてですが、皆さん適切な治療を受けて無事元の場所へと復帰しつつあります。
私の左腕はまだ完璧ではないですがそろそろ完治しつつありますし、林さんは半身麻痺になったものの病室で元気にしているみたいです。
他の方達は大きな怪我などはなかったので応急処置程度だったみたいですね。
さてそんな私の独り言ももうすぐ終わりそうですね。
というのは今とある人と待ち合わせしているんです。
「あ! 香苗。あんた来るの早いね」
「芽衣! 良かった。道迷わないでこれたみたいで」
「あんた私を馬鹿にしてるでしょ」
「いやいやしてないって。でも五年も意識なかったんだったら色々と変わっているでしょ?」
「だ、か、ら、それが馬鹿にしてるって言ってるの」
この笑顔は昔と変わりません。
外から見れば女子大生がじゃれているようにしか見えないでしょう。それでも私達は非日常へと足を踏み入れたものとしてもう二度と日常だけを見る事は出来なくなってしまいました。
そうであったとしても非日常から生還出来ない者達が殆どな中で、日常へ復帰出来た事に今はただ感謝しています。
こんにちは。三ツ木紘です。
今回初めてホラー作品を執筆してみましたがいかがだったでしょうか?
元々短編の予定でしたがあれよあれよと言う間にここまで長くなってしまいました。
中々時間が取れない中でなんとか「夏のホラー2020」に間に合ってよかったです。
これからも様々な作品を執筆していく予定ですので、もし宜しければこれからも引き続きご愛読頂ければと思います。




