1話 その恥ずかしい性癖しまってくれるかな?
豪華な円卓に座っているのは、五つの国の代表者とその従者。
皆真剣な面持ちで、空気は冷え切っている。
……その冷え切った空気の中で、私は必死に存在感を消していた。
赤いドレスを着た少女が口を開く。
「皆さんを招集したのは他でもありません。このゲームからログアウトする方法を探すためです」
この場に転生者達を集めたのは、ローズ王国のシャルロッテ・ローズ女王。
そして、一番この世界から抜け出したい人だろう。
「わたしは別に現実に帰りたくないなぁ〜他の人もそうでしょ〜?」
ゆったりと眠そうな声を出したのは、大きな白ライオン従者のふわふわな毛に、だるそうに身を預けている猫耳幼女だった。
しかしながら、他のメンバーは沈黙を保ったままだ。
「そんな……私には家族が待ってるんです! 早く帰らないと……」
「そもそも〜みんなログイン前の事覚えてる〜? 私もしかしたら過労死してるかもなんだよねぇ〜」
ログアウトできないのか、転生してしまったのか、それすらもわかっていない。
「僕は推しを作ってたんで、この世界にいたいです」
「わ、私も憧れのマフィアのドンになれましたから、このままがいいです……」
アイドル王国の国王と、裏王国の王女が続く。
それはそうだ。
皆この世界に理想を詰め込んでいる。
帰りたいなんて思う人は少数だろう。
「皆さんの意見はわかりました。それで……ユメノ・ヘキエ・ロードスターさん。――どうして従者が四つん這いで椅子をしているのですか?」
瞬間、時が止まる。
ハァハァと荒い息が私の足元から聞こえてきた。
喉が渇いて唾を飲み込む。
冷や汗でびっしょりと額に張り付いた前髪もそのままに、私はへにゃりと苦笑いした。
何を隠そう! 私の王国は変人奇人、誰かのド性癖。
夢の性癖王国なのである!
ドン!!
ドン!! じゃないが?
ごめんなさい。ノリと酒の勢いで作ったサブ垢王国なんです。
「アッ……そのぉ……すみません、見ないで、ください……」
はい、今死にました。心が死にました。
ローズ王国の女王は責任を取ってこの空気の後処理をして下さい。
今まで必死に息を殺して存在感を消していたのに、とうとう指摘されてしまった。
……五人しか転生者がいないのだから気付かれないわけがないのだが。
「ユメノさんは、帰りたいと思っていらっしゃるのではないですか?」
話しかけられたくないオーラを出しているにも関わらず、気にせず話しかけてくるシャルロッテ女王。
「エッ……まぁ……はい……?」
そりゃあ帰りたいのだが、多分帰れるようになっても従者達が死ぬまで帰してくれないだろう。
それが我が国、ヘキエ王国というものだ。
「でしたら、私と同盟を組みませんか? 何か手がかりを見つけましたら情報を共有いたしましょう」
「アッハイ」
パァっと笑顔になったシャルロッテ女王を横目に、私は遠い目をする。
どうしてこうなった!?
遡ること一週間前――




