母と子供
お久しぶりな感じになってしまった。
母上が体調を崩してからずいぶん経った。
しかし体調は一向に良くならないどころか、悪化の一途を辿っている。
医者に診せても原因は分からないというだけで何の役にも立たない。
何の為の医者だと苛立ちがこみ上げてくる。無能と罵りたくなる。
でも一番ムカつくのは私自身だ。
母上に対し、何一つしてあげることができない。母上にはつらい時、苦しい時、いつも助けられてばかりだというのに。
一つとして返してあげることができない。私はどこまで無能なのだろうか。
自己嫌悪に悩まされながら私は母上が寝ている部屋へと向かう。
「失礼します。母上、体調はいかがですか?」
「私は大丈夫ですよ。それより優希君の面倒を見てあげなさい」
母上はいつもそうやって私に全くと言っていいほど弱みを見せてくれない。それどころか私と優希の心配ばかりしている。
私はそんなに頼りないのだろうか、不安を思わず口にしてしまう。
「母上、私はそんなに頼りないのでしょうか?」
母上は優しい顔で私の問いに答える。
「そんなことないですよ。琴音は立派になりました。もう私が教えることなど何もないくらいに。
でもそれはそれとして貴女はいつまでも私の大事な娘でもあるのです。娘を心配しない母親なんてどこにもいませんよ」
「母上はずるいです」
そう言われると私は何も言い返せない。でもやっぱり私はこのヒトの子供でよっかったと心の底から思える。
そして私もそんな母親になれればいいと思う。
「でも母上、何かあればすぐに言ってください。私はあなたの娘なのですから。母親を心配しない娘なんてどこにもいません」
私は精一杯の笑顔でそう言い返す。
「これは一本取られましたね」
母上も苦笑いしている。
母上のそんな顔を見届けて私は部屋を後にする。
次いで向かうのはもちろん優希のところ。
最近の優希はとてもおとなしくあまり手を焼くことがない。一年前のちょうど今頃はてんやわんやだった。休む暇なんてなく目が回るような忙しさだった。
それを思うと少しだけ優希の成長というものを感じられる。
まだ一歳と六か月だというのに私の忙しさを理解してるかのようである。このままだと優希が五歳くらいの時には私より立派な子になっているかもしれない。
これはヤバい。ただでさえ素質の面で優希は私よりも優秀なのにその上人格というものまで優希に上をいかれてしまっては私の親としての立つ瀬がなくなってしまう。
私ももっと大人にならなくては。すでに若干の危機を抱きつつある。
とりあえずその件については頭の片隅に置いておき、優希とのコミュニケーションタイムに移る。
「優希~元気だったか~ うりゃうりゃ」
優希のほっぺたをつつきながらご挨拶。
優希はきゃっきゃと喜んでくれる。
母上のこともあり優希との時間が満足にとれないことが多く、一日中優希とべったりすることがあまりできない。
だから優希と一緒にいられるときはこうしてスキンシップをたくさんとるようにしている。少しでも母親らしいことができていればいいと思う。
優希がもう少し大きくなったら、親としてではなく討魔師として優希に接しなければならないときもでてくる。
親として、討魔師として、その二つが私に両立できるのか不安だが頑張らなければいけない。
それに楽しみでもあるのだ。
素晴らしい素質を持っていると言われた優希を実際にこの目にするのが。
あと一、二か月もしたら優希に陣を見せてみるつもりだ。優希がどんな反応をするのか今からドキドキである。
やっぱり直観的に何か分かったりするものなのだろうか。
ちなみに私は現在進行形でさっぱりである。使えはするが何がどうなっているかなどサッパリである。
こればっかりはしょうがない。素質がないからといって努力を怠ったのは私なのだから。
私も優希と一緒に修行でもしようかなんて考えてみる。
それはそれで楽しそうだが優希の才能に嫉妬してしまうかもしれない。前途多難である。
私はどこまで難儀な性格をしているのだろうか?
またまた自己嫌悪に陥る。
「ままー」
優希が私の顔を見つめてくる。
どうやら心配してくれてるようだ。
というのは私の勝手な想像だが、優希が私を呼んでくれるときはたいがいこうして私が落ち込んでいたり考え込んでいるときなのだ。
私の心を透かして見てるんじゃないかと思うほどタイミングがいい。
それともそういうときの印象が強いだけだろうか。
まぁ、どちらにしたって嬉しいことである。優希が私のことを「まま」と呼んでくれるのだから。
そうして今日も優希に元気をもらう。
私は貰ってばかりだとつくづく感じる。優希にも母上にもだ。
果たして私はそれ以上のものを返せるだろうか。
「頑張らなきゃ」
改めてそう思う。
そのためにも母上にははやく元気になってもらわなくては。
今は祈ることしかできないが…
とりあえず目の前のことをこなしていこう。
何をやるにしてもそれからだ。
「よしっ」
自分に喝を入れる。
優希に別れを告げ、家の仕事へ取り掛かる。
やることは多いが着実に終わらせよう。
そうして今日という日も過ぎてゆく。
これからは月二回くらい更新したい(願望)




