始まりの邂逅……(旧第一話)
新規で第一話を書き直したので旧第一話は設定へ。
巨大な大樹の下。
地下深い場所に広大な空間が存在している。
本来で有れば日の光が射さないはずのその場所は、天井の水晶から射しこむ光であふれていた。
全面を石畳で作られた、飾り気の無いその静寂な世界において、異質なものが2つ。
高さはゆうに十メートルを超える大きな扉。
そして、その扉を見つめるひとつの影。
その影がつぶやく。
「久しぶりの来客だな……それも2人も、珍しい」
その影が苦笑を浮かべる。
「一人はいつものアイツか。しかし、もう1人は新顔だな」
苦笑を浮かべながら、しかし楽しそうに哂う。
「同じ顔ばかりではつまらないからな。アイツがわざわざ同行するくらいだ、期待しておこう。」
と、つぶやきながら扉まで歩きはじめた。
くくくっ……。
哂いながら歩くその姿が光に照らされる
現れたのは長身な男の姿。
黒髪・黒眼・黒い獣皮のローブと全身黒ずくめ
おそらく二十代前半といったところか
「ああ、楽しみだ……」
楽しそうに哂う。
その男の、扉を一身に見続ける瞳には強い力が篭っていた。
◇◆◇
少女は走っていた。
そこは坑道のような迷宮。
額には大粒の汗をかき、荒い息を吐いている。
「もうすぐ最深部につく、そこに目的のものがあるよ」
その少女に、先頭を走っていた女性が声をかけた。
二十代半ばだろうか。その姿は紫の長髪を後ろで束ね、長い髪をピョコピョコ揺らしながら軽快に走っている。
出で立ちは軽装に複数の短剣を腰に下げている。
余裕の無い少女と違い汗ひとつ、息切れひとつおこしていない。
「はい! わかりましたっ!」
必死に声を出し、返事をする。
その姿は、他の誰かが見れば今にも倒れてしまいそうな、まさに疲労困憊。
しかし、彼女は倒れない。
強い決意を、意地を胸に。目的地までひた走っていた。
歳の頃は十代半ばか。
幼さが残る顔つき、少し赤みががった金色の短髪、装備はロングソードと鉄製の胸当て。
長く使っているのだろうか、剣も胸当ても、大小様々な傷がいくつも存在していた。
「ほかの連中なら大丈夫。他の場所と違ってここでは何の問題も無い」
先頭を行く女性はそう言いながら笑いかける。
少女もそれは承知していた。
ここに挑戦するのも初めてではない。
幾たびもの挑戦を行い、そのことごとくを失敗に終わらせてきたのだ。
彼女の助力を得て初めて、ここの深部に到達することが出来た。
途中で脱落してしまった仲間のためにも、必ずたどり着く。
その思いを胸に一心に走る。
「ほら……みえてきたよ。アレが入り口だ」
そう聞こえ、顔を上げ目をこらす。
「見えただろ?あれがそうさ」
少女の目にも見えてきた。
どれほど夢見たことか、どれほど望んだことか。
旅にでてから十余年その存在を信じ、探し続けたモノが今目の前にある。
「さて、着いたね。ここが深部『修練の門』さ!」
息も絶え絶え、疲労は極限に達していた。
しかし、少女の瞳はその巨大な『扉』から離れる事がない。
その瞳はまるで、恋い焦がれた存在を待ちわびたかの様な熱が込められていた。
「これが……これで、ようやく……」
疲れ切った体に鞭を打ち、手をのばす。
重厚なその扉は 、少女の意思に従い開いていく。
扉の中からの光が暗い坑道を照らす。
急な光で目を焼く少女の耳に声が届く。
◇◆◇
俺の視界には、扉を開けるその姿が見える。
さぁ、はじめよう。
俺は声を上げた。
「ようこそ! オレの迷宮へ!!」
神秘とは何だろう?
秘宝とは何だろう?
冒険とは何だろう?
人界・神界・魔界が隣り合わせで存在する世界。
『アムサルクティア』
隣り合う三世界のうち、人間種族が住む“人界”。
この人界には多くの種族が暮らし、共栄している。
そして人々は数多くのコミュニティーを形成し、生活をしている。
『都市国家』と呼ばれる都市中心の国家。
『迷宮都市』と呼ばれる迷宮中心の都市。
それらが複数集まり、この人界を構成している。
その中の一つ。遠く地の果てにある、とある迷宮。
長いプロローグを経て。その日、二人は邂逅した。