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桜の花はまだ知らない

まだ設定がよくわかんないと思うんですけど、頑張って読んでください。

これから頑張って執筆を続けていきます。できれば毎日投稿できるようにします。

 四月。


 校門の桜は半分ほど散っていた。


「……思ったより普通だな。」


 青峰高校。


 県内有数の進学校。


 模試のランキングに名前が載るような連中が集まる場所。


 神崎悠真は校門を見上げながら、小さく呟いた。


 もっとこう、堅苦しい空気だと思っていた。


 でも実際は違う。


「やば、クラス誰と一緒だろ!」


「お前絶対また赤点だろ!」


「まだ授業始まってねぇよ!」


 騒ぐ新入生。


 写真を撮る保護者。


 部活勧誘の先輩たち。


 普通の高校だった。


「神崎ー!」


「……朝からうるさい。」


「その反応ひどくない?」


 振り返ると、朝倉陽菜が立っていた。


 中学からの腐れ縁だ。


「ねぇ、今日くらい愛想よくしなよ。」


「なんで。」


「友達できないよ?」


「別に困らない。」


「困るの!」


 陽菜はため息をついた。


「高校って勉強だけじゃないんだから。」


「俺は勉強しに来た。」


「はいはい。」


 いつものやり取りだった。


 掲示板の前に人だかりができている。


「クラス見に行こ。」


「押すなよ。」


「神崎が言うセリフじゃない。」


 一年一組。


 自分の名前を見つける。


 その隣の名前を確認することもなく、神崎は教室へ向かった。


 クラスなんて、誰と一緒でも変わらない。


 そう思っていた。



「すご……。」


 白石美月は教室の前で立ち止まった。


 一年一組。


 新品の名札。


 知らない顔ばかり。


「入っていいんだよね……。」


 誰に言うでもなく呟く。


 眼鏡を指で押し上げて、恐る恐る教室に入った。


「おはよう!」


「よろしくー!」


 すでに会話しているグループもある。


(みんなすごいな……。)


 白石は静かに自分の席へ向かった。


 前から三列目。


 窓側。


 悪くない。


 隣の席の男子は、まだ来ていなかった。


「白石さん?」


「え?」


「同じ中学じゃなかった?」


「え、あ!」


 声をかけてきた女子に気づき、少しほっとする。


「よろしくね。」


「う、うん!」


 そんなふうに、少しずつ会話が増えていった。



「よし、静かにしろー。」


 担任の声で教室が落ち着く。


「今日からお前たちは青峰高校一年一組だ。」


 教室を見渡す。


 眠そうなやつ。


 緊張しているやつ。


 すでに友達を作っているやつ。


 神崎は窓の外を眺めていた。


「じゃあ、簡単に自己紹介な。」


 一人ずつ立ち上がる。


「サッカー部入りたいです!」


「漫画好きです!」


「よろしくお願いします!」


 様々だった。


「次、神崎。」


「……神崎悠真です。」


 立ち上がる。


「特にありません。」


「終わりかよ!」


 誰かが笑った。


 教室も少しざわつく。


「以上です。」


 着席。


「短っ。」


「神崎らしい。」


 陽菜の呟きが聞こえた。


 その少し後。


「白石さん。」


「は、はい。」


 眼鏡をかけた女子が立ち上がる。


「白石美月です。」


「読書が好きです。」


「よろしくお願いします。」


 小さく頭を下げた。


 それだけだった。


 神崎は特に気にしなかった。


 白石もまた、神崎のことを意識することはなかった。


 ただ、


 自己紹介が異常に短かった人。


 そのくらいの認識だった。



 放課後。


「じゃあまた明日ー!」


「部活見学どうする?」


「帰りコンビニ寄ろうぜ!」


 教室は一気に賑やかになる。


「神崎。」


「なに。」


「友達できた?」


「できてない。」


「誇らしげに言うことじゃない。」


 陽菜は呆れた。


「クラスメイトの名前くらい覚えなよ。」


「そのうち。」


「はぁ……。」


 神崎は鞄を肩にかける。


 窓から見えるグラウンドでは、運動部が走り始めていた。


 高校生活。


 あと三年。


 長いようで、たぶんあっという間だ。


「ま、どうにかなるか。」


 誰に言うでもなく呟いた。


 その頃。


 同じ教室の反対側では。


「高校、ちゃんとやっていけるかな……。」


 白石美月が、友人と笑いながらそんな話をしていた。


 まだ。


 席も遠い。


 話したこともない。


 ただ同じクラスになっただけ。


 神崎悠真と白石美月の距離は、教室の端から端くらい離れていた。


 だから、この時の二人は知らない。


 数か月後の席替えで隣になって。


 何気ない「ありがとう」と「ごめんね」を繰り返して。


 気づけば、お互いの高校生活に欠かせない存在になっていくことを。


 そして、その始まりは。


 特別な出来事なんかじゃなく。


 たった一枚の席替えのくじだったことを。


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