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夢見る鹿島の星間戦争  作者: 遊観吟詠
十四章、カサーン撃滅戦
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14-(4) 司令官リリヤ

「見つけた!アレをる!」

 リリヤこと、アイリ・リリス・阿南あなんが喜々として叫んでいた。

 場所は高速母艦ズュギアヘレのブリッジ。いうまでもないがズュギアヘレは高速機動部隊の旗艦だ。

 

 部隊司令のリリヤは司令座から腰を浮かし、索敵結果のでた大モニターを指さしている。

 そう特戦隊へ向かっていたダーティーマーメイドの高速機動部隊は、当初から特戦隊を狙っていたものではなかったのだ。

 偶然発見し、リリヤは李紫龍りしりゅうの本隊へ報告。攻撃許可という流れだ。


 リリヤの横に控える北斗隊の若い副隊長で冷たい印象のメガネ男子の真神隼人まがみはやとは冷淡な眼差しで、

 ――こいつ。こういう悪運だけは強い。

 と苦く思った。

 

「ふふ。わかってたんだから。敵がいるってのはね」

 

 鼻高々のリリヤだが、真神は索敵を展開するときの上官リリヤの失態のさまを知っている。

 

 2日前、部隊の進路を決める会議――。

 リリヤを中心に、部隊高官たちがずらり。

 

 リリヤは小柄だが、整った顔に均整の取れたスタイルという容姿。ようは美人で見てくれはいい。そして二足機適性トリプルエスという空前の適性。加えて経歴も申し分ない。素行不良という悪評は誰もが耳にしたことはあるが、部隊高官たちは初めて目の前にした、この書類上だけはきわめて高い女を、

 ――小柄だが威儀のある女性だな。

 と意外に悪くない印象を持った。


 容姿の良さは人の印象を大きく左右する。リリヤの異常は一目見るだけはわかりにくい。

 部隊高官たちは最初は、あの頭のおかしい女と有名なリリヤという厄介を押しつけられたと不安を抱いていたが、いまは、

 ――意外にまともじゃないか。

 という安堵感。これなら無難に任務を終えて、すぐにでも本隊に合流できるという期待感を覚えた。

 

 だが、リリヤとの付き合いの長い真神だけが、

 ――バカめ。すぐにわかるぞ。

 と冷静な顔のしたで思った。

 

 部隊高官の1人が、

「敵は我々が第二星系外への攻撃を敢行するとは考えていないようですが、備えとして重要航路に防備の戦力を展開しています」

 という前置きのもと、

「この防備部隊のなかから手頃な敵を選びだし叩く。これでどうでしょうか」

 常識的な案を提示。

 

 ようは弱小な部隊を取りあえず叩き、手っ取り早く戦果をあげようという方針だ。

 状況を見るに無難な提案だった。なぜなら高速機動部隊の出撃は、総軍司令官である李紫龍の裁量にすぎない。

 

 ――第一執政は第二星系外への遠征を望んではない。

 というのが部隊高官たちの共通の認識。

 

 第二星系から少し先の航路に防備を展開する敵への攻撃なら現場の裁量として許されるだろうし、これならダーティーマーメイドの、

「遊撃部隊として第二星系外で戦いたい!」

 というわがままもクリアーできる。この案なら第二星系の外に一応でることになる。

 

 けれどリリヤは、この万事が丸く収まるような提案を、

「ふ~ん。つまんない作戦だよねそれ」

 と、あっさり却下。

 

 とたんに会議室内には、どんよりとした暗い空気。

 

 ――まさか敵後方深くへ、縦深攻撃じゅうしんこうげきをやる気か?

 部隊高官たちは目を伏せ、

 ――やはりババを引かされた。

 と舌打ちせんばかり。

 

 李紫龍がリリヤを嫌っているというのは、部隊高官たちの誰もが知っている。今回の高速機動部隊の編組など、リリヤを遠ざけたい李紫龍の体のいい厄介払いだ。やはり自分たちは、頭のおかしい女のおもりを押しつけられたのだ。

 

 すかさず副隊長の真神が、

「ダーティー・マーメイドは第二星系外への遠征をお考えですか? ですがそれは第一執政の意向に反します。いまの提案は悪くはありません。まずは手堅く戦果を一つです」

 と掣肘せいちゅうに入った。

 

 真神はリリヤをわざわざ二つ名で呼んで機嫌をそこねないように、ていねいに進言しつつも、

 ――はぁ。面倒くさい。

 と思う。いまの真神はリリヤの副隊長という立場がスライドし、リリヤの副官として高速機動部隊のナンバーツー的な立場だ。それに真神はリリヤとのつきあいも長い。自分がリリヤをある程度制御しなければ、とんでもないことになりかねない。

 

 ――バカな女だ。勝手に失敗していろ。

 と突き放せば。その失敗のつけは真神の評価へも影響する。


「だからよ。キング・ランス・ノールは第二星系外へでちゃイヤなんでしょ?」


「ほう。違うのですか。私はてっきり、ダーティーマーメイドなら高速機動部隊の少数と足の速さという特徴を生かし、敵後方へ縦深攻撃じゅうしんこうげきを望んでいると思いましたが」


「バカにしてんの?」


「まさか。我が隊長殿をバカにだなんて」

 

 真神が内心舌打ちしつつ表情は柔らか。下手にでた。その表情がリリヤのかんさわるなど、いうまでもない。


「やっぱりね。バカにしてるでしょ。でもバカはアンタたちなんだからね。リリヤを第二星系の外へだして失敗させよとしてるでしょ。わかるんだから」

 リリヤはそういうと、

「第二星系からはでない」

 と宣言。

 

 会議室には困惑が広がった。いまの第二星系内に叩くべき敵などいない。


「リリヤ、知ってるんだから。第二星系の中心へ少数の敵部隊が侵入しているっていう情報があったでしょ」


「ああ、あの各宇宙施設から通報のあったあれですか」

 

 真神がハッとして口にし、部隊高官たちの顔にも既知の色。

 だが、その第二星系内の敵には問題があった。


「カサーン方面へ向かっているというはわかっていますが、位置がはっきりしませんので探索作業からの開始になりますが?」

 

 真神からしても部隊の高官たちとしても、

 ――見つかるかわからない敵。

 より、

 ――いま位置が明確な敵。

 

 さっさと戦果をあげて本隊に合流してしまいたい。誰もが、この狂った女のおもりなど早く終わらせたいのだ。探索作業からとなると時間がかかる。

 

「不満なの? 第二星系外にではない。は、キング・ランス・ノールの意向だよ」


「いいえ、そんな。ご冷静な判断だと思いますよ」

 

 けれど、そう応じる真神も室内の空気も不満一杯。

 いまリリヤを十数人の失望と不信感がつつんだ。

 

 目、目、目。そして目。不信感一杯の目。リリヤへ向けられる負の人々の感情。

 

 リリヤが、

「司令官はわたし!」

 と叫び声。

 同時にガタッ! という机が倒れる音。

 リリヤが目の前の机を蹴倒けたおしたのだ。


「なにがよ! なにがいけないの! 正しいでしょ!」

 

 リリヤが手近な男へ掴みかかっていた。

 なお、リリヤの一番近くにいた真神といえば早々にスッと身を引いていた。情緒不安定のリリヤが、突如激昂とつじょげきこう、暴れだすなどままあることだ。リリヤの副隊長の彼にはこんなことは慣れっこ。

 

 ――癇癪かんしゃくを起こすな。

 と予感すれば、被害をうけないようにリリヤの視界からフェードアウトだ。


「キングの意向は第二星系からでない! お前らはリリヤが嫌い! しかたなくついてきてるって知ってる! だからリリヤはアンタたちの事考えて、第二星系外へ出ないって方法を得を一生懸命考えたのに! リリヤはアンタたちのためを考えたの!」


 リリヤに掴みかかられた男は、ほうほうの体。

 ダーティーマーメイドは精神病で、

 ――頭が完全壊れたお人形。

 そう聞いてはいたが、ここまでとは驚きだ。

 

 なぜならアイリ・リリス・阿南は、二足機適性トリプル、名門にして精鋭の北斗隊の隊長で、二足機集団総隊長で、いまは高速機動部隊の司令官だ。

 

 躁鬱そううつを抱えて情緒不安定、ときには任務に支障をきたす。任務に支障をきたすのは問題だが、

 ――それを補って余りある高い能力がある。

 部隊高官たちは、その程度に考えていた。

 

 だが目の前に繰り広げられる光景は異常だ。

 リリヤは猛烈に興奮。目を血走らせ、叫び声をあげる口からは、よだれすら撒き散らされている。

 

「なんでわかってくれないの! リリヤはバカじゃない! お前らが私を嫌いって知ってる!」

 

 そして手近な机をつかんで引き倒した。

 続いて逃げる高官たちの一人に掴みかかろうとして失敗。リリヤは、そのまま倒れ込み四肢をばたつかせ、猿叫えんきょうのような奇声。


「でも考えてた! みんなのために! リリヤ一人のことだけじゃダメって!」

 

 わんわんと泣き始めた。

 頭を抱え丸くなり泣き叫ぶ成人女性。異常で異様な光景。

 部隊高官たちが当初いだいた、

 ――美人だな。悪くない。

 などという印象は一気に吹き飛び、胸懐きょうかいに苦味だけが満ちた。

 

 呆れた顔の真神が進みでて、

「隊長殿はご覧のとおりです。取り敢えずカサーン方面へ超高速の司令部偵察機を放ちましょう」

 そう提案。


 部隊高官たちは気まずさなかで、

 ――そう簡単に見つかるものでもなし。

 と目配せ。

 

 見つからなければこれ幸い。部隊高官たちの当初の予定通り第二星系で弱小の敵を見繕って撃破。これで格好はつき本隊と合流できる。

 

 面々は最後にはうなづきあい会議は終了。

 

 ――取り敢えず。

 とうことで司令部偵察機5機がカサーン方面へと放たれたのだった。


 そして、いま、高速母艦ズュギアヘレのブリッジにはカサーン方面へ向かった敵を補足したという司令部偵察機からの報告。

 

 リリヤは意気揚々と、

「作戦会議だよ! 真神、部隊高官たちをすぐに集めて」

 と指示。

 

 すぐにダーティーマーメイドの高速機動部隊では作戦会議が開始された。


「敵は11隻。母艦はなし。リリヤの北斗隊で長距離攻撃を敢行する」

 リリヤが集まった部隊高官たちへ宣言。言葉を口にするリリヤの姿をからは、もう作戦は決定しているかのようだ。

 

 会議室内にはとたんに困惑が広がった。もちろん乱暴にすぎるからだ。これでは方針決定のための会議ではなく、決まっていることをつたえられるためだけの集会だ。


 唖然とする部隊高官たちを前にリリヤはさらにつづける。


「敵の識別コードは〝特戦隊〟。ダッサイんだぁ。でね。そのダサいのの進路から予想するに小惑星カサーンへ向かってる。いまから私たちもカサーン方面へ全速で急進。24時間後に北斗隊は出撃。艦隊は11隻が逃げてくる方向に回り込み。挟み撃ちにして一網打尽!」


 一気にまくし立てたリリヤが、

 ――どう?

 と、いわんばかりの顔で室内を見渡した。

 

 けれど部隊高官たちからすれば、どう? という顔を向けられても、

 ――どうもこうもない。

 としか思うしかない。


 部隊高官たちからして、敵が逃げてくるという前提はわかる。

 

 なぜなら、こちらは高速母艦を中核とした高速機動部隊だ。きわめて攻撃能力が高い。対して敵は戦艦1隻を中核にした砲雷戦ほうらいせんが主体の部隊だ。

 

 ――当然、敵は逃げる。

 

 だが、現状ではあまりに情報が少ないし、北斗隊と母艦を完全に切り離してしまうのもリスクを感じる。

 

 不満の空気に、

「なによ!」

 リリヤからは叫び声。

 

 とたんに会議室内の空気は憂鬱ゆううつなものへ。前回のリリヤが泣き叫び暴れだしのを思いだしたのだ。また、あんなことになっては面倒くさい。

 

「リリヤが敵を倒してあげるっていってるんだよ? アンタたちは後ろで待ってるだけで戦功が立てれるんだよ?」

 

 そう、リリヤとしては最高の案を提示したのだ。それを不満とは、

 ――そんなの。わがままだよ!

 というものだ。


「ですが、その……」

 高官の一人が意を決したように立ちあがった。


「なによ?」


阿南司令あなんしれいは、司令官ですので……」


「はぁ? リリヤが司令官だってのがどうしたっていうのよ」


「つまりです。阿南司令が旗艦ズュギアヘレを離れるのは問題かと、北斗隊で長距離攻撃を行なうにしても、そこの真神副隊長へ北斗隊を任せ、阿南司令はズュギアヘレに残り指揮に専念すべきかと」


 まっとうな意見だ。なにより高官の言葉は、この場の総意だ。

 が、リリヤは激昂げきこう


「バッカじゃないの! アンタ頭おかしいでしょ!」

 

 意を決して意見を述べた高官が苦い顔。肩をすくめて座った。


「こんな長距離攻撃リリヤがいなきゃできないでしょ! 真神こいつじゃ無理! アンタたちは知らないでしょど、下手くそよこいつ!」

 

 大勢を前にした面罵めんばの繰り返し。室内には苦味が満ちた。そして下手くそと名指しされた真神とムッとしてリリヤから視線を外した。

 これで唯一リリヤの意見を変えられる可能性のあった真神からの進言の芽はなくなった。


「リリヤが部隊を率いてでる! お前たちは見てろ! 二足機に乗れもしないくせにガタガタいうな!」


 リリヤが部屋の不満の空気を一掃するように乱暴に宣言。

 ダーティーマーメイドの高速機動部隊は特戦隊攻撃へ向け動きだしたのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 真っ黒な宇宙に光る星々。

 その星々の間を光の点が直進。けれど彗星などの流れ星ではない。よく見れば進む光の点は、発光点の集まりだ。

 発光点の正体は二足強襲機天太星にそくきょうしゅうきてんたいせい

 

 そう、光はダーティーマーメイドことアイリ・リリス・阿南、自称リリヤの率いる北斗隊の艦載機集団だった。

 

 いまリリヤの目の前には敵集団。

 ――オイ式の部隊だ!

 とリリヤが心のなかで叫んだ。興奮は心におさまらず、

「60機! 同数戦じゃない! やったぁ!」

 という声となってでた。

 

 リリヤがモニター表示された情報を即分析。攻撃手段を思考。

 敵は60機で17機が三隊に、プラス9機の1隊。なるほどね。三列縦隊さんれつじゅうたいを、守るように残りの一隊が飛行してる。もっともスタンダードな三レーン陣形ね。


 この陣形は二足機部隊としては、もっとも基本な陣形だが、

 ――それだけに敵は手強い。

 とリリヤは、きっと楽しく戦えると期待感を覚えた。

 

 なお、三レーン陣形のレーンとは3つの縦隊を指す。

 縦隊が三本で三レーン。ここに遊撃(ショートストップ)として少数の一隊を加えて4つの隊。そう、三レーン陣形とはいうが、作る隊は4つだ。遊撃隊の役割は陣形の基幹となっている三本の縦隊レーンを補助させる。

 

 そして三レーン陣形への対処法は、

 ――三レーン陣形が最も面白い!

 リリヤが、その有能を最も発揮できるというのが理由だ。


 すでにリリヤの脳裏にはオイ式部隊との攻防が展開。

 

 お互いの三つの縦隊レーンが、それぞれ一隊づつ相対して戦闘開始。そして宇宙は広い。お互い対面の敵を出し抜き、他の縦隊レーンの背後を襲おうと、入れ替わり立ち替わりの攻防。

 

 うまく対面の敵を出し抜き、別の縦隊(レーン)を背後から襲い撃破を狙うといった具合だ。むろん単純に目の前の敵縦隊(レーン)を撃破してしまってもいい。


 4つの隊で形成される陣形のどこを担当しても敵を撃破する自信があり、

 ――絶対勝てる!

 というのがリリヤの確信。


 なぜならアイリ・リリス・阿南は二足機適性トリプルエス。この武名は絶大。

 

 北斗隊と戦う相手は戦う前からダーティーマーメイドことリリヤの対処に頭を悩ませる。

 三縦隊レーンのどれかにリリヤがいれば、敵は遊撃隊ショートトップをダーティーマーメイドの縦隊レーンに張り付かせざるを得ない。そうしなければあっという間にダーティーマーメイドと対面するハメになった縦隊レーンは撃破されてしまう。

 

 そしてダーティーマーメイドが遊撃隊ショートトップを担当すれば、敵にとっては最悪だ。

 

「空戦技術は神域なる!!」

 とはパイロット候補生時代のリリヤの成績表の備考欄に殴り書きされた賛嘆である。

 相手の遊撃隊ショートトップは、自由に泳ぎ回るダーティーマーメイドを追って後手後手の対処。息切れし追うのに疲れてダーティーマーメイドの遊撃隊ショートトップ掣肘せいちゅうに失敗すれば三レーン戦はとたんに敗北する。


 リリヤが通信を開いた。


総員傾注そういんけいちゅう! 敵は三レーン陣形のオイ式部隊。北斗隊も三レーン陣形を作って攻撃に移る! 真神は中央の縦隊レーンを担当して! リリヤの隊は遊撃。不利になったらリリヤが助けてあげる。泣きつきついていいよ」


 さらにリリヤが継ぐ。


「そして有利な縦隊レーンも、すぐに報告ね! リリヤが飛んでいって撃破の決定打! 一隊を撃破すれば勝ち」

 

 リリヤが以上といって通信を切ったが、

対艦攻撃装備たいかんこうげきそうび放棄ほうきを!」

 という副隊長真神からの進言。


「バカじゃないの! 相手は超重二足機。デブでのろまなんだから」


「ですがっ!」


「対艦装備捨てたら敵艦を攻撃できない。敵の二足機部隊を撃破しただけじゃ意味ないの。そのまま対艦攻撃を成功さてこそだよ! わかるでしょ?」


 真神としてはリリヤのいうことは、わかるが、

 ――重い対艦装備を抱えながらの二足機戦は不利!

 というのを、

 ――わかれ!

 と真神は叫びたい。


 軍用宇宙船の強力な装甲を貫く、大型の対艦装備を抱えたままでは、天太星の機敏きびんさが発揮できない。他のマルチロール機と同様の凡庸ぼんような二足機戦を強いられることになる。

 

「相手のオイ式は直線での加速はいいけど、小回りはダメダメ! 天太星はオイ式に比べ軽くて敏捷性びんしょうせいにすぐれてる。対艦装備捨てなくても戦える!」


「だから重い装備を抱えたままでは、その敏捷性が損なわれるといってるんです!」


「それはアンタが下手くそだからでしょ! リリヤはできる!」

 

 真神が瞬間、カッとなった。

 ――俺が下手なら他のやつも下手だぞ! それに、お前以外にできないだろそれ!

 それを、いつもいつも俺ばかり下手くそと連呼しやがって。とも真神は思う。

 

 ダーティーマーメイドは他人も自分と同じ考えを持つべきという狂った独尊性を持つ。それは自分が考えることを他人はわかって当然で、自分ができることは他人もできて当然という現実を無視した大前提となって周囲へ撒き散らされる。

 

 ――だからダーティーマーメイドは頭がおかしくて嫌われてる!


 そう。部下からすれば隊長のリリヤの言動は強烈にすぎる。部下を物として扱うそのさまは、あまりに個を無視していて、迷惑にして不快。

 

 名門にして精鋭の北斗隊は、日々の訓練で常にダーティーマーメイドからの不条理にして、むちゃな要求に耐えてきていた。

 

 だが、今回は訓練とは状況が違う。


「実戦です! 殺し合いです! 対艦装備の破棄を――!」

 という真神の悲痛は、リリヤに黙殺されたのだった。

 

 真神は、

 ――チッ!!

 と痛烈に舌打ち。


 北斗隊が、オイ式部隊の集団へ突入を仕掛けていた。

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