憧れ
ビヨンドが仮の四天王になった次の日。
学園は大騒ぎになっていた。
眠い目を擦り、ビヨンドはベッドから起きる。
「なんなのよ......。人がぐっすり眠って居るってのに......」
ビヨンドは制服に着替え、自室を出る。
「わっ......! な、何よこれ......」
廊下に出ると、生徒たちが荷物を持ち、急いで走っていた。
「ビ、ビヨンドちゃーん! 大変だよー!」
生徒たちの奥に、ランディが立っていた。
ビヨンドは走っている生徒たちの間を通り抜け、ランディに近づく。
「ランディ、これってどういう状況?」
「大変なんだよ! さっき、この学園に予告状が届いて......!」
「予告状?」
「とにかく、ビヨンドちゃんを呼んで来いって言われてて......! 早く学園長室に行こう!」
ランディはビヨンドの手を握り、学園長室へ向かって走りだした。
「学園長! ビヨンドちゃんを連れてきました!」
学園長室に入ると、学園長、ラッティ、テペアが話合っていた。
「ビヨンドちゃん! これ見て!」
ラッティに言われ、小さな紙に書かれている内容を確認する。
「半月後の早朝、最強の怪盗の証であり、四天王の証でもある【ルキのペンダント】。そして、学園に所属する全員の命を頂く。怪盗ラヴァ、ルーフ、ノーティー、グラディー、シェド......!」
「今朝、学生の子がこれを拾ってらしくてね。すぐに話が広がって、みんなパニックになっちまったんだよ」
「それで、あんなに騒がしかったんですね」
「ふーん......。ラヴァ、ルーフに加えて、あと三人も......」
腕を組みながら、じっくりと考えるラッティ。
「なぁラッティ。私はルーフ以外は全く知らないんだが、知ってるかい?」
「ラヴァは知ってるけど、聞いたことないなぁ......。今、必死に思い出してみたんだけど、サッパリ......」
「私も知りませんわ......」
「となると、こいつらは名無しか、名を潜めている手練れ、ってことかい......? でも、怪盗なんだろ? 怪盗である以上、名前は広がっているはずだけど......」
「ちなみになんですけど、あのペンダントって、ルキのペンダントって名前なんですか?」
「いや、私は聞いたことないけど......? 学園長、このネックレスって、ルキのペンダントなの?」
ラッティはペンダントを胸元から取り出し、学園長に質問する。
「いえ、私も知らないですわ......。このペンダントに、初代学園長の名が付いているなんて......。って、そんなことより! とにかく、これは学園のピンチですわ! ラッティとテペアは、自身の部下に指示を! ビヨンドさんは、学生たちの中から、戦いに参加してくれそうな方を集めてください! 必ず、学園を守りますわよ!」
「わ、分かりました!」
「ビヨンドちゃん! 私も手伝うよ!」
「ありがとう、ランディ!」
「それじゃ、みなさん。頼みましたわよ!」
ビヨンドはランディと共に、学園長室を出た。
ランディはレパールとクレナイにも声を掛け、戦えそうな生徒を募った。
しかし、生徒たちは怖気づいてしまい、集められたのは、およそ二十人ほどだった。
他の生徒たちは学園から逃げてしまい、行方を晦ましてしまった。
そんな状態で、半月後の早朝を迎えてしまった。
「そろそろ日が昇る時間、ですね......」
戦う意志がある者たちは、訓練場に集まっていた。
「フェルノアさん。体は大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないが......。戦わざるを得ないだろ......? 俺は後方から支援する。ビヨンド、頼んだぞ......」
ビヨンドとフェルノアが会話していると、ガラガラという何かが崩れる音が聞こえた。
その音は、だんだんと訓練場へと近づいてくる。
「みなさん。戦う準備を!」
学園長の指示で、ビヨンドたちは武器を構える。
音はだんだんと近づいていき、ついに、訓練場の扉が崩れ落ちた。
「くっ......!」
砂煙が、ビヨンドたちを包み込む。
腕で目を守りつつ、何とか前を向き続ける。
「おぉ! 沢山いるじゃねぇか!」
野太い男の声が、砂煙の向こうから聞こえる。
「そう、ですね......」
「ふふっ。そうだね」
そして、聞き覚えがある声も。
「ラヴァ! ルーフ!」
砂煙が晴れる。
そこには、複数人の怪盗が立っていた。
鎧を従えた、ラヴァ。
ビヨンドが闘った、ルーフ。
巨大な槍を持ち、浮遊する盾と槍に守られた大男。
暗殺者のような見た目である少女。
そして、その四人が訓練場の扉の前から移動すると、見覚えのある女性が姿を現した。
「っ......! 嘘......でしょ......?」
その女性を見て、ビヨンドは言葉を失った。
ビヨンドだけではない。
四天王も、その部下も、学園長も、その女性を知る者全員が言葉を失った。
「久しいな。貴様ら」
歪な形状をした剣を持ち、黒いドレスを身にまとった、薄紫の髪の女性が髪をかき上げる。
「なんで......! どうして、貴方が......!」
「私がこいつらのボス、キラーナだ。お前たちを全員殺し、ペンダントは頂く......!」
ビヨンドたちの目の前に立っていたのは、ビヨンドの憧れの怪盗、煌きの怪盗キラーナだった。
第4章 END




