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13話

それからは大騒ぎだった。


研究室の扉が勢いよく開く。


「アルト!!」


血相を変えた父様が飛び込んできた。


「無事か!?」


「え?」


突然のことに思わず間の抜けた声が出る。


父様は俺の肩や腕をぺたぺたと触り始めた。


怪我がないか確認しているらしい。


そして。


光り輝く何でもわかーる君十六号の前で、椅子に座って普通にしている俺を見て。


ようやく本当に無事だと理解したのだろう。


「……無事か」


へなへなとその場に座り込んでしまった。


そんなに心配だったのだろうか。


後から聞いた話によると。


爆発したと言っていた、何でもわかーる君七号。


その爆発に巻き込まれた被害者が父様だったのである。


当時、父様の魔力量が測定器の限界を超えた結果――。


見事に大爆発。


研究室の壁には大穴が開き、父様も盛大に吹き飛ばされたらしい。


「あの時の事は今でも鮮明に覚えている」


とは父様の談である。


なるほど。


自分が爆発に巻き込まれた経験があるなら、息子が魔力測定に行った後、母様が大慌てで呼びに来たら血相を変えてやって来るのも当然だった。


そこへ。


「あなた!」


少し遅れて母様も戻ってきた。


そして。


「光属性です!」


「なに!?」


「光属性です!」


「本当か!?」


「本当です!」


二人して俺を見る。


次に光り輝く何でもわかーる君を見る。


そして。


「おおおおお!」


抱きしめ合いながら喜び始めた。


仲良しである。


「光属性か!」


「ええ! 光属性です!」


「それだけではありません!」


母様が興奮気味に続ける。


「氷属性もです!」


「なにぃ!?」


父様が目を見開く。


「光属性だけでも大騒ぎなのに、氷属性までだと!?」


「そうなのです!」


きゃいきゃい。


わーわー。


大公夫妻とは思えない騒ぎ方だった。


正直少し可愛い。


十分ほど経って。


ようやく二人は落ち着いた。


俺を囲み三人で座り直す。


父様は心なしか、わかーる君から一番遠い所に座っている。


どうやらまだ少しトラウマらしい。


そして母様による魔法講座が始まった。


「まず、この世界の属性は大きく分けて二種類あります」


母様は紙へさらさらと文字を書いていく。


火。


水。


風。


土。


「この四つが基本四属性です」


なるほど。


ファンタジーの定番である。


「そしてこちら」


氷。


雷。


光。


闇。


「これが希少四属性です」


「希少?」


「その名の通り、持っている人が少ないのです」


母様が頷く。


「基本属性は比較的よく見られます」


「ですが希少属性は人数そのものが少ないのです」


「そのため希少属性保持者は国への報告義務があります」


なるほど。


それだけ珍しいということか。


「さらに――」


母様は少し真面目な顔になった。


紙にもう一つの文字を書く。


神聖。


「神聖属性です」


「これは?」


「さらに特別な属性です」


母様が説明する。


神聖属性保持者は極めて少ない。


発見された場合は教会本部へ報告される。


場合によっては教会預かりになることもあるらしい。


「へぇ……」


何だか大変そうだ。


他人事みたいに思っていたが。


よく考えたら適性判定の話である。


つまり。


俺にも関係がある。


「アルトちゃんの場合は――」


母様がにこりと笑う。


「氷属性と光属性の二属性持ちです」


「しかもどちらも希少属性」


父様が腕を組みながら唸る。


「聞いたことがないな」


「私もほとんどありません」


母様も真剣な顔で頷いた。


「歴史書を調べれば記録はあるかもしれません」


「ですが少なくとも私が知る限り、希少属性同士の複数持ちは極めて珍しいです」


極めて珍しい。


ほとんど存在しない。


そう言われると実感が湧いてくる。


なるほど。


確かにこれは騒ぎになる。


親バカだから騒いでいるだけではなかったらしい。


俺は改めて光り続ける何でもわかーる君十六号を見た。


そして思う。


(光と氷属性か……)


光。


氷。


スポットライト。


スモーク。


頭の中に自然とライブ会場の光景が浮かぶ。


暗転したステージ。


眩しく照らされるセンター。


白く広がる幻想的な煙。


完璧である。


(いや待て)


まだ魔法の使い方すら知らないのに何を考えているんだ俺は。


だが。


希少属性の価値や将来性より先に、ライブ演出に使えるかどうかを考えてしまう辺り。


我ながら筋金入りのアイドルオタクだと思う。


そんなことを考えていた俺は、まだこの力の本当の価値を理解していなかった。

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