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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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前日

前日まで来ました。

二学期中間考査前日。

 朝の教室は、いつもより静かだった。

 普段なら聞こえてくる雑談も少ない。

 あちこちで参考書を開く音だけが響いている。

 白石美月も、自分の席で英単語帳を見つめていた。

(あと一日。)

 ここ数日、毎日勉強した。

 家でも、学校でも。

 それでも、不安は消えない。

「美月。」

 生田が隣に座る。

「大丈夫?」

「……たぶん。」

「"たぶん"なんだ。」

 二人は思わず笑った。

「でもね。」

 白石は単語帳を閉じる。

「ここまでやったんだから、もうやるしかない。」

「その意気!」

 生田は親指を立てた。

「応援してる!」

「ありがとう。」

 その時、教室のドアが開く。

 神崎が入ってきた。

 教室を見回し、自分の席へ向かう。

 その途中、一瞬だけ白石と目が合った。

「おはよう。」

 神崎が短く言う。

「お、おはよう。」

 白石も笑顔で返した。

 ほんの数秒。

 それだけのやり取りだった。

 それでも、少しだけ肩の力が抜ける。

 昼休み。

 桐生が神崎の席へやって来た。

「なあ。」

「ん?」

「今回も一位取れそう?」

「取る。」

「やっぱ即答か。」

 神崎は教科書を閉じる。

「中山も仕上げてきてる。」

「でも負けない。」

 桐生は苦笑した。

「その自信、少し分けてほしいわ。」

 神崎は少し考えてから言う。

「自信じゃない。」

「準備しただけだ。」

 放課後。

 部活動停止期間最後の日。

 白石は先生に質問をしてから教室を出た。

 廊下を歩いていると、前から神崎が歩いてくる。

「あ。」

「白石。」

 二人は立ち止まった。

「質問?」

「うん。」

「英語。」

「そうか。」

 少しだけ沈黙が流れる。

「……神崎くん。」

「ん?」

「ありがとう。」

「?」

「この前のこと。」

 神崎は少し考えた。

「ああ。」

 "信じてる"と言った日のことだと気付く。

「まだ結果は出てない。」

「だから礼は早いと思うぞ。」

 白石は思わず笑ってしまう。

「ふふっ。」

「それもそうだね。」

 神崎は頷く。

「明日。」

「頑張れ。」

 その一言だけ言って歩き出した。

 白石はその背中を見送りながら、小さく拳を握る。

(うん。)

(頑張る。)

 夜。

 机の上には教科書とノート。

 時計の針は十時を回っていた。

 白石は最後の問題集を閉じる。

「……よし。」

 もう新しいことは覚えない。

 今日は早く寝る。

 それが先生からのアドバイスだった。

 ベッドに入る。

 目を閉じる。

 だけど。

「お前が二位を取れ。」

「お前のこと、信じてる。」

 その言葉が頭の中で何度も繰り返される。

「……絶対。」

 小さく呟く。

「応えるから。」

 窓の外では秋の夜風が木々を揺らしていた。

 明日。

 努力の結果が試される。

どうなんだろうな。いけんのかな。

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