表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

母親

不定期でぬらぬら更新していく予定です。

混歴500年の元日

今日は250年に一度の新月の日である。夜には月の明かりが一切消え暗闇に包まれるという。今日ばかりは妖魔の活動も大人しくなり討魔の仕事も休みとなる。

何年振りの休みだろうか、今日はとにかくごろごろしていたい。屋敷に引きこもって1日テレビを見てやる。そのくらいはいいだろう。周囲の厳しい目にはもう疲れた。私の苦しみを分かってくれるのは母上と分家の(かがみ)さんだけだ。

鏡さんは討魔の血を引いてはいないがその素質が視えるらしい。私の素質を視て気の毒に思ったのかよく気にしてくれる。素質のことを私に伝えたことを後悔しているのだろうか、私は気にしていないというのに。


「今日未明○○区の路地で20代の女性が吸血鬼と思われるものに襲われた模様です。」

テレビをつけるとニュースがやっている。

「やはり化け物たちは危険な存在です。今すぐにでもあの存在たちを滅ぼすべきです。」

コメンテーターの1人がそんなことを言っているが妖魔と闘うのは誰だと思っているのだ。街に巣食う(グール)ならまだしもヤツらの本拠地など行きたくもない。特にあの化け狐、どうやったって勝てる気がしない。

テレビを消して横になる。

今日はどうにもイライラする。せっかくの休日だと言うのに、ましてやまだ午前中だ。

「・・・二度寝しよう」

私は布団を被って微睡みの中へと旅立った。



「御飯ですよー」

母上の声が聞こえてきた。

なんだか夢を見ていた気がするが思い出せない。

それはまぁいい。

「今行きまーす」

私は返事をし、立ち上がろうとした。

その時不意に吐き気がした。

幸いにもその場で乙女にそぐわないことをすることはなかった。

吐き気も収まり母上の待つ居間へと向かう。

「遅かったけれど、どうかしましたか?」

母上は心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「ちょっと気持ちが悪くなっただけです。今はもう大丈夫ですので心配しないでください。」

私は母上に心配をかけないようなるべく明るくそう答えた。

しかし母上にはそう映らなかったのだろう。

「本当に大丈夫ですか?」

いつもなら「大丈夫です」と答えたであろう。

しかしどうにも今日は気が立ってしまっている。

「母上、少ししつこいです」

心にもない言葉が自分の口から出てしまった。

ただ心配してくれているだけなのに。それが分かっていながらこんなことを言ってしまう自分に嫌気がさす。


母上は少し驚いたような表情をしながら何か考えているようだ。そしておもむろに

「琴音、今年で何歳になりますか?」

と聞いてきた。

「・・・ 今年の誕生日で24になります」

さっきの自分の言葉の気まずさといきなりの質問に返事をするのに少しの間を要した。

「そうですか。 もしかすると子を授かったのかもしれませんよ」

母上は今年で52歳となる顔を歳に合わない屈託のない笑顔にしながらそう言った。

シワ一つないその顔を見ると本当にこのヒトは50代なのだろうか?

そんな疑問が浮かび上がる。

疑問を浮かべらがら母上の言葉を咀嚼(そしゃく)する。

??? どうやら上手く噛めなかったようだ。

「へ?」

思わず情けない声が出てしまった。きっと間抜けな顔でもしているのだろう。

「ふふっ。 こどもが出来たかもしれないですよ」

母上はもう一度そう言った。

おーけー 落ち着け私。羊の数を数えて落ち着くのです。

羊が一匹、羊が二匹・・・

ダメだ絶滅危惧種に指定された羊では数が足らない。

いや、気にするのはそこじゃない。なんで羊を数えてるんやねん。

自分にツッコミを入れたところでようやく落ち着いてきた。

要するにmeのお腹にmy babyがhelloしたらしい。

「マジですか母上?」

「まだ決まったわけじゃないですよ。御飯が終わったら鏡さんに診てもらいなさい」

母上はそう言うが私よりも私を理解しているのだ。きっとそうに違いない。

どんな子が生まれるのだろうか? できれば才能ある子であってほしい。私と同じ苦しみを味あわせたくないと思うのは親のエゴというやつだろうか。まだ親になった訳でもないというのに。

「御飯が冷めてしまいますよ」

母上の声に私は思考の渦から抜け出す。

「すみません、いただきます」

そういえば昼飯の時間だった。もうすっかり頭の中から消え去っていた。

今日の御飯は鯖の塩焼きである。私の好物なのにちょっぴり冷めてしまった。残念。


その後はこれといった珍事も起こらずつつがなく昼食が終了した。

「「ごちそうさまでした」」

二人で合掌を済ませ食器を持って台所に向かう。

「母上は私の出産のときに記憶に残ったことってあります?」

私はただなんとなく聞いてみた。

「そうですねぇ・・ 全部が大切な思い出だけど記憶に残るのはやっぱり出産の痛みですね。 あの時に貴女は私の子なんだと改めて実感しました」

母上は昔を回顧するようにそう言った。

「そうですか・・・」

私は愛されている。 つくづく実感させられる。

果たして私は母上と同じように我が子に愛情を注げるだろうか?

不安が込み上げてくる。今まで妖魔しか相手にしてこなかった私が母親になるなど願いこそすれ、想像したことなどなかった。

不安だ。怖い。今にも見えないナニカに押し潰されそうだ。

私にはまだ無理だ。ヒトの親になるなど。ヒトに愛情を注ぐなど。

「しゃんとしなさい!

それにまだ時間もあります。今すぐに親になるわけでもありません。これからゆっくり悩んで、苦しんで、考えて、もがいて、覚悟を決めればいいのです」

あぁ、やっぱり母上には敵わない。私の考えていることなど全てお見通しだ。

「ありがとうございます」

私はそう言うのが精一杯だった。

いろんなものが込み上げてきて溢れそうだ。

「私だって最初から貴女の母親だったわけじゃありません。悩んだこともあったし苦しんだこともありました。

でもそうやって親として成長していくものだと私は思っていますよ」

「は、ははう゛え゛ー」

もう涙が堪えきれない。

「わた゛し゛もっと゛精進し゛まぁす゛ぅぅぅ」

「頑張りなさい。台所は私がやりますから顔洗ってはやく鏡さんのところに行ってらっしゃい」

母上は苦笑しながら私にそう言って洗い物を始めた。

気が付けば台所に到着していたらしい。

「ありがどうございます。いっでまいります」

私は鼻の詰まった声でそう言って洗面所へと向かった。


まだ主人公が生まれません。

どうしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ