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親子の在り方

「あの子がそんな事を?」

 母であるパトリシア夫人は驚いてた。

 彼女が、政略結婚の相手を親に探して貰うつもりだと、伝えたからだ。


「どういうつもりなんだ?結婚相手なら……」

 父であるアイザック氏は言いにくそうに、私達二人を見て続けた。

「ここに優良人物が、二人も揃っているではないか?その上まだ他の人物も候補にしたいと?」


「いえ、そういう訳ではありません。誤解なさらないで下さい」

 ノア氏がすかさず言った。

「待って、意味がさっぱり分からないわ」


「多分、今までの経験や今回の裁判で色々考えたのでしょう」

 ディランはそう言って、ミリエンヌの両親であるパトリシア夫人とアイザック氏を前に言った。

「私もそう思います」

 ノア氏もそれに同意した。


 今日はノア氏と共にミリエンヌの留守を知って、スペンサー夫妻を訪ねていた。

 ミリエンヌはアンナや他の友人と芝居を観に行っている。


 少々狡いやり方と思ったが、二人のどちらかを選んでくれるのなら分かるのだが、思わぬ伏兵が現れないとも限らない。

 今の彼女は誰が見ても、とても魅力的だ。しかしそれと同時に危うくもある。

 全身ハリネズミの様に尖った雰囲気が消えて、柔らかく微笑む魅力的な女性へと変わっていた。

 何時も身構えていた雰囲気が消えて、年相応の無邪気で明るい彼女は誰が見ても魅力的だった。


 だからこそ心配でもあるのだ。


 今度こそ、騙されたりすれば、その傷は大きくなり前よりもっと傷つくのではないかと。

 それとライバル二人で話し合って、気になる事が一致した。

 これは家族の問題なので、ミリエンヌの両親に聞いて貰おうと思ったのだ。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「あなた方が、今日訪ねて来たのは、あの子に聞かせたくなかったからなのね」

「そうです」

「何かミリエンヌの事で気になるのかい?」

 何と切り出したらいいのか迷って、暫く無言が続いた。


「私達の事を考えてくれるのは嬉しいが、それがどうしてあの子自身の結婚と関係があるんだ?」

「私は⋯⋯彼女に振られました。でもノア氏を選ぶ為ならば⋯⋯まだ良かったのです」

「私も友達で⋯⋯と言われてしまいました」

 ノア氏が答えた。

「お二人共、振られたの?」

「そうです」

「⋯⋯」

「その理由が⋯⋯家にとっての政略結婚をする為と、彼女は言いました」

「政略結婚?」

「家の為の結婚をする為にだそうです」

「何故それを望むの?意味が分からない」

「彼女はお二人にとても感謝していて、恩を返したいのだと思います」

「⋯⋯」

「帰って来たら、聞いてみましょう!」


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 その夜夕食後、ミリエンヌを応接室へと呼び出した。


「わざわざどうされたのですか?何か内密なお話ですか?」

「ミリエンヌ、正直な気持ちを聞かせて頂戴。あなたはディラン様とノア様どちらに心があるの?」

「お母様、結婚の話なら今後お相手を探して頂きたいですわ」

「身近な二人じゃ駄目なのかい?頼りない?」

「お父様、そんな訳ではありませんが、私も家の役に立ちたいと思っていて……」

「家の役に?私達がそんな事を求めたかい?」

「いえ、そんな事はありませんが、私も大人になったのです!」


「好きな方と結婚してくれて良いのよ。それが親である私達の願いなの」

「お母様、お二人のようなソウルメイトは中々出逢えないと聞きます。ですから……」

「もしかして、私達の事を見誤っているのではなくて?」

 ミリエンヌの言葉を最後まで聞かずに遮って、パトリシアは言った。

「そうだ。何か都合良く勘違いをしているようだ」

「お父様まで……」

「あなたの正直な気持ちを聞いているの。何を考えているのか、話して頂戴」

「改めてそんな風に聞かれて、なんとお答えしたら良いか……」


「あの裁判以来何だか様子が変わったと思っていたけれど、何か思う事があったのね?」

「あ、私……」

「親子じゃないか、何でも話してご覧。受け止めるから」

「そんな大層な事では無くて…… 何と言ったら良いのか……」

「ゆっくりで良いわ」

「あの裁判で、色々考えさせられたのです。私も彼女と同じ養女で、思えば親孝行らしい親孝行もしていない事に気がついて。当たり前にこの幸運を思っていて……守られていた事をつい忘れて。だから、だから私も何か役に立つのじゃないかと……」

「馬鹿ね、子供がそんな事考えなくて良いのよ!」

「そうだ。ミリエンヌは誰が何と言おうと、私達夫婦の大切な子供だ!」

「私は確かにあなたを産んではいないけど、本当の母親だと思っているわ」

「私だってそうだ!父親なんだミリエンヌの!」

「私、あの頃の気持ちを思い出してしまって。心細くて、目の前が真っ暗になって……役に立たなきゃって」


「本当に馬鹿な子ね、私達の愛情を試しているの?」

「そんなつもりはなくて……ただ感謝の形を見せたくて、家の有利になる縁談なら喜んでくれるって」

「ミリエンヌはまだまだ子供だったんだな」

 アイザックがミリエンヌを抱きしめた。

「綺麗事では無く、あなたの幸せが私達の幸せよ」

 パトリシアの目からも涙が溢れる。

「あなたはね、あのケイトリンとは違うのよ!」

 家族で積み上げて来た絆、それがあの家とは決定的に違うのだと、パトリシアは娘を抱きしめる腕に力を込めた。


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