12-(2) 適性判定
陸奥改の資料室――。
「なんでわたしが作戦案なんか」
と不満を口にするのは春日綾坂。
太陽のようなオレンジの長髪で、顔もスタイルもいい綾坂はいま机に突っ伏しお疲れモード。
対して正面に座るのは口元のホクロが目を引く黒髪の野暮ったい暗めの女子。
「はぁ綾坂ったらバカなのね。かわいそう」
「体型が電信柱の黒耀るいさんにいわれたくないんですけどぉ」
「また容姿の話? 低レベルね」
「ふんだ。通信オペレーターだからって体型まで似せるなんて涙ぐましい努力よね」
黒耀は無視で対抗。手元に目を落とした。
いま2人は向かい合って座りノート型の端末を開いていた。
特戦隊司令天儀に命じられて作戦案を作り始めた2人。どちらからともなくいっしょにやろうと資料室へ。
――でも、けっきょく喧嘩なのよね。作業が進まないったらないわ。
黒耀は内心嘆息。
一方の綾坂はブリッジで命じられたときは、
――黒耀に吠え面かかせるんだから!
と俄然やる気だったが。
「よくよく考えれば面倒くさいのよねー。正式な命令じゃないしさこれ」
「あなたね……」
「だってこの作業。残業代もでないでしょ?」
「そりゃあそうよ」
「まさか司令から作戦を作れと命じられたので、戦術機隊の訓練は休ませてくーださい。なんていえないしー」
「綾坂ってほんと低レベルよね。これが採用されれば参謀本部へ入る道が開けるかもしれないのよ?」
「だってわたしは黒耀と違って戦術機隊しょぞくだしい」
「あきれるわ。退役するまで戦術機に乗る気なの」
「確かにいずれは後方任務に回されるけど……」
綾坂の声がトーンがダウン。喋りだしの勢いはどこへやらその声は弱々しい。
人間は二十代前半をすぎれば反射神経が低下し始める。それを経験などでおぎなうが、査定評価の低いものを中心に大半の戦術機隊員は、基地任務などの後方へ回されていく。
戦術機隊員にとって艦上勤務が花形。次点に重要な宇宙基地勤務、段々とグレードが下がっていき後方の基地に固定的な配属を受ければお終いだった。
「いえいえ、テストパイロットや教官という選択肢も」
「あら、綾坂って教官なんて柄じゃないでしょ」
「まあ確かに……。テストパイロットなんて一握りだし、僻地で来る日も来る日も土木作業用の作業機の操縦。……うへ、考えただけで憂鬱」
「そういうことよ。これを機会に頭をつかう側にまわることも考えたほうがいいわね」
ぐうの音もでない綾坂はチラリと黒耀を見る。
黒耀はこうして喋っている間も自身の端末から目を離さずひたすらタイピング。作戦づくりを続けている。
――まーた、なに書いてるのか。余計なことばっか加えてるんでしょうね。
綾坂はそんなこと思いつつも机の上に転がっていたペンタブを握りなおし画像編集の再開。
――図の方がわかりやすいんだから。ほら私って絵心あるしね。
2人は作業に没頭し始めたが――。
「2人仲良く資料室って聞いたからきてみたら、なにやってるの?」
せっかく集中し始めたところにこの一声。
黒耀は嘆息し手を止め、綾坂は、
「アヤセェー」
と恨めしげだ。
声の主は秘書官のマリア・綾瀬・アルテュセールだった。黒髪のロングヘアー。胸の大きな赤いリボンが特徴の秘書課の制服が似合っている。
そしてアヤセは、綾坂と黒耀の共通の友人だ。
「天儀司令が私たち2人にカサーン基地の攻略の作戦作れってさ。それで資料室で作業よ」
「え! もしかして天儀司令に作戦つくれって命じられたのは2人なの?!」
驚くアヤセに黒耀は、
「ま、そうね」
とドヤ顔。そして綾坂は、
「ほんとよ。優秀って困っちゃう」
と、したり顔だ。
「それってすごいじゃないですか」
「ま、綾坂さんの案は、私の案の引き立て役で終わるでしょけど」
とたに綾坂が黒耀をギロッとにらむ。
場は一触即発。このままではいい争いに発展し、つかみ合いのキャットファイトだ。
「そういうのって作戦参与の天童愛さんがやるのかと思ってましたけど!」
けれどアヤセが割って入って機先を制していた。これで2人がつかみ合いを始めることを未然に防げる。
「天儀司令は、この参謀本部志望の黒耀るいに資質を見出したのですわ。綾坂はあくまで当て馬。噛ませ犬。せいぜい私を引き立ててちょうだいな」
アヤセはアハハと苦笑い。
「で、綾坂はどうなの?」
「うーん実はわたしは気乗り薄かな。最初はそこの根暗寸胴体型をしれやれると思ったんだけど、わたしって花形の艦載機部隊だからねぇ。すでに満ちたりてるっていうかぁ。どっかのブリッジで小間使いしてる船務科さんとは違うのよね」
黒耀の顔が露骨に引きつり、
「いまに吠え面かくわよ。綾坂さんはいまがピークじゃなくて?」
声にも感情の起伏がにじんでいた。
綾坂は、
――あ、余裕なくなった。
と、さらにダメ押し。
「はぁー。わたしは兄貴が二足機乗りになるっていうからいっしょに試験受けただけなのにぃ、気づいたら二足機乗りで、それで今度は、なんでまかり間違って作戦作れって。才能にあふれると大変だわぁ」
綾坂は当てつけで余裕たっぷりにったが、
「あんた。それ丞助が聞いたら泣くわよ」
と黒耀は冷静にして苦い顔。
アヤセも話題にでた丞助へ同情するような反応だ。
「丞助さん。負傷がもとで二足機パイロットを断念。特技兵へ転向でしょ」
「料理人ね。正式には調理師かしら」
――春日丞助。
は、春日綾坂の兄である。二足機操縦士が志望だったが負傷して、その道を断念し特技兵の調理師に転向していた。綾坂、アヤセ、黒耀。ここに綾坂の兄の丞助が加わり一つの4人の友人グループが形成されている。
「そんなこと兄貴には散々愚痴ってるわよ。せっかくパイロットになったのに、兄貴がいないんじゃてーんでつまんないわよ」
「まあまあ綾坂。丞助さんと同じ二足機パイロットになれたとしても同じ隊とは限らないでし。こうして4人バラバラの兵科で、なぜかいっしょの船。それを喜びましょうよ」
「ま、おかげで毎日兄貴を小間使いできるのは便利よね。部屋に呼びつけてマッサージさせたり、爪切らせたり」
「ふん。あいかわらず恋人みたいに仲がいいわね。あんたたち」
黒耀がいってから、しまったという顔。いまのいいかたでは含みがあるように聞こえかねない。
いわれた綾坂の耳まで真っ赤。普段の威勢はどこへやら気まずい顔だ。
――だから面倒くさいのよこの兄妹は!
と黒耀はムスッとしてから別の話題を振ることにした。
「軍の兵科適性の判定。調理師の検査もあってよかったわよ。じゃなきゃ丞助は軍に残れなかったはずよ」
「AIによる職業適性の評価を軍特化にしたやつですね」
アヤセもすかさず話題に乗る。アヤセからしても先程の黒耀の話題は地雷だ。早く変えたい。
「ええ、ABCDEFGの七段階評価のやつね」
「私は秘書官の試験うける前に秘書科適性みてもらっただけだけど、普通に軍に入ると一通りの適正調べられるんだっけ?」
「そうね。それで私は不覚にも船務科に……」
黒耀が意気消沈。
綾坂が、
『協調性があり船務科の適性あり。聞きやすい声でのども強い。特に通信オペレーターが向いている』
判定結果の文書を口にし、
「黒曜に協調性? 信じらんないわよ。笑っちゃう」
といてケラケラと笑った。
「私も信じたくないわよ……。星系軍の船務科って情報部の下に置かれてるのよ。組織図的にも参謀本部が遠すぎよ」
なおパイロットは消耗品、適性がD以上あれば、筆記・体力試験に規定値を満たせば問題なく採用される。実はパイロットは適性要求が高い職業は必須とはされない。
対して調理師はといえば――。適正がE判定だろうが、問題外評価と認識されるF、G判定でもできる。ようは誰もいいのだ。けれど適性が高ければなお良いというのは間違いない。
「で、丞助さんは調理師の適性が二足機の適性より高かったって笑えない落ちだっけ?」
「そうよ。Sよ? S? 信じらんないわよ。審査後にその場にいたみんなで何気なく結果を見せあったときの『こいついますぐ軍なんか辞めて和食かフレンチ、もしくは中華の料理人になるべきでは?』って空気忘れられないったら」
「7段階評価でAを超えるイレギュラーな超適性のSかぁ。本当にいるんですねぇ」
なお春日兄妹は綾坂の二足機適正がA。兄の丞助はC。丞助は特技兵である調理師はS判定だった。つまり丞助はより向いた職種に転向したといえば悪くはないが当然実情は違う。本人は二足機のパイロットを熱望していたのだ。
「参謀本部の適性検査もあればよかったんだわ」
黒耀が悔しそうにいうと、
「総合的戦術評価ってのがあるじゃない。あれが軍高官候補の適性にあたるんでしょ?」
綾坂が小馬鹿にしたように応じた。
「私が聞いた話では、あれって若年だとCまでしか絶対に出ないらしいけど――」
「そうよ。アヤセのいうとおり。軍隊は経験則がものをいう組織ですから十代じゃ良くてD。入学前後の診断じゃEとFばっかりよ」
「で、黒耀は?」
綾坂が、いまにも吹きだしそう。笑いを噛み殺している態度で問いかけた。
「……よ」
「え? 聞こえない!」
「だからGよ!!」
「ブッ――! 超ウケル!」
「あんた笑ってるけど、あんたもGでしょ!」
「えーでもぉー。あたしは二足機科の適性Aですからぁ」
「しねばいいのに」
「あー! 軍で生死を軽くいっちゃいけなんだから!士官学校時代に習ったでしょ!」
黒耀はプイッと無視。
これをアヤセが、
――まあまあ。
となだめるのがこの3人のいつもも風景だ。
「C適性の兄貴も入学後のパイロットの諸々のテストは点数高かったんだけれどね」
「でも綾坂みたいにA判定は中々もらえませんよ」
「そうかしら? ブリッジでもA、B判定のかたばかりよ。他のオペレーターもそんな感じだったわよ」
「そりゃあそうよ。普通は適性の高い評価をもらったところに進むもの。他に高い適性の職業があるなら、わざわざCやD判定もらったところに行かないわよ」
「おのずとA、Bが集まるってことになりますね」
「そうそう。人員不足で人気職っていうパイロットが特殊なのよ」
「やっぱり参謀本部の適性検査も行なうべきなのよ。参謀本部の適性項目さえあれば私も参謀系列に配属だったでしょうに」
黒耀から繰り返された発言に、綾坂とアヤセが何とも応じがたい表情。
参謀本部入りするような人間は、幼年期学校や兵学校、士官学校時代にすでにその資質を見出さされており、星系軍大学で高級将校の教育をうける。さらに嘱望されたものは実務経験を積んだ上で軍事アカデミーに進む。
つまり現状ブリッジで管制系のオペレーターをやっている黒耀の現実は悲惨だった。よほどの異例の抜擢、天変地異級の異変がなければ、
――黒耀の参謀本部入はありえない。
綾坂とアヤセの黒耀への視線は生暖かいものへ。まるでかわいそうなものを見るよう。哀憐すらただよっている。
黒耀は2人のからの哀憐の視線をうけても物ともせずに、
「あら異例の人事はありうるわよ。例えばアキノック将軍。あの方は二足機パイロットから戦艦の艦長、そして上軍司令官(2個艦隊の司令官)。異例の抜擢はあるってことよ」
そう宣言。
とたんに綾坂が喜色をおびた。
「あら、じゃあ作戦づくりの勝負はわたしの勝ちね。わたしは二足機乗りだからアキノック将軍そのものじゃない。作戦はこの綾坂のが採用されるってことよ」
黒耀が、
――例が悪かったわね。
と、うっと黙り込む。
グランダ軍ではいまの帝が力を持っていらい異例の人事はままあることだった。何もわざわざ二足機パイロットだったアキノック将軍をだすことはなかったのだ。
「足柄司令もなんども始末書くらって逸脱行為しているのに、いまは機動部隊司令。そう考えると異例の人事はあるってことで、るいの参謀本部移動の可能性はなくもなくもない」
アヤセが煮え切らないいいかたをした。
綾坂がププイっと吹いた。アヤセの言葉は黒耀へのフォローとも、暗に無理だといっていると取られなくもない。そして、それだけ黒耀のいまの立場から参謀本部入は難しい。
黒耀は綾坂を無視。一々かまっていたらキリがない。
「足柄司令の場合は艦上勤務が懲罰なのではないのかしら。本来なら中央で軍幹部やってるはずよ。環境のととのった快適な部屋で優雅にデスクワーク。憧れるわ」
「確かにそうね。二足機乗りの綾坂からしたら艦上勤務が一番の花形でしょうけど、艦長クラスになると違うわね。防衛省や参謀本部とかの中央組織の幹部が出世を意味するから」
綾坂が2人の言葉にアッと思いだしたような顔。
「異例の抜擢っていったら星間戦争の勝利者の大将軍もそうよね。帝の抜擢でしょ? それが6個艦隊率いて戦争」
「大将軍天儀。あれは例外よ。元々が惑星アキツで軍人でしょ。だったらアキツでしかるべき立場だったのよ」
黒耀があきれていった。
ここでアヤセが一考。アヤセは黒耀につられて本物の軍キャリアが踏むであろう道順を口にする。
「アキツの士官学校出て、艦上勤務をへて、軍大学の試験受かって優秀な成績で卒業、軍アカデミーへ参加。ついには帝に属目されて大将軍。はー、エリートって感じのキャリアですねぇ」
黒耀もため息をつきながら、
「そもそも廃止された大将軍職は帝の抜擢のみで任命されるから。いっしょにするのはナンセンスね。綾坂ったらやっぱり知識ないわね」
綾坂は不満顔だが、
「あ、そういえばうちの天儀司令も異例の抜擢じゃない?」
さらに思いついていった。
「でも〝特戦隊の天儀〟は廷臣でしょ?」
「廷臣っていうか寵臣って噂ですよね」
とアヤセがいって、
――朝廷では軍出身のおべっかつかい。
とヒソヒソ声で加えた。
「同姓同名なのに情けないったら……」
綾坂が苦くいった。
――本物の天儀は惑星ミアンで最高軍司令部に参加している。
そう3人は自分たちの司令官が元大将軍とは思ってもみなかった。たんなる同姓同名。広い宇宙ではよくあることだ。
そして李紫龍誅殺のために発せられた陸奥特務戦隊が、帝の私怨といまは誰もが思っていた。
――なぜって。
と、綾坂が思う。
帝が李紫龍の奥さんを殺さなきゃ李紫龍は裏切らなかった。こんなこともう常識よ。
アヤセが、
「最後に映像で見た李紫龍将軍、眉毛が真っ白だったね。奥さんの死を知って一晩でああなったって聞きました」
しんみりいった。
「うちの天儀司令はどういうつもりなのかしら……」
ここで黒耀が、
「いえ!」
と握りこぶし、
「あんなに話しかけやすい司令官っていないわ。気さくだし。きっとお優しい方なのよ。帝をほっとけない忠良の臣ってやつなのよ!」
力強く宣言。黒耀にとってカサーン基地攻略の作戦づくりを命じてくれた天儀は蜘蛛の糸をたらす仏。いまのところ唯一の出世の足がかりだ。
「そうね。それに私たちの〝特戦隊の天儀〟も士官学校を優秀な成績で卒業してから名のある艦の艦長を歴任したあとに武官侍従じゃない? アヤセ的にはこれは凄いと思いますよ」
「え、天儀司令って武官侍従なの?!」
と、綾坂が驚いた。これに黒耀が苦い顔。
「バカね綾坂は。仮にの話よ」
「そうですね。アヤセ的には朝廷で帝の寵がある軍属なんて武官侍従じゃないかなって考えたんですけど……」
「あー、なるほどね。そっか腐っても戦隊司令で階級は大将。この肩書きは伊達じゃないわね。私たちから見れば〝特戦隊の天儀〟も大物ね」
「綾坂ったらしかたないのね。おべっかつかいとはいえ帝のそばに侍る武官侍従なんてよほどよ?」
「ま、それはよく知ってますから」
「あー、そういえば綾坂のお父さん武官侍従よね」
「そうよ。厳格を人間にしたらあんな感じってほどに超厳しいんだから。あ、そうだ。こんど通信できるときにおやじに〝特戦隊の天儀〟のこと聞いてみようかしら」
黒耀がすかさず綾坂の両手を取って、
「そうね。是非!お友だちよね私たち!」
とグイッとせまった。
「あはは、どうしちゃったの。必死ねアンタ」
「あたりまえじゃない! 仮によ。本物の力を持った武官系廷臣なら参謀本部もより現実味をおびるというものよ! 聞いてよ絶対よ!」
「あはは……、おやじとはあまり話したくないんだけどな。超厳しいから」
□ 職業適性判定《しょくぎょうてきせいはんてい》
星間連合では職業選択の前段階として必ず遺伝的検査とAI(人工知能)による職業適性判定を受けるがグランダでは違った。
「職業選択の自由を奪い人間尊厳を脅かす」
つまり人権侵害ということだ。企業がこれを新卒の採用基準にするのも禁止されている。だが、これは建前で個人でこの適性検査を受け、履歴書に書き込むことは問題なかった。
軍でも採用した人員を適正判定へかけて振り分けるのは当たり前だ。グランダでも小学校就学時、高校卒業前、遅くとも大学の在学中といった人生のどこかの段階で、ほとんどの人間がこの検査を受けるのが当たり前だった。
職業適性判定は、ABCDEFGの七段階評価がなされる。ネットワーク上で、逐次修正される判定基準は共有されており計測する機械によって判定が異なるということはまずない。
通常C以上なら適性ありと見なされるし、Dでも問題ないとされている。E判定あたりから雲行きが荒らしくなり、F・G判定を食らった場合問題があると判断される。稀に超適性と呼ばれるS判定やダブルS、トリプルSといった異常な適性判定がでるが、これがいわゆるこの時代の天才である。
・小話
兵科への適性の診断の歴史は古く、その診断レベルの程度はあるものの古代から行なわれていました。
古代ローマ史などでも見かけた覚えがあります。まずは向いた武器を扱わせるといのは、古今東西は軍事的なノウハウだったもよう。
遊牧民なんだから騎兵で、というのは考えなくても当たり前か。でも、これも適性による振り分け。
もちろん近代の軍隊、旧日本軍(陸海)でも行なわれていました。
人数が揃わなければ話にならないので欠員補充は優先されますが、向き不向きも判断の基準。
例えば海軍の士官のエピソードで砲術や航空に行きたかったけど適性が潜水艦の評価が高かったので潜水を志望したというのはよく見かける話です。
もちろん「なにがなんでも航空兵!」というのもあったようです。
そして希望したところですぐに行けるわけでもなく、艦上での実務訓練など紆余曲折へて数年後に潜水艦の艦長になるために訓練学校へ……。
なお海軍の航空兵などの最終診断は面相のチェック。「あんた墜落する相がでてるから落第」ということがあったそうです。
□ 特技兵《とくぎへい》
各国軍の定義によってその内容が大きく異なるが、グランダ軍の特技兵の単体の階級は雑務担当という色合いが強い。
軍隊で働いている人間がすべて軍人というわけではない。地上基地で清掃を行なう掃除のおばちゃんが軍人かといえば違う。
だが、 軍隊とは一つで総てを自弁できる組織でなければならない。場合によっては軍人としての身分で就業してもらう必要性がある。
この時代に軍隊では欠かせない戦術機備士などの整備員も非軍人である。これらは、いわゆる軍属と呼ばれる立場になる。彼らのような直接戦闘行為に関わらないものへ〝軍人の立場を与える〟のが特技兵だ。
・整備士の特技兵
非軍人の整備員たちの管理職である。
・艦艇の調理師
主計部の末端に属す特技兵。
・艦内の事務を行なう艦艇事務員
総務部から派遣される特技兵。
なお理髪師が特技兵なれば軍医科に属する。