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昔話

自分のパソコンが欲すぃぃぃぃぃ

一人だけ男児が産まれてきた。

その言葉にショックを受ける。狐の話に信憑性が増してしまう。

そんな私の脳内とは関係なしに神代さんは続ける。

「とはいうものの私も詳しく知っている訳ではない。

 ただ昔、神楽家に男が存在し忌子と呼ばれ、最後にはその存在の記録さえも消された。

 私が知っているのはただこれだけ。詳しい理由などは何も分からん」


神代さんの言葉は私の胸に深く突き刺さる。息が苦しくなる。

もしも、もしも優希が忌子だとしたら、

私はどうしたらいい?

存在を消す?

私にできるはずがない。可愛い我が子を殺めることなど有り得ない。


「こんな話を君にするつもりはなかった。本当ならば私が誰にも告げず墓場まで持っていくつもりだった。

 そうすればそう遠くない未来に男児が産まれてきても、何の憂いもなく育てられたはずだった。

 しかしこの事実を知っている私が生きているうちに男児が産まれてしまった。

 さすがに知らんふりはできなかった。私には教える義務があり、君には知る義務がある。

 優希君に忌子の名を背負わせる訳ではないが何かあった場合は君の手に委ねられることになる。

 何も知らなかったで済ますことはできない。それに知っていれば採れる選択肢も増える。

 だからこそ君には酷だが今回この話をさせてもらった。本当にすまないな」

神代さんは申し訳なさそうに頭を下げる。

「神代さんの立場上仕方のないことなのは理解できます。 

 どうか顔を上げてください」


理解はできる。でも、だから何だというのだ。

優希が忌子であるならば私にはどうしようもできない。

その先に待っているのは破滅だけである。図らずも私はそれを知ってしまった。


「まぁ今までの話はあくまで万が一の話だ。

 優希君が忌子である可能性など限りなくゼロに等しい。だからそんなに気にしなくてもいい。

 ただ知識として知っていてくれ。それだけでいい。

 何事もないのが一番だが、有事の際には私も惜しみなく協力する」

そう言って神代さんはメモを手渡す。

「私の連絡先だ。何かあればすぐ連絡をしてくれ」


どうやら神代さんは神代さんは私の味方になってくれるらしい。

「ありがとうございます」

そう言って私は部屋を後にした。



自室に戻ってすぐ優希の顔を見に行く。

とてもおとなしい子で起きていてもあまり泣かない。

というか私の顔をじっとみつめてくる。すごく可愛い。

私は優希のマシュマロみたいなほっぺをプニプニしながら狐と会った日を思い出す。


あれは確か曇りの日だった。

私は討魔の仕事ではなく私用で霊山に来ていた。

霊山は私の住んでいる場所から西の方角へ一時間半ほど車を走らせた場所にある。

何故そんな場所に来ていたかというとリフレッシュのためだ。霊の名が指す通りこの山は神秘的な力が渦巻いており、気持ちを入れ替えるのに最適なのである。


リフレッシュ中の私にアイツは話しかけてきた。

「こんな場所に人間が来るとは珍しいのぅ」

私はとっさに身構えたがすぐにその意味がないことを理解させられた。

別格すぎる。溢れ出る妖気がそれを教える。

「討魔師か。まぁ儂は争う気などない。気楽にせい」

そんなことを言われた気がする。

いつ殺されてもおかしくはなかったが妖魔の気まぐれのおかげで私は助かった。


そしてすぐにこの場を去るべきだったと後になって後悔することになる。


「討魔師よ、少し昔話をしてやろう。もしかしたらお前さんにも関係のある話かもしれんぞ」


そう言われ私は話を聞くという選択をしてしまった。


私が黙って話をするように催促すると狐は遠くを見つめながら話し始めた。

「昔々、討魔師の一族に男が存在していた時代があった。それもこの長い歴史の中でたった一度だけじゃ」


昔は神楽家以外にも討魔師が存在していたのだろうか、そんなことを考えていた矢先、爆弾が落とされた。


「その家の名前は神楽。お前さんの家と同じじゃな」

狐がそう言ってニヤッと笑った。

「ちょっと待て。私の家にそんな記録はない。デタラメを言っているのか?」

おちょくられているのだろうか? そんな思いからイライラとした口調になる。

「まぁ落ち着け。年寄りの話は黙って最後まで聴くものじゃぞ」

再び狐は話し始める。

 

 その男は討魔師としてそれはそれは優秀な才を持っていたそうじゃ。そして大きな才のせいか、妖魔の心の中が見えていたらしい。

 何が見えていたのか儂は知らんがおそらくひどいものじゃったのだろう。

 ある日男は突然姿をくらました。

 家の者たちは必死に捜索したそうじゃがその結果もむなしく見つかることはなかった。

 

 そしてその一年後、家の者たちもすっかり諦めた頃に妖魔が暴れているとの連絡があった。

 討魔師が駆けつけると吸血鬼たちが暴れていた。

 その先には男がいたそうじゃ。

 一人が吸血鬼の存在も忘れて男に近寄ると男は振り向き、


 一切の躊躇なく近づいてきた者を殺した。 

 その目には狂気しかなかったそうじゃ。


 その場の空気が凍りついたそうじゃ。流石の吸血鬼も予想できなかったようじゃな。

 じゃが真っ先に正気を取り戻したのも吸血鬼。

 吸血鬼たちは討魔師たちを襲い始めた。


 そこからはひどいものじゃ。吸血鬼たちと討魔師たちの総力戦。そして自分の家族すら躊躇いなく殺していく男。

 血で血を洗うような凄惨な光景が広がっていた。


 最終的には討魔師たちに軍配が上がった。

 残った討魔師たちはこの戦いが男のせいで起こったのだと睨んだ。

 とは言っても男もその戦いで命を落としたそうで真相は定かではないのじゃがな。

 それ以降討魔師たちは男のことを忌子と呼ぶようになりその存在を歴史から消した。

 

「これで年寄りの昔話は終いじゃ、信じるか信じないかはお前さん次第じゃ」

そう言って狐は話を終わらせた。


とても信じられるような話ではなかったが、狐の言葉にはなんというか説得力のようなものがあった。

そして私は訊いてしまった。

そんな男が本当に実在したのか、と。


「先にも言うた通り信じるも信じないもお前さん次第じゃ。

 じゃがまぁ、この時代にそんな男が誕生してしまったらすぐに殺すか妖魔の餌にするかしかなかろう。

 儂はそれが討魔師のためになると思うぞ」


そして去り際、「いずれまた必ず会うじゃろう」

不吉な言葉を残して山の奥へ消えていった。

身体を増やしたいと思う今日この頃。

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