14Epi-(4) 決闘! 第一格納庫!
陸奥改第一格納庫(試合場)――。
「では、わたくしはこれで――」
天童愛は開会宣言をすませると試合場を立ち去ろうとした。
これに慌てたのは秘書官の鹿島容子だ。
天童愛には、このまま天儀と進介の決闘の。いや、試合の審判をしてもらう予定なのだ。
「柔道の審判なんてできる人少ないですから」
と鹿島は焦って、天童愛にすがりつく思いだ。
鹿島が、
――待ってください!
とばかりに急進すると天童愛が急停止しクルリと向きなおった。
とたんに鹿島は、
――アヒャ!
と情けない声をあげながら急ブレーキ。天童愛は思わずクスリと笑うと、
「あの様子をご覧になって」
と鹿島へいってから試合場のほうを見た。
へ? という顔で鹿島は天童愛の視線の方向へ顔を向けると、そこには道着姿の天儀と進介が。
うぅ。トップガン進介さんはブラックベルトです。……対して天儀司令の帯は白いです。それに進介さんは身長も高い。と鹿島は苦く思うも、それよりなにより気が気でないことがある。
向かい合う2人は、天儀は両手を腰にあて傲然とし、進介は腕組みして居丈高だ。
「兄さんには黙ってましたけど、見てのとおり俺ブラックベルトですからね」
と進介が腰の黒帯を強調するようにいえば、
「馬子にも衣装だな。黒いのつけてりゃ多少はマシに見える」
天儀が鼻で笑い飛ばしている。
鹿島の目には、威圧いっぱいで見下ろしてくる進介を、天儀が負けじと見上げてにらみ返すという図。どちらもメラメラと燃えあがり闘争心をみなぎらせている。どう見ても両者が一歩も譲る気がないというのは、ひと目でわかるというものだ。
「うひ……」
と鹿島が思わず悲鳴。
天童愛が、おわかりになりました? と断わってから。
「あれで勝敗の判定下しても、どちらもいうことを聞きそうにありませんね」
「……うぅ。そうです」
いま、鹿島の脳裏には、天童愛が背筋をのばし、
「一本!」
と右手を真っ直ぐ突き上げるようにして勝敗を宣言しても、
――知ったことかそんなもん!
とばかりに両者は戦いを続行! という映像がありありと浮かぶ。
投げた方はさらなる追い打ちのチャンスと飛びかかり。投げられた方は、いまのは無効とばかりに突進だ。
そして天童愛からすれば、こんなものは試合でもなんでもなく、
――たんなる子供の喧嘩ですね。
とうことで、子供の喧嘩に審判は不要というものだ。
「なら、もう。両者が疲れて動けなくなるまで勝手にやらせておけばいいと思います」
「……確かに、あれではへとへとになるまで放置するのが得策かも。というか私、なんで戦隊の高段者の方たちが揃って審判を断わってきたかわかっちゃいましたよぉ」
「こんなもの私闘ですからね。あきれたものです」
鹿島はコクリとうなづき思う。
それに元大将軍と11機撃墜のトップガンの喧嘩の審判などしたくないですよね……。不利なジャッジをくだされたほうから激烈なクレーム。下手をすると負けたほうから、
――審判が悪かった!
と恨みを買いかねないですから。
どっちが勝っても負けても、面倒くさいことこのうえない。というのが闘争心をぶつけ合う天儀と進介をまのあたりにした鹿島の感想だ。
天童愛は納得げな鹿島の顔を見ると、
「では、わたくしはこれで」
といって会釈。ふたたびクルリと踵を返し立ち去ろうとしたが、ギュッと袖口をつかまれた。
とたんに天童愛の表情には渋み。この渋さは誰が袖をつかんできたかわかるだけにだ。つまり鹿島1人を残して立ち去ってしまってはかわいそうという罪悪感の渋さ。
くだらない喧嘩と一刀両断できる天童愛は立ち去れても、天儀付きの秘書官鹿島は立場的にも立ち去れないだろう。
――さっさと立ち去ってしまいたい。
と天童愛は強く思うし、
――振り返ったら絶対にわたくし立ち去れませんね。
とも強く予感するが振り返ざるを得ない。なにせ鹿島は、もう自分にとって大事な友達だ。
そして渋々として天童愛が振り返ったそこには、
「あんなの私じゃ止めれませんよぉ」
という鹿島の涙目。
結末が両者力尽きてとは限らない。天儀も進介もどちらも勝ちをゆずらず、あらぬ方向に進めば大問題。
例えば鹿島としては、興奮した進介が決着がついても一方的に、
――天儀をなぶり続ける。
という最悪の想像もある。
天童愛は嘆息一つ。これを見ては立ち去れない。と思い不本意ながら会場に残ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
鹿島が涙目で天童愛を引き止める少し前。
閑散とした会場にはゾロゾロやってきた女子3人と男子が1人。
先頭を歩く春日綾坂が、
「あひゃー、やっぱ少ないわねー」
といえば黒耀るいは、
「いえ、思ったより多いと思うわ。賭けの対象になったことで人を集めたのかしら」
という意見。続いて口を開くのはマリア・綾瀬・アルテュセールだ。
「そうですね。アヤセ的には天儀司令とトップガンの他には審判1人という図も想像しましたから」
そんな女子たちのうしろに続く春日丞助は、3人で準備した割にいいできじゃないか。とマット敷き詰めて作った試合場とパイプ椅子が並べられた観客席を見ていった。
会場には4人が思ったよりは人が集まっていた。けれど第一格納庫へ入ってきた面々は天儀と進介の試合には、ほぼ興味はなしというのがよくわかる。皆ジュース片手に談笑したり、ハンガー収められているオイ式二足機をながめながら雑談。
丞助はぐるっと会場を見わたすと主役の2名を発見し、
「あ、天儀司令と進介隊長だ。柔道着だ。ほんとにやるんだな」
驚きを交えつついった。
女子3人の視線もそちらへ。
4人の目には、道着姿でメラメラと闘志を燃やしにらみあう天儀と丞助。
とたんに場には、
――うわっ。ほんとにやるんだ
という引いた感情。
どう考えても大人げないし、素人同士のスポーツの試合など観衆の心が気まずさで痛むような無様な攻防が展開すら想像できる。
「やっぱ並んで立つとトップガン進介が随分と大きく見えるわね。こりゃやっぱ進介隊長の勝ちよ」
「身長170センチ後半。柔道着のうえからもわかるしなやかな筋肉。精悍な二枚目。あ、もちろんアヤセ的には丞助さんのほうがステキですよ」
アヤセが容姿に注目が行くのなか黒耀の注目点は違う。
「というか体格より帯よ。進介隊長は黒帯で初段?」
「いえ、弐段ね」
と綾坂が即答すると3人に、
――わ~お。すごい。
という驚き。普通は黒帯といっても初段止まりだ。
対して、
――天儀司令は……
4人が天儀へ注目。
「白帯じゃない」
黒耀があきれていった。つまり有段者と、体力づくりで柔道をやっただけの素人との試合だ。これでは勝負は見えているというものだ。
「あはは、こりゃあ天儀司令の負けね」
「というか天儀司令は腰に手を当てて、なんであんなに自信満々なの……。白帯で胸張っても虚勢にしか見えないわよ」
「そうねー。逆に情けない感が強くてこっちが恥ずかしいって感じよね。あ、そうだ兄貴いってきてやりなよ。天儀司令ダサいですってさ」
「お前な一番下っ端の特技兵が戦隊トップになにをいえと? 無茶振りにも程度があるだろ」
「アヤセとしては、スカッと一本。きれいな技が決まるのがみたいです。実力差があれば期待できますよね綾坂?」
「そうね~。開始したとたんにトップガン進介の天地逆転するような内股が炸裂。天儀司令が綺麗に一回転かしらねぇ。なんにせよ進介隊長が秒殺するだろうから試合始まったら目を離さないようがいいわよ」
丞助とえいば談笑する女子のうしろで、
――へー、そんなもんか。
という顔だ。
丞助も試合には大して興味がない。たまたま休みだったところに綾坂たちが、天儀司令とトップガン試合の観戦といくというので、
――そういえばそんなイベントもあったな。
と、ついてきただけだ。
「しかし全然人がいないな。アヤセ、ちゃんと告知したのか?」
「丞助さんったら、もちろんですよ。他の艦内サービスの情報に押されまくってジミ~なあつかいになってるだけです」
「でも賭けには、かなりの人数が参加してるって聞いたわ。だから勝負の存在を知らないってことはないでしょうけど。ほんと少ないわね。本来ならもっと盛りあがるものじゃないの、こういうイベントって」
「それねー。戦隊司令と艦載機隊の隊長の戦い。アニメならちょう盛りあがりそうだけど」
綾坂があきれていうと、
「ま、現実はこんなもんね」
と黒耀がうけた。
そして、いま試合場には天儀と進介があがっていた。
試合が開始されるのだ――。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――始め!
そんな合図が場外からあったか、なかったか。天儀と進介の2人だけの柔道の試合は開始されていた。
進介は試合場で司令天儀と向かい合うと自然と一礼がでた。目の前の天儀も一礼。
――白帯のわりに綺麗な礼だな。
と進介は思った。細かい所作。たとえば礼一つにも実力はでるのだ。そう思えば天儀の一礼は、白帯のそれには相応しくない。
けれど進介は、サッと頭を下げる天儀が視線を一切進介から外していないことにはまでは気づかなかった。進介が一礼するとき目に映っていたのは足元のマットだった……。
――左右!
と足を踏み出すと両者が跳ねるように動いた。
天儀からも進介からも、セイッ! ヤー! などという裂帛の気合の声もなく静かな滑りだしだ。
実のところ進介からすれば司令天儀の実力は未知数。最初は様子見かな、と進介は思いつつ右半身を突きだしてかまえ半歩前進。
――自分より下。
と断じていても、最初から相手を呑んでいては勝てるものも勝てない。ようは油断というやつだが、たとえ天と地ほどの実力差。どんなに非力な弱者でも、
――必死になれば厄介きわまりない。
というのを進介は知っている。なにせ二足機を駆り〝本物の死線〟をくぐり抜けてきたのだ。そうトップガン進介は戦いとなればどんな些細なことでも関しては慎重そのもの。
証拠に試合開始の瞬間から天儀の目には鋭さがあり、進介はこれを見逃さなかった。
――虎視眈々と勝ちを狙っている顔だね。
弱いと断じて舐めてかかれば思わぬ墓穴を掘りかねない。
――だけど健気なんだよね。それって!
進介が天儀の左襟口を鋭く捉えた。そこへ右手を伸ばして組み付く算段だ。
いま進介は慣れ親しんだ木綿の道着の感触が心地よい。悪いけどこの勝負は自分の勝ちだと確信している。
最初に組んだ感触で弱ければ、
――悪いがアッサ終わりだな。
とも思った。有段者の進介は組んだ瞬間に、だいたいの相手の実力はわかる。
そして進介の試合の組み立てはこうだ。
最初は組手争い。ようは柔道着のどこをつかむかさ。自分が一方的に有利な形で、襟と袖を取るんだ。
で、両者相手にいいとこを取らせず、自分はいいとこを取ろうと手をバタバタさ。ツッツキ合って牽制してるみたいで滑稽でも、これは重要だね。自分の得意な形で〝組手〟を取れれば圧倒的に有利。多少実力差があって相手の技を防げるし、技も仕掛けやすい。なぜって技を仕掛けるための崩しと作りがしやすいからね。
――空気投げ。
なんて技もあるけど、それだって襟と袖を取らなければ始まらないのだ。
ま、色々いったけど、最初に柔道着の持ちやすいところをひっつかんだほうが有利ってことさ! 兄さん行くよ!
進介は右組だ。右手で相手の左襟を取るスタイル。
いま、進介の指先を細くした右手が天儀の左襟に蛇のように伸びていく。
『俺は右組で兄さんの組手は――?』
と進介が思ったか思わないかで、天儀の左手が素早くのび進介の右の襟をガッチリとつかんでいた。同時にそれまで軽快に動いていた進介の動きは停止。
――重い!
と進介が驚いた。
天儀が組手争いなど一切無しで、進介へ直進したのだ。
この天儀の迷いのなさは強者のそれだ。だが、面食らった進介は目の前の現実と、想像していた天儀の実力の誤差の修正をしている暇もない。戦いは刻々と進むのだ。こうして泡を食った時点で劣勢は決定的。
進介の目に天儀の白帯の残像。
組手の迷いのなさに対して不釣り合いな色の帯。だが白帯だ。
――俺より弱い。
という大前提に対して、でも組手の迷いのなさは強者のそれ。だが、白帯。
――白帯は弱い。
進介の脳内で情報が短く錯綜。
これでは『天儀司令は俺より弱い』という認識をすみまであらためるのは難しい。いまの進介には考える前に動作。天儀の攻撃にいかに対処するかが最重要課題だ。
思わぬ劣勢に、
――え!?
進介が驚くなか天儀の侵攻は止まらない。
劣勢の進介の足はマットにベッタリとつき、膝の動きは停止。進介は天儀からの圧力を組み止めるのに精一杯。
あらゆる動作の諸端は膝にでる。地に足ついた人間は、足で上半身を支えて攻撃を繰りだす。これは必ずではない。それしかないのだ。人間という〝形状〟からそれ以外ありえない。
ゆえに武道の練達者は、
「膝の動きさえ捉えていれば、攻防の諸端をつかめる」
といい切るのだ。
――何事も下半身から。
とはよく聞く話で、パンチを繰り出そうにも、バットを振ろうにも下半身の安定なくしてありえない。そしてパワーを生みだすのは関節。どんなに足の筋力が強かろうと。ピントン伸びた棒状ではパワーをなど発揮しようがない。筋力からベクトルを生み、モーメントを発動しなければならない。それには動作が必要だ。足の動きを生みだすのは関節だ。
そうなると足の最重要の関節は、
――膝。
足のなかでも巨大なモモとフクラハギの筋肉をつかうには膝関節の動きが不可欠。
そんな重要な膝の動きを失ったのがいまの進介だ。
獅子はウサギを狩るのも全力。油断してはダメだと思っていても、やはり天儀の白帯を見ては、これは勝てるな、という侮りは断ち切りがかったのだ。
進介は開始早々に思わぬ劣勢。一方的に組手で押され。
――ちょ、様子見の組手争いは!? うわっ。袖を取られた!
進介の左袖が、あっさり天儀に取られていた。同時に天儀の右手がギュッと絞り込まれ、進介は左腕の自由を失った。
進介の左手はといえば、むなしく空を切るだけどころか、自分の右腕を顔におっつけられて、
――腕が縮こまって自由がきかない!
進介は天儀の袖を取るどころではない。
――これ不味いぞ!
進介が心中で叫んだ。
いまの進介の状況は、天儀に一方的に襟と袖を取られ、進介はがむしゃらに天儀の肩口あたりをつかむのでやっとだ。つまり一方的に天儀にいいように組手を作られたのだ。
天儀の体が左右に動いたかと思ったら、間髪入れずに進介の体を左方向へ立て続けにあおった。天儀より大きい進介の体が一方的に錐揉みする。
とはいっても天儀は体を左回りで動かし、右手はその左回転にそっと添えるだけの動作。はたから見れば天儀は左腕を上下に大きくあおっているだけだが、組負けている進介はたまらない。グワングワンと上下左右にゆられ、
――動きを止めれない!
とやはり心中で悲痛した。
なお相手の動きを知るのに膝の動きを捉えるのが重要といったが、相手の膝の動きを捉えるに『膝をガン見する』のは不正解。
――相手の顔を見る。
これが正解だ。
これで視界の端に相手の膝の動きが必ず入る。
組もうが距離を取って殴り合おうが、相手の顔を正面に見据える。こうすれば攻撃を繰り出すにも防御するにも十分な〝距離〟が得られるというのが理由だ。
膝を直に見ていては頭は下がり、体勢は無様にくの字。体は縮こまって動けない。そして肝心の膝の動きも見えない。
そう見る角度の問題だ。
せっかく膝の動きを見ていても『くの字』に折れ曲がったような体勢で見ていては自身に対しての相手の正確な動作を読むのにはまったくつながらないのだ。
直に膝を見れば彼我の位置関係の想像と、現実の位置関係に誤差が生じる、ということだ。
頭を下げれば三半規管が揺れに揺れ平衡感覚に狂いを生じる。
そもそも平衡感覚とは頭頂点を真っ直ぐ上に向け、顔を正面を向いた状態が最も正確だ。真下を見て頭頂点を相手に向けていては、バランス感覚など壊れた羅針盤に等しく正確な彼我の位置関係の把握など不可能。
ま、強くなればそんな苦しい状態でも誤差を修正できるが……。
いま、進介の視界は足元のみ。目に映るのはマット縫込み線や天儀のつま先などの断片的な情報。これが入れ替わり立ち代わり目に映る。が、攻防の情報として、マットの縫い目など意味をなさなし、
「あ、天儀司令って足の大きさに対して親指は大きなぁ」
なんて情報はまったく役立たない。
もう進介は平衡感覚を失い。彼我の位置情報はむちゃくちゃだ。これでは技をしかけようもないし、防ぐのも難しい。
体格のいい進介が自分より小さい天儀に一方的に振り回されて、天儀の動きについていくだけで必死だ。洗濯機のなかに放り込まれたようで、完全に後手後手。
天儀が左前角、ようは左前へ進介を綺麗に引いた。進介はたまらない。翻弄され崩されたところに体を引き出され、左半身に体重が集まった。左半身に集まった体重を支えるのは、当然左足だ。
――技がくる!
進介が思う前に、天儀の左足が進介の体重の集まった左足へのびていた。鋭い刈り込みが進介の踵の少し上へ!
――小内刈か!
とわかっても、もう止ようがない。
進介はとっさに左足を上げて、天儀の刈り込みをかわそうとするが、天儀の左足は正確無比にフォーミング。進介の踵から天儀の足の裏は離れない。
進介は思わず、
うっ――!
という苦悶の表情。
天儀の小内刈りを無理に防いだせいで、進介の体は腰を中心に〝くの字〟に。腰が引けて無様な格好。つらい体勢だ。そして進介は、その無様な格好でピョコピョコとうしろへ下がるしかない。下がるのを止めれば、尻餅をつくではすまない。間違いなく投げられる。
――下半身がダメなら上半身!
進介はとっさに身を捩ろうとするも、上半身をガッチリ決められ、身を捩って逃げられない。
――くそ! 一方的に組手を取られたから!
そして天儀は容赦がない。
ケンケン、ケーン! と進介を追いかけ、ついには進介の、
「ヴッー!」
という悲鳴とも叫びとも悲鳴とも取れない音が会場に響いた。
進介が爆ぜるように畳一間ほど床と平行に吹き飛び、天儀がそれを飛ぶように追跡。進介が背中ら、
――ズドーン!
と落ちていた。
進介の身が落ちた衝撃で会場が揺れた。
進介が必死となって防いだだけに、溜まりに溜まって行き場のない力がいっきに開放され、技が決まったときの威力は凄まじいということだ。
会場があっけにとられた。