雲行きは怪しく
今日は優希の二歳の誕生日。
今年は去年と同じく盛大にお祝いすることは叶わなかった。
母上はずっと寝たきりでそれどころではなかった。鏡さんも予定が入っていたらしく参加できないとのことだった。
私もこればっかりは仕方ないと思う。でもやっぱりさみしい。一年に一度の祝福される日くらいは盛大にやりたい。
と言っても呼べる人などいないわけで結局優希と私の二人きり。
いつもの日常となんら変わりない日となってしまった。
特別なことと言えば二人でケーキを食べたことくらいである。
おいしいけど何か物足りない。そんな感じだった。
いつもと何も変わらないけどせっかくの節目なのでここ一年を振り返ってみる。
去年もやった気がするがまぁいいや。
この一年、まず起こったのが母上の病気である。ちょうど去年の明日、母上が急に体調を崩された。
最初はただの体調不良ですぐ良くなるだろうと思っていたが、良くなるどころか現在進行形で悪化の一途を辿っている。しかも原因が分からないというのだからたちが悪い。
早く回復してほしいと祈るばかりだ。
暗い話題の次はもちろん明るい話題だ。
優希のここ一年の成長が凄まじい。
危なっかしく歩いていた頃が懐かしく、今じゃ元気に走り回っている。
身体もだいぶ大きくなり、優希はやっぱり男の子なんだなぁと実感が湧くようになった。
さらに優希の成長は身体面だけじゃない。
一年前は簡単な単語しか喋れなかった優希がなんと今じゃ会話ができるのです。
し・か・も、めっちゃ聞き分けがいい。私と違ってちょーいい子である。
子供の成長はなんと早いものか。つくづく感じさせられる今日この頃です。
というか本で読んだ子供の成長よりだいぶ早い気がする。私の気のせいだろうか?
もしかしたら討魔の素質がすごいのと何か関係があるのかもしれない、なんていうのはちょっと考えすぎだろうか。
まぁ偶然にせよ素質の影響にせよ、子供の成長が早いのは親にとって喜ばしいことである。
あとこの前初めて優希に色々な陣を見せてみた。
その結果がびっくりですよ。
私の予想では素質があるとはいえ、まだ二歳にもなっていない優希がこれらが何なのか理解できるとは思っていなかった。
せいぜい興味を持つくらいだろうと勝手に考えていたのだが甘かった。
興味を持つとかの次元じゃなく本能的に理解しているようだった。しかも陣の意味まで。
試しに「種類ごとに分けてみて」と言ったら、
見事に攻撃用、防御用、その他と分類した。
天才とはこの子のような人を指すんだ。私は自分で分けてみてと言ったくせに呆然とした。
言ったけどまさか本当にできるとは思わなかった。
私は悟った。これが才能か、と。
理不尽すぎるでしょこれは。
努力どうのとかのレベルではない。私は頑張って暗記したというのに。
何も知らないはずなのに、なんで見ただけでわかるのだろうか。
まったくわからない。サッパリですよコノヤロー。
自暴自棄になりながらも、なんとか理性を保つ。
おお、神よ。なぜ天は人々を不平等に作り上げたのでしょうか。
思わず天を仰いでしまった。
ちょっと冷静さを失ってしまった。
しかし私は悪くない。悪いのは優秀すぎる優希のせいである。
と、できの悪い私は優希に八つ当たりしてみる。
もちろん優希には通じていないだろうが…
「ママ、ごめんなさい」
唐突に優希に謝られる、しかもめっちゃ申し訳なさそうにしている。
Oh my god…
どう考えても私が120%悪い。
最近まじでこの子は私の考えていることを見通している気がする。それはもう怖いくらいに。
「優希ー、ママの方こそごめんね。ママは何も怒ってませんよー」
「ほんとー?」
優希が瞳をうるうるさせながら訊いてくる。
ヤバい。優希が私のせいでどんどん疑心暗鬼な性格になっていってしまう。
「大丈夫、ホントに大丈夫だから」
私が慌てる。私は子どもを泣かすことしかできないのか。生きててつらい。
しかし私のこの必死さがちゃんと伝わったのか優希の顔に笑みが戻る。
よかった。マジで焦った。
これから優希の前で変な考え事をするのはよそう、そう心に誓った瞬間であった。
そしてその日の夜も更ける頃、
母上の容態が激変した。
私は既視感を覚える。
母上が体調を崩されたのもたしかちょうどこの頃だった。
何故?どうして?
優希の誕生日は厄日なのか?
そんなことを思ってしまう。
でも今は後回し。やるべきことをやらなくては。
まずは医者に連絡。役に立つかは分からないがいないよりはマシだろう。
医者が来るまでは私が母上の看病をする。
とりあえず熱を測る。手で触っただけで高熱なのが分かる。しかも意識は混濁しているようだ。
何からすればよいか分からない。軽いパニックになる。
落ち着け、落ち着け私。慌てるな、一つ一つやっていけ。
一度大きく深呼吸をして冷静さを取り戻す。
ひとまず呼吸はしているようだ。今ある症状は高熱と意識の混濁だけのようだ。
私じゃ意識の方はどうにもならない。そう考え、熱を冷ますための行動に移る。
氷水とタオルの用意と解熱剤。はおそらく飲めないだろうと判断し、急いで氷水とタオルを持ってくる。
他に私ができることを探すが何も思い浮かばない。あとできるのは見守ることぐらいだ。変なことをして悪化させたくなはない。
医者が来るのが待ち遠しい。こんな時はこの家の立地が恨まれる。
じれったい時間が過ぎてゆく。時計の針はサボっているんじゃないかというほど進むのが遅い。
そうしている間にも母上の容態は刻一刻と悪化してゆく。
結局1か月一話ペースになってしまいそう。




