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第5話 徒党を組むなんて聞いてない

 □豚巨人の集落近辺


 シンとメイクによるオークの乱獲。


 その結果、シンのレベルは280へ。

 メイクのレベルも278に上昇した。


 シンは獲得したSSPをSTRへ振っている。


 さて、オークを次々と倒しレベルも上がり、順調だったのだが……。


「えーっと、どうしようか」


 シンはそう呟くしかなかった。


 眼前には3種のG3モンスター。

 彼らはシンとメイクの出方を窺うように移動している。


『SHIIII……SHIIIAAA……』


 一体目は黄土色のぶよぶよとした体で地を這う巨大ミミズ――ワーム。

 地中を掘り進めることも可能で、顔には巨大な口のみが付いている。


『…………』


 二体目は知性を宿した巨大樹――トレント。

 敏捷性は低いが、木操作スキル【ツリー・コントロール】で樹木を操り、豊富な手数を武器にする。


『KYUAAAAAAA!』


 三体目は鷲の頭と獅子の下半身を持つガルーダと並ぶ怪鳥――グリフォン。

 獰猛かつ知能が高いことで知られ、圧倒的な膂力を内包している。


 3種それぞれがオークを凌駕する強さを持っており、特にグリフォンは強い。


 それら三者が今、シンとメイクを狙っていた。


 ちなみに【真の覚醒者】は発動済み。

 現在のシンのステータスは以下だ。


 ――――――――――

 PN:シン

 ID:12189698

 討伐カウント:58


 レベル:280(SSP:0)

 HP:500(+1900)

 MP:0(+300)

 STR:500(+2200)

 VIT:300(+2850)

 DEX:0(+2700)

 AGI:1500(+1500)


 スキル:なし

 スミス・スキル:【ブラック・リヴォルブ】

 イレギュラー・スキル:【インフィニット・インカーネーション】

 オリジナル・スキル:【真の覚醒者】


 武器:G5〖廻拓の剣・黒〗STR+1001

 上半身:G4〖千変万化のアーマー〗VIT+537

 下半身:G2〖冒険者のレザーパンツ〗AGI+100

 籠手:G2〖冒険者の籠手〗STR+100

 靴:G2〖冒険者のブーツ〗AGI+100

 アクセサリー:G2〖敏捷の指輪〗AGI+100

 ――――――――――


 HP・AGIはグリフォンのステータスを。

 MP・DEXはトレントのステータスを。

 STR・VITはワームのステータスを基に【真の覚醒者】は発動されている。


「大丈夫、攻略できるっしょ! ウチだけじゃ力不足だけど、シンの力があればさ!」


 メイクはシンと違って余裕そうだ。

 巨大ミミズに、動く巨大樹、空を我がもの顔で飛ぶ怪鳥を前に、メイクには一片の物怖じもない。

 それは一重にシンの力を信じているから。


 対するシンの顔は険しいが……。


「たしかに装備とかで強くなってはいるけど……ってマズい、奴ら攻撃を仕掛けてくる……!」


 見れば3種のモンスターがほぼ同時に2人へ向かい始めた。


 モンスター達が今まで攻撃を仕掛けなかったのは、攻撃のタイミングを示し合わせるためか。



 ――モンスターの習性について。


 討伐カウントに含まれるモンスター100種は原則、同族・異種族を問わず争わない。


 とはいえ、異種族のモンスター同士が連携を取ることも珍しい。

 モンスターによって知能レベルに差があったり、コミュニケーション方法に違いがあるからだ。


 上記の例外として、EBMは他のモンスターと戦闘をする。

 これには明確な理由がある。


 EBMはプレイヤーと同じく、敵を倒すことでレベルを上げる特性を持つ。

 この特性を持つがゆえ、EBMはプレイヤー・モンスターを問わず倒し、自身を強化しようとするのだ。


 当然、通常モンスターもEBMを敵視するというわけである。



 モンスターの習性から考えるなら、異種族のモンスター同士が連携を取ることは稀。

 それでも連携を取ってきたのなら、それは偶然か――それともシンとメイクを危険視したからか。


 発端はオークの乱獲で目をつけられたからだろうが……。


「――とにかく迎撃する……!」


「うん! シンはいつも通り戦えば大丈夫! ウチはサポートするからさ!」


「了解!」


 そう言って、シンは向かってくる三者へと走り出す。


「【バフ・アジリティ】!」


 メイクの支援スキルにより、シンのAGIにバフがかかる。

 2人はいつも通り、高AGIを活かして戦闘を有利に進めるつもりだ。


「――ッ!?」


 しかし敵の思わぬ動きに気を取られ、シンは一瞬動きを止めてしまった。


『KYUAAA!』


 グリフォンだけが()()()()()()のだ。

 一直線に向かってくるのを止め、迂回。


 グリフォンはシンの背後にいるメイクへと向かう。


「させるか――」


 もちろんシンがメイクを危険にさらす選択を取るわけがない。


 しかし、グリフォンの行動によって、シンは一瞬動きを止めてしまった。

 普段ならば敵に与えない隙を、シンはワームとトレントに与えてしまっている。


「――うぐッ!」 


 シンがメイクの方を振り返るより早く、シンの身体を大きな衝撃が襲った。


「シンっ!」


 心配そうなメイクの声が聞こえる。


 シンは地を転がされながら、何が起きたのか理解に努める。


 上下左右がグチャグチャの視界で一瞬見えたのは、鞭のようにしなる木の枝。

 シンは自身がトレントの操る木の枝に吹き飛ばされたのだと悟った。


 しかし、シンは運が良かったと思った。

 トレントが木を槍状へ変じさせ、串刺しにしようとしてきたら深刻なダメージを受けていたかもしれないからだ。


 (ともかく反撃を――)


 しかし、運が良かったと思ったのも束の間。


「なん……だとッ」


 転がされながら、シンは驚愕と共に目を見張る。

 一瞬だけ視界に映った光景から、シンはトレントが自身を串刺しにしなかった理由を悟ったのだ。


『SHIAAA……!』


 シンが弾き飛ばされた先には、ワームの巨大な口と鋭利な歯。

 このままではワームに噛み砕かれることは必至。


 (マズい。体勢を――)


「ッああああああ!」


 無理やりに体を旋回させ、シンは足を接地させる。

 それにより転がる速度を弱めるが、その隙をワームが見逃してくれるはずもなく――


『SHIIAAA!』


 ワームがシンの胴を嚙み砕くために接近。

 足はトレントに弾き飛ばされた勢いを踏ん張るために動かせない。


 下半身は戦闘における動きの起点。

 ゆえにこの状況では、純粋な腕力だけで防衛するしかないが……。


「間に合え……!」


 シンの胴に纏われた漆黒の鎧――〖千変万化のアーマー〗がシンの思考とリンク。

 即座にジェル状となり流動する。


 そしてシンの胸の中央から槍状に伸びた〖千変万化のアーマー〗がワームの顔に突き刺さった。


『SHII……! SHIIIAAAA……!』


 しかしワームの動きは止まらない。


 当然だ。

 顔に細槍が刺さったくらいで、トロールやオークよりも強いと言われるワームが止まる訳がない。


 それでもワームの迷いなき直進に少しの迷いを与えることはできたらしい。

 攻撃の軌道がほんの少し逸れる。


 (躱すには一歩足りない……)


 ワームの大口がシンに迫り、シンはこれ以上の迎撃行動を取れず――


「――【ファイア・コントロール】!」


 快活な詠唱と共に放出された火球がワームの顔に炸裂した。


『SHII……AAA……』


 ワームの攻撃方向はメイクの【ファイア・コントロール】によって今度こそ完全に逸れる。


 その隙に、ワームの攻撃を受けなかったシンは転がされた勢いを完全になくすことができた。


「メイク……!」


 メイクはと言えば、煙の舞う中で戦っている。

 視覚の阻害を狙った〖煙玉〗を使って、グリフォンと戦っているのだろう。


 煙を用いてグリフォンをいなしながら、シンの窮地を救ったのは流石と言える。

 加えて【バフ・アジリティ】を維持するためのMPも把握しつつ【ファイア・コントロール】を発動している。

 MP管理もバッチリだ。


「シン! あんまり弱音言いたくないけどんだけどさ!

 後一発でも【ファイア・コントロール】打てば【バフ・アジリティ】維持できなくなるかも!」


 メイクのMPにも限りはある。

【クイック・リトリーブ】によって即座に〖MPポーション〗を引き出したとて、戦闘中の彼女にはポーションを飲む暇がない。

 〖ポーション〗は瓶に詰められたものを飲み干さねば効果が出ないのだ。

 その間にグリフォンからの攻撃を受ければ致命傷を負う可能性が高い。


 つまり、理想的な筋書きはメイクのMPが切れるまでに勝利すること。


「了解! ワームから守ってくれてありがとう!」


「いいってことよ~! とりあえずワームとトレント倒しちゃって! グリフォンからは何とか生き延びておくからさ~!」


 メイクはグリフォン相手に手持ちのアイテムで何とか生き延びる気だ。


 メイクの観察眼をもってすれば、ステータスで劣っていようとグリフォンの攻撃を躱すことは可能だろう。


 しかし、シンとしては万が一にもメイクを死なせるわけにはいかない。


 ここがゲーム世界であっても、親友の死など目の当たりにしたくないのだ。


 (――伸びろ、千変万化)


 シンの思考に従い、剣先へ〖千変万化のアーマー〗が移動。

 剣先が大幅な伸長を遂げる。


 (まずはトレントから……!)


 トレントはG3モンスターの中でAGIが最も低い。

 AGIの遅さを【ツリー・コントロール】の手数の多さで補っているのだ。


 しかし、シンにとってトレントの木を避けることなど、本来は造作もない。

 先ほどのように隙さえ突かれなければ……。


 ともかく、インフィニット・バラエティ・スライムの無数の魔法に比べれば、容易に躱せる。


「――フッ!」


 シンは勢いよくトレントとの距離を詰めていく。


『…………!』


 トレントは【ツリー・コントロール】を発動。

 数多の木の枝を伸縮、硬化させてDEX値に依存した攻撃を行う。


 しかし、シンはそれらを全て見切っていく。


 そして、あっという間に攻撃の間合いへと入った。


 〖千変万化のアーマー〗により、伸長した〖廻拓の剣・黒〗は下から上への斬り上げが行えない。

 剣先が長いために地面に当たってしまうからだ。


 とはいえ、攻撃射程の伸長は強力。

 中距離からでも攻撃が届き、モンスターの巨体にも深い傷をつけられる。


 そのため斬り下げる形で、シンは斬撃を繰り出した。

 その剣速はトレントの迎撃速度を遥か凌駕する。


 ワームがシンに追いつく前に、シンは可能な限りトレントに攻撃を浴びせていった。


 トレントは一瞬にして身体を幾重にも切り裂かれ、HPを全損。

 その巨体を光の塵へと変える。



 ――No.59 トレントの討伐を確認しました。


 ――討伐カウントが59に上昇。


 ――ゲームクリアまで残り討伐カウントは41です。



「――フッ」


 シンは足を止めず、次の標的であるワームへ向かう。


 先ほど〖千変万化のアーマー〗と【ファイア・コントロール】で穿ったワームの顔は既に治りかけている。


 プレイヤー・モンスター問わず体を欠損した場合――

 HPが全回復している状態で、更に回復スキルや回復アイテムを使用することで欠損部分は回復する。


 ワームは総HPの3%に当たるHPを1秒ごとに回復する【自動HP回復Ⅱ】というスキルを持っている。

 そのため、受けたダメージをすぐさま回復し、顔の欠損までもを治してしまったのだろう。


「――ッ!」


 シンは足に力を込め、自身へと向かってくるワームへ肉薄する。

 ワームのHP回復量を上回るだけのダメージを一瞬で与えるため、集中を深めて――


『SHIII……!』


 ワームとの彼我の距離は0に。

 シンは秒速200メートルという高速で、ワームの巨体側面を斬りつけていく。


 ワームの主な攻撃方法は『噛みつき攻撃』と『地中からの奇襲』。

 真っ向から速度対決をしてシンに敵うはずもなく。


『SHI……AA……』


 数瞬の後にシンによって与えられたダメージによってワームは力つき、その身を光の塵に変えた。



 ――No.56 ワームの討伐を確認しました。


 ――討伐カウントが60に上昇。


 ――ゲームクリアまで残り討伐カウントは40です。



「最後はグリフォン……!」


 メイクは今なお、グリフォンと戦闘をしている。


『KYUAAAAAAA!』


 ガルーダが風を操る魔法巧者(こうしゃ)の怪鳥ならば、グリフォンは膂力で敵をねじ伏せる怪鳥だ。

 手数はガルーダが上回り、一撃が重いのがグリフォンと言い換えてもいい。


 だからこそというべきか、メイクは戦いやすいようだった。


「早かったね! グリフォンの動きは見切ったし、もう少しゆっくりしてても良かったのに~!」


「本当にメイクは凄いね」


 メイクにはシンのように特別なスキルや装備はない。

 それどころかメイクは後方支援がメインだ。

 討伐適正レベル350のグリフォン相手に真っ向から戦えるビルドなど組んでいない。


 それを踏まえて――

 シンへの支援を考えなければ、メイク一人でグリフォンを攻略することも充分可能に思える。


「シンに言われたくないよ~。G2制覇したばっかりなのにEBM倒しちゃうような人にさ~」


「そう言われると……返す言葉がないかも」


 シンが困りつつもメイクの隣に並ぶと、メイクは嬉しそうに杖を構えた。


「総決算と行こ~!」


「了解、メイク」


 そうして2人はグリフォンを瞬殺した。



 ――No.57 グリフォンの討伐を確認しました。


 ――討伐カウントが61に上昇。


 ――ゲームクリアまで残り討伐カウントは39です。



 討伐カウントの脳内アナウンスを聞きつつ、2人はその場に腰をつける。


「シンお疲れ~!」


「メイクもお疲れ」


 そう言って2人は拳を合わせる。

 オークから数えれば一気にG3モンスターを4種も攻略してしまった形だ。


 普通のプレイヤーならば、こうも容易くG3モンスターを攻略できないのだが……。


 シンとメイクの2人はやはり“期待のルーキー”という異名に相応しいということだろう。

 シンだけを指して何やら“新星”などと呼んでいる者もいるらしいが……。


「ともかく一旦休憩しよう。一度に3種の相手は疲れたしね」


「そだね! ウチ飲み物とか、お菓子持って来たから一緒に食べよ~!」


 そうしてシンとメイクは小休憩へと移行した。

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