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島流し結界師の自給自足生活〜知らない間に島に珍獣が増えていく  作者: 鷹山リョースケ


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15 開錠

 朝起きると雪が止んでいたので、キアルは外に出た。

 山小屋周辺はオルナのお陰で少しだけ暖かいので、雪の量も少ない。

 それにマナウルフ家族は山小屋裏手の旧巣穴に通っているので、獣道ができている。


 冬でも狩りには出なければ、とキアルは思っていたのだが、フィンとソルカが獲物のお裾分けをしてくれるので助かっている。

 多分キアルも群れの一員という勘定なんだろうなと薄々気付いていた。

 否定のしようもないので受け入れている。


 先日のシャドウミンク騒動で、フィン達についに山小屋の奥まで進入されてしまった。

 だが個室には鍵がかかっていたので、キアルもマナウルフも入れないままだ。

 魔法錠だったらしく、フィン達の体当たりでもびくともしなかった。

 結局物理鍵は見つからないままだったので、魔法開錠するしかない。

 オルナの指導で練習していたがなかなか成功せず、気分転換も兼ねて外に散歩に出たキアルだった。


(雪が積もってるなあ……)


 一面の白い丘はきれいなものだった。

 そこを馬のダリアンが駆けていく。その後をスナリとフロッカが続く。

 ダリアンが蹴り上げる雪を避けて走る遊びをしているようだ。

 マナウルフ達はダリアンを襲ったりはしなかった。

 オルナが教えてくれたが(オルナはマナウルフ達と意思疎通ができた!)、人間の家畜は後が面倒なので襲わないそうだ。

 何が面倒なのか判らなかったが、ダリアンが無事ならそれでいい。

 ダリアンの方も仔ども達とはこうして遊んだりもする。成獣達はやっぱり怖いようだ。


 ぼんやりと眺めていたが、視界の端に他に動くものがあった。

 フィン達かと思っていたが、数が違う。

 三、四体いる。


「なんだ?!」


 キアルは慌ててダリアンを呼んだ。ダリアンが立ち止まり、雪をラッセルしながら戻ってくる。逆にスナリとフロッカは現れた動くものへと向かっていった。


「スナリ! フロッカ!」


 成獣のマナウルフに勝てる動物などそうそういやしない。だがスナリとフロッカはまだまだ仔どもだ。

 正体不明の何かに向かっていく二匹を見て、キアルは焦るばかりだった。

 丘の向こうに現れた動くものは、じき、横へと動き出した。

 走っている。

 たくさんの灰色のかたまりが走っていく。


「……は? いや、ちょ、え?」


 それは、狼の群れだった。

 フィンやソルカと同じぐらいの大きさの狼達が、順序よく並んで森へと走っていく。スナリとフロッカははしゃぐようにしてその群れの横をころころと駆けた。


 これがただの狼の群れなら危険極まりないが、この島はフィン達のいわば縄張りだ。敵対する群れならとっくに血祭りに上げられているだろう。


(ということは……フィン達の、お仲間ってことか?)


 なあんだ。キアルは安心した。

 そして飛び上がった。


「てことはあれ全部マナウルフだとでも?!」

「そうネー、あれ全部マナウルフネー」


 オルナが上空から答えてくれ、キアルは腰を抜かした。

 フィン一家だけでも珍しかったのに、群れとか。


「ええええ……」


 冗談じゃない。

 その稀少な毛皮を狙われて乱獲され、姿を見なくなったのがマナウルフだ。

 それがこんなにたくさんいるのがバレたら、一気に猟師や冒険者が押し寄せてくるじゃないか。

 冗談じゃない。いや本当に。


 これでキアルが筋骨逞しく戦い慣れた強い戦士であれば、マナウルフ達を狩って一攫千金を狙えたかもしれない。

 だが現実のキアル程度ではひと噛みで終わる。


 そもそも大陸から追い出されたもの同士、マナウルフとは既に仲間意識のようなものを感じていたので、今更そんな気にはならない。

 むしろ守ってやらなければと思う。


 ますます結界を強化しなければ。

 走り去るマナウルフの一団を見送りながら、キアルは強く思った。



 ◇ ◇ ◇



 キアルはスケアを抱えて奥の居室のドアの前にいた。

 不穏な空気を察してスケアがギュギュギュ…と低く唸っている。


 魔法開錠が上手くいかないのは、魔法鍵というものをキアルがよく判ってないからだ。当然だ。初めて見た。

 なので、スケアを部屋の中に入れ、部屋の内側と外側から同時に「見る」ことで鍵を把握しよう、という試みだった。


「スケア。ということで部屋に入って扉の……そう、ここ。このへん。このあたりを見てくれ」

「ギュー」


 キアルはスケアを床に下ろすと、覆い被さって影を作った。

 スケアはとぷん、と影に沈む。

 シャドウミンクが影に入る様子を至近距離で見て、キアルはちょっと「おおっ」と思った。


 キアルは目を閉じて集中する。

 使い魔の目を借りる感覚は前もって何度か練習した。集中する時間がまだまだ必要だが、慣れるとパッと切り替えられるのだそうだ。その域に達するのは遠そうだが。


 もや~っとした感覚から、もや~っとした暗がりが見えるような気がする。

 使い魔の視覚に準拠するはずだが、キアルの今の習熟度ではまだキアルの目、つまり人の視力に準拠している。


(く、暗い)


 しかもスケアが細かく首を振るので酔いそうだ。

 スケアがじき、上を向いた。


「ギュッ」


 今回はキアルの視覚に準拠していることが功を奏して、ドアノブ付近の魔法鍵が闇に浮かぶようにして「見え」た。

 キアルは脳裏にその魔法鍵の映像をピン留めするようにして、ゆっくりと目を開き、目の前の魔法鍵を見る。

 そして開錠を試みた。


 キン、とグラスを爪で弾いたような音がした。


「やった!」

「オメデトー」


 開錠成功だ。キアルは快哉を上げて横にいたオルナと抱き合った。


「熱っつ!」


 グレスアウルは思ったより熱々で、キアルはつい投げ出した。

 オルナは理解するけど納得いかないという顔をした。

 足元にするするとスケアが戻ってくる。


 いよいよ居室の探索だ。

 キアルはわくわくした。



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