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夢見る鹿島の星間戦争  作者: 遊観吟詠
二十四章、夢見る鹿島の大円団
185/189

24-(19) 一難去ってまた一難?

*次回の更新は9/22(土)です

「いまやベリサリウスやトラファルガーの英雄たちのように、その身をやつした。俺も会戦で偉大に死ねばよかった。そうすればネルソンのように栄光の中で終われた。そうだ。そうすれば、こうやってお前らから責められることもなかったってもんだぜ」

 

 つい先程までお涙頂戴。湿った空気だった部屋で、天儀てんぎがからりといっていた。

 そう。終わってみればあっけない。

 ――中性子爆弾桜花ニュークリア・オウカの無断破棄。

 ――凶星パイロットの虐殺。

 どちらもあった。それだけが判明していたが、疑いをかけられていた本人が、さっぱりとしているので、雨雲が引くように天儀の涙が引いた瞬間から、部屋の空気は晴れ上がってしまっていた。

 

「さらっと、ご自分を晩年物乞いまでに身を落とした古代の名将や、軍縮で職を失ってほどこで生をつなぐ水夫に例えないでください。そいう人生の晩秋を迎えた美っていうんですか。かつての栄光は今は……、みたいなの天儀元帥に一切ないですから!」


 星守ほしもりがくってかかるなか、鹿島かしまとしてはなんともいい難い微妙な気分。天儀の腕に抱きついた氷華ひょうかが目の敵のようににらんでくるからだ。

 

 ――アハハ、私も天儀司令を犯罪者にする仲間って思われちゃってます。

 

 こういうときはお口にチャック。沈黙は金。黙っているのが一番だ。下手になにかいえば電子戦司令局トータルサイバーフォースの司令官で軍三部の一角を担う女のヘイトをもろに受けかねない。


「なにをいうのですか貧乳星守。戦争では天儀さんに負けたくせに!」

「あ~ら、軍の公文書を改ざんした千宮氷華局長。なんですかねえ。私って間違ったこといいましたか?」

 

 星守としては軍三部の一角だろうが、もう怖くない。公文書の改ざんという氷華の犯罪の証拠はほぼ掴んだのだ。証拠固めは必要だが、最早いわれっぱなしはありえないのだ。

 貫禄のあるジト目で睨んでくる氷華を、星守は腕組みで睥睨へいげいだ。

 

 ――あはは、星守さんったらいいますねぇ。さすが怖いもの知らず。

 

 そして鹿島はやはり事態を静観。どう考えたって下手に首を突っ込むと確実に火傷やけどする。証拠に、いま、鹿島の目に映る氷華はジト目でムッと黙り込んでいるだけではなく、体からは怒りのオーラが。


「わかりました。いい度胸ですね星守あかり。あなたは宇宙の最果てマタサイ行き決定です」

 

 言うに事欠いて、またのマタサイ行き発言。一つ覚えとはこのことで、星守は、そこら辺のチンピラの脅しだってもう少しマシなこといってきますけど? という言葉を吐こうとしたが、

「それはだめだ」

 と天儀がいったので、口からでかっていた言葉を飲み込んだ。そして憎きジト目は彼氏のいうことには従順だ。氷華はムッと口をつぐんではいるものの星守への攻撃を一旦中止していた。

 

 ――ほー、氷華さんの弱みを見つけたりですよ。

 と鹿島は思った。氷華に対して唯一有効な停戦協定をだせるのは天儀だけだろう。


「氷華。むかっ腹が立って星守をマタサイ送りはいいが、それは俺の問題が彼らに立件されてからにしろ」

「そんな……」

「だめだぞ。いま、君がそれをやれば罪を逃れたい一心で、俺が君に命じたと世間は見る。これは俺にとって耐え難い屈辱だ。全部我慢しろといわん。俺も君の沈黙のしたにあるエゴの強さ知っているからな。逆恨みの復讐を、やりたいならやっていい。だが、それは俺が判決を食らってからだ」

「……む。逆恨みの復讐。でも、私にとってかけがえのないものを奪うのは、私にとっては絶対悪」

「君のなかで、それで納得ならそれでいい。だが、物事は主観と客観だ。どうしたってな。世間がどう思うかで、俺は氷華が苦しむ姿は見たくないよ」

 

 氷華がシュンとなって黙り込んでから、

「……こんな逆恨み女でも天儀さんは愛してくれますか……」

 そうポツリと口にした。


「ああ、愛してるさ。俺のために本気で死んでいいってのは、いまのところ親衛隊のゴリラどもだけだ。女は氷華だけ、それもこんな美人なら文句なし。ゴリラの檻の中にいる俺に最初に咲いた一輪の可憐な花。どんな理由があろうと俺の氷華への気持ちは動かない」


 ――あはは、おあつ~い。

 鹿島は心中で苦笑い。なんか目の前でイチャイチャされてムカつきまーす、だなんて思ってみてもいいだろう。だって電子戦のスペシャリストの千宮氷華せんぐうひょかといえども心の中までは覗けないのだ。


「おばあちゃんになっても?」

 と、天儀を見上げていう氷華に、鹿島はまたも苦笑い。

 ――あれは一応、睨んでるんじゃなくて、見つめてるんですよね……?

 ジト目の無表情だけ切り抜くと睨みつけていると誤解しそうだ。


「ああ、当然さ」

「顔もシワシワですよ?」

「問題なしさ」

「おっぱいもシオシオですよ?」

「あ……、ああ、OKだ……」

「あ、いま、ちょっと動揺しましたね。わかりますよ私。天儀さんの彼女だから。私のおっぱいがしぼんだら、他の女に、例えば、そこのスイーツ鹿島へ流れる気ですね!! これは浮気の兆し! 兆候! 断じて見逃せませんよ!!」

 

 といって氷華がジト目を厳しくして激しい発言。鹿島は突然飛びでた自分の名前にビックリ。

 ――げ! 私!?

 なにもしていのに攻撃目標にされてはたまらない。


「いや、違う。俺は女性を胸でなんて選ばない。君もよく知っているだろ。なぜそうなる!」

「むー。本当ですか。この疑念はぬぐえませんよ」

「ほ、本当だ。俺が動揺したように見えたのなら、それはこの部屋で君と二人きりじゃないからだ」


「つまりい?」

 と疑いの目を激しくする氷華に天儀は弁解を重ねるしかない。


「俺の君への愛の不変性への確認をするなら、もう少し言葉は選んで欲しかったかな、とうことだ」

「なるほど……。あらあら赤くなって、天儀さんは相変わらずうぶですね。おっぱいぐらいで恥ずかしがるだなんて」


 ――いや、千宮局長も恥ずかしがってくださいよ!

 鹿島は激しく突っ込みたいが、やはり我慢だ。氷華に目をつけられると絶対に面倒。鹿島の本能が、そう訴えている。

 

「……わかりました。天儀さんのいうとおりにします。ということで貧乳星守、マタサイはお預けです。せいぜい天儀さんの無駄にあり余っている清廉さに感謝するのですよ」

 この傲慢な態度に星守は少し笑っただけ。いままで氷華の傲慢に、あれだけ言い返していたのにだ。鹿島はハッとした。気づいたことを口にしたいのが鹿島容子だ。いままで黙っていただけに我慢も限界というのもある。


「そのー天儀司令?」

「なんだ鹿島。お前まで俺に愛をささやいて欲しいのか。だが、やめておけ、いまの状況では俺はお前の安全を保証できん」

「もう、違いますよー。私が聞きたいのは、彼女さんが逮捕されちゃって大丈夫なんですかってことです」

 

 鹿島のこの問に応じたのは天儀ではなく星守だった。


「ふ、気づきましたか。さすがは鹿島さんですね。私はもうこのジト目女になにをいわれても平気です。だってこの部屋での千宮氷華の数々の発言から彼女の公共機関への不正アクセスは明白! ふふ、ふふ……。天儀元帥の件を処理したら千宮氷華。次はあなたの番です!」

 

 星守は腕組みで自信満々だ。が、天儀は、

「なるほど、そういうことか。だが、氷華を立件するのは無理だろう」

 と、あっさり切り捨てた。


「はい? 天儀元帥なにをおっしゃってるんですか。千宮局長本人が公文書のデータ改ざんを認める発言をこの部屋でしていますし、これで手法や改ざんを行なった日時の目星もつきましたので調べれば証拠もでてきますよ」

「それ、いつまで残っているかな。いや、もうないだろう。この場の証言だけでは彼女を犯罪者にするのは無理だぞ」

 

 氷華も天儀の腕に絡みついたまま星守へと言葉を向けた。


「ま、精々探して無駄な時間をすごしなさい。いいえ、暇が高じて味方をしょっ引く軍警には、バブルラップをプチプチと潰すような作業がお似合いです。あ、そうね。今度、あれを大量に今度送りつけてあげましょう。そうすれば軍内で難癖をつけて回る暇もなくなるでしょう。ふふ、いい考え」

「おい、氷華……。たのむから挑発してくれるな……」

 

 天儀はそういと、星守へ向き直り、

「仮想空間では氷華の独壇場だ。やめておけ。今回は俺を断罪することだけで満足しておけ」

 といった。

 

「そんな……」

 

 不正を見抜き、正義を貫くのが軍警察。星守は目の前でハッキングしたと大宣言されたのに手がだせないというのは口惜しい。だが、どうしようもないのもわかるのだ。このジト目の女の電子戦能力はそれほどにすごい。そんな星守の気持ちを察して、六川がポンと彼女の肩へ手をおいた。


「それよりです。六川、星守、そしてスイーツ鹿島。あなた達はいったい惑星グラースタでなにをやっていたんですか」

「なにって、天儀司令を探してこうして、ここまで連れてきて、事情聴取して……」

「はぁー。これだからスイーツはつかえない。私はあなたにそんなことを命じた覚えはありません」

「ええ!? 千宮局長が私たちへ天儀司令を探せって命じたんですよ」

「そう。私が、あなたたち三人へ命じたのは天儀さんを探すことと、天儀さんの安全の確保です。それを軍警支局こんなところへ連れ込んで、天儀さんに自白を迫るだなんて、とんだ命令違反ですよこれは。鹿島、あなたも覚悟なさい」

「そんなぁ?! マタサイは絶対イヤですよぉ」

「罰です。罰。私がこうしていても立ってもいられずに惑星グラースタにきてみれば、天儀さんは軍警の支局へ連れ込まれ、しかもその前にテロリストに襲われたというではないですか。どうなっているんですかねこれは?」

「千宮局長、そういうなら電子戦司令局トータルサイバーフォースでは天儀司令への襲撃を事前に察知していなかったんですか?」

「スイーツ鹿島。あなたは、なにをいいたいのかしら。軍三部の一角を担うこの私へ口ごたえとはいい度胸。偉くなったものね」

「えー! 口ごたえじゃないですよ。だって仮想空間、つまりはサイバースペースでの情報のやり取りなしに、あんな大胆な襲撃計画は無理ですよ。サイバースペースは千宮局長の独壇場なんですよね? だったら事前に察知して教えてくださいよ。私たちだって武器もなくてすごく困ったんですから」

 

 鹿島は口も達者。いままで氷華の迫力に押されぎみだったけれど、知恵と口が回りだせば、反論は湯水のごとく湧いてくる。いまの鹿島は正当性、我にありだ。が、氷華からすれば、ああ言えばこう言う生意気な娘。


「それは、どうでもいいのです」

「どうでもいい!? 本気でいってます? どうでもいいって!」

「落ちつきなさい鹿島秘書正。あなたは主計部の直属でしょ。慎みと立ち振舞も秘書官としての重要なスキルの一つのはずです。それを大きな声でみっともない」

「むむ、なんか突然、秘書正とか呼んで、弱気なのがすごくわかっちゃいますけどぉ」

「お黙りなさい。それに私が納得行かないのは天儀さんに守ってもらうだなんて羨ましい。いや、おこがましい。彼女の私を差し置いて、そういうのはダメです」

「えー! それ感情論ですらないじゃないですか。完全な難癖。千宮局長は星守さんに軍警は難癖ばかりってあれだけ突っかかっておいて、自分はそんなことなさるんですね」

「ふん。なにをいうかと思えばくだらない」

「くだらない!?」

「しかも、あなた人質に取られたそうね。報告は受けていますよ。どうせ間抜けたあなたのことです。うっかりテロリストに捕らわれた。主計部秘書課といえども、これは軍人としてどうなのですか?」

「そこまでご存知なら〝よくやった〟ぐらいの一言をくださいませんか。後方支援の私が頑張ったんですから」

「甘ったれな寝言は寝ていいなさい。あなたのことですから人質にとられてビエーと泣いて、天儀さんに〝タスケテー〟とか懇願していたのでしょう。みっともない。私なら、そのテロリストに掴みかかって、〝一緒に殺せ〟ぐらいはいいますけれど、スイーツさんにそれを望むだけ無駄というものなのでしょね」

 

 あまりに酷いいいかただ。鹿島はカッとなって、

「いいましたから!」

 身を乗りだして叫んでいた。けれど氷華ときたら意味不明と一瞥しただけ。氷華からすればスイーツという形容がぴったりな鹿島が、テロリスト相手に立ち向かったなどと想像だにできないのだ。

 ――精々泣くのを我慢していたぐらいでしょう。

 怖くて声もでないし指一本動かせなかった。それだけだ。


「私天儀司令に、そういいました。千宮局長のいうテロリストが私を盾にしてきたので、私、天儀司令に〝私ごと串刺しにしてください〟っていいましたら!」

「え……」

 

 そんな度胸があるわけがない。氷華は、そう思い込んでいただけに絶句。反論がでなかった。思わず氷華は、

 ――本当に?

 と天儀を見ていた。


「はは、氷華、彼女は意外に度胸があるぞ」

 

 鹿島は、ふふん、と勝ち誇った。これは絶対の裁定だ。千宮氷華がどんな女だろうと、彼氏からこういわれては、もう、ぐうの音もでないだろう。が、氷華は鹿島の予想をはるかにこえていた。

 

「なんという。スイーツ鹿島、やはりあなたは天儀さんを誘惑して!」

 

 上ではなく、斜め上を飛んでいくようなこの難癖。鹿島は想像もしていなかっただけに驚いた。


「意味わかりません。人質に取られているのに誘惑するだなんて余裕ありませんよ」

「天儀さんは、そういう臭いセリフと状況が大好きなんです。それを知ってやったのでしょう。なんという浅ましい女。生きるか死ぬかの局面で、天儀さんに気に入られようと悪知恵を巡らす。ま、天儀さんはこんなにいい男なので、私から奪いたくなる気持ちはわからなくもないですが、状況があるでしょ! 状況がっ!」

 

 鹿島と氷華が睨み合い。一触即発。これ以上、お互い引かないとなれば、髪の毛を引っ張り合ってのキャットファイトしかないが……。

 

 火花を散らして睨み合う二人へ、

「もういいだろう」

 という仲裁の声。もちろん天儀だ。

 

 鹿島は仲裁に入ってきた天儀が、すまん、というように目配せしてきたので優越感を覚えた。ふふん、私のほうが信頼されているんですね。人として。なにせ私は特戦隊で一緒に戦った名補佐官ですから。わがままな彼女とは違って分別があると思われて当然です。そんな愉悦だ。

 

 そして天儀といえば、氷華へ向けて、

「俺としては、俺の君への不動の想いを疑われているようでつらい」

 といってさとしていた。さすがの氷華も、こういわれては黙るしかないようで、ようやく攻撃体勢をといていた。


 部屋は静けさを取り戻し、一件落着という雰囲気。

 そこに呼び出しのコール音。

 鹿島はポケットから携帯端末を取りだしさっそく確認。

 

「私の携帯端末じゃないみたいですね……」

 

 六川、星守も違うようだ。二人はすでに端末の画面を確認し終えしまうところだ。


「天儀司令じゃないですよね。もってないんですから」

 

 となると残り一人は……。


「……私です」

 

 携帯端末を手にした氷華が通話を開始。が、通話中の氷華は耳の近くに携帯端末を持っていっただけで、ジト目の表情一つ変えず終始無言。通話でのやり取りなのに一言も口を利かない。鹿島は思わず、

『天儀司令、あれって本当に通話してるんですか?』

 と耳打ちで確認してしまった。

 

『ああ、驚きだがあれは通話中だ。俺も最初はビックリしたが、電話で氷華はまず喋らん』

『天儀司令との電話でもですか。なんていうか大変ですね……。電話で喋ってくれないんじゃ困りませんか? 約束の日とか決めるのに都合がいいのか悪いのかもわかりませんよ』

『いや、俺との電話では違う。むしろよく喋る。俺はほぼ聞く側だ』

 

 へー、と鹿島はあらためて電話中という氷華を見たが、うなづきもしないし、声もでない。ついに氷華は一言も喋ることなく通話を終了。


「不本意ですが戻ることになりました。天儀さんと一緒に帰りたかったのですが……」

 

 そういうと氷華は天儀へ二三言葉をかけて部屋から、慌てて部屋をでていってしまった。廊下にでたとたん駆け足。よほど忙しいのだろう。


電子戦司令局トータルサイバーフォースは暇じゃないか」

 と鹿島がいうと星守が応じた。


「いても立ってもいられずに、ここにきたとはいっていましたが、あのようすだと仕事をほっぽりだして部下に無断で惑星グラースタまできたようですね」

 

 鹿島はうなづき天儀を見た。


「天儀司令はどうなさるんですか?」

「俺は首都惑星のミアンに戻る。それから職探しだ。軍は辞めてしまったからな」


「その前に天儀元帥、携帯端末を買ってくださいね。そして連絡先を我々に教えること!」

 と星守から厳重な指示だ。


「ああ、そうするさ。携帯端末がなくてはモバイル決算も身分証明も不能だ。支払いもできないし、身分証明もできんのでは宇宙では生きていけない」

「天儀元帥その前に身分証明書の再発行をやります。そもそも身分証明書がなければ携帯端末が買えない」

「ああ、そうか。六川よく気づいてくれた。やってくれるか?」

「はい」

 

 これで天儀が惑星グラースタから帰る段取りはついたようだ。鹿島は天儀と一緒にミアンへ帰ることに。帰りのシャトルのなかで鹿島は天儀へ質問した。


「ところで天儀司令、なんで惑星グラースタなんて行こうと思ったんです?」

「観光だよ。俺は軍や政治から距離を置きたかっし、田舎ならちょうどいい」

「なるほど観光。あれだけ緑に囲まれていれば都会の喧騒を忘れられてよかったでしょうねぇ」

「だが、観光地を少しでも外れると田畑ばかりだ。田舎すぎる……」

「ふふ、天儀司令ったら見つけたときはすっかり現地の人って感じでしたよ。あのまま住んでもよかったかも? もちろんちゃんとお仕事と家を見つけてですけど」

「勘弁してくれ鹿島。俺は超インドアなんだよ。星系軍だぞ。ハイテクな部屋に引きこもっていないと死ぬ」

「そりゃあ宇宙で外にでちゃったら死んじゃいますけどね。うふふ」

 

 二人が何気ない会話をするなかシャトルは音もなく宇宙を飛び、まもなく首都惑星ミアンの高軌道エレベーターのなかに入ったのだった。

 数日後には、

 ――元グランダ軍の頂点にいた男逮捕!

 というトップニュースがネット上を駆け巡るだろうが、鹿島はあえて普通にシャトルでの時間をすごした。天儀の逮捕を思えば、軍でアキノックらの反乱が起きるのか。千宮氷華はどう動くのか。考えだしたらきりがないが、難しいことは一切考えずに、

 ――最後のお話。

 と思って天儀との時間をすごしたのだった。

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