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ドルヲタ男子高生、アイドル運営はじめました!  作者: フミヅキ
第二章 新人アイドルと愉快な仲間たちと僕
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新人アイドルと愉快な仲間たちと僕⑧

 ハンバーガー屋からの帰り道、駅が違うために山査子さんと別れ、僕と匠汰くんは並んで歩いていた。


「カナメはああ見えてリアリストだし、完璧主義っぽいトコあるからよ。ちょっとキツイとこあるんだけど、本人に悪気はねえんだよ! アイツはお前を責めてる気はなくて、提案のつもりなんだ。こうしたらうまくいくんじゃね?っていう。だから、あんま気にすんな!」


 匠汰くんは慰めるように僕の肩をバシバシと叩いた。


「匠汰くん……」


 友達というのはなんて尊いものか。そう思ったのも束の間。


「でもよ、カナメのそういう意外と器用じゃねえとこが可愛いっつーか。俺しか理解してやれないっつーの? ヘヘ!」


 それ以後、匠汰くんの顔に似合わないノロケ話を延々と聞かされる羽目になった僕の気持ちがわかるだろうか。こちらはアイドルに青春を捧げ、カノジョなどいたためしがない非モテ階層民である。


「カナメの可愛いトコって言やあよぉ」


 三白眼のくせに緩み切ったヘラヘラ顔になってノロケ続ける匠汰くんは、隣で僕が死んだ目になっていることに気が付かない。


(耐えろ、僕! 作曲家先生とデザイナー先生の協力を得るためなんだ!)


 そう考えながら、心の底に湧きだす嫉妬と憤怒の激情を抑え込む僕。

 アイドルのプロデューサーというのは思っていたよりも過酷な職業なのかもしれない。



 僕はプロデューサーの権限において決断した。


『山査子さん、先にデザインを進めてください。まずイメージイラストが出来たら送ってください。もし、僕のイメージと違っていたらリテイクをお願いするかもしれませんが……。出来るだけ初期段階でお互いのイメージの摺り寄せができるようにしましょう』

『承知しました』


 僕の送ったメッセージにはすぐに返事が付いたものの、すごくあっさりした返事だったから、ひょっとしたら僕にまだ不審な気持ちを抱いているかもしれないと不安になった。


「カナメ、結構やる気出してたぜ」


 数日後、匠汰くんがそう言っていたので僕はようやくホッとした。


 山査子さんに先行で衣装デザインに取り組んでもらうことにしたのはグループのヴィジュアルイメージを固めることを先決したということもあるが、匠汰くんが「そのヴィジュアルイメージってやつに合わせて曲作ったりチューニングしたりってしてやってもいいぜ?」と言ってくれたことも大きい。


(あのプライドの高い匠汰くんがOKしてくれるなんて……。彼女である山査子さんがヴィジュアルイメージを作ってるからなんだろうなぁ……)


 僕は恋愛感情というものの偉大さに敬意を感じた。


 それに、本格的にアイドル活動をするならば、ライブでのお披露目前にアーティスト写真やネット上の広報材料も用意しなければならず、そのためには出来るだけ早めに衣装が完成している必要があるという計算もあった。


 デビュー日を先延ばしにすれば別にそこまで焦って事を進める必要はないだろう。しかし、うちのお姫様はもう待ちきれない状態であるようなのだ。


「カンカンP~! ルゥ、早くライブしたい~!」


 放課後、クラスメイトの帰った教室で、柊木さんは駄々っ子のように床に転がり、手足をバタつかせていた。


「い、いや……でもまだ曲も覚えてないでしょ? ダンスもまだだし!」


 真っ白な細い脚とその先の見えてはいけない衣類が覗きそうで覗かない絶妙な範囲で、柊木さんの制服のプリーツスカートが波打っている。僕は顔が赤くなっていないか心配しつつ、慌てて白樺さんの方に顔を背ける。


「白樺さん! なんとかしてよ!」

「もう、ルゥちゃん、赤ちゃんみたいにしちゃ駄目よ」

「だってだってぇ、ルゥ、早くみーたんとアイドルしたいんだも~ん!」


 大興奮状態の柊木さんだが、白樺さんが抱き起こすと少しおとなしくなった。


「とりあえず匠汰くんの一曲目がほぼほぼ完成したからさ。確実に前進してるよ!」


 僕の言葉に白樺さんも笑顔で頷く。


「自分たちだけの曲ってすごく嬉しいものなのね。それにとってもいい曲! 蘇鉄くんって意外と可愛らしい歌詞を書くのね。驚いたわ」


 それは僕もびっくりした。匠汰くんは「歌詞も俺に任せろ!」と宣言していたのだが、彼が普段やっている音楽は音も歌詞も結構ハードコアなロックなので、正直、僕は不安に思っていた。


 それなのに、完成した歌詞を読んでみれば、「腕の中の白猫が退屈そうに窓の外を見て」とか「お気に入りのリボンで髪を結ったらこの扉を開けられる気がして」とかいう言葉が並んでいて、僕は思わず二度見してしまった。そういう感性があの三白眼の男のどこにあるのか不思議すぎて詰問したいくらいだったが、そんなことをしたら匠汰くんはヘソを曲げるに決まっているので何とか堪えているところだ。


「ルゥ、あの曲大好き~!」


 さっき泣いたカラスがなんとやら。柊木さんがピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねる。

 彼女はこのままでいい。このままピュアなアイドルでいてほしい。


 僕は改めて二人に向き直る。


「二人はまずはこの曲を覚えてね。その間に僕はある人にダンスの振り付けを頼もうと思ってる。できればその人から基礎レッスンも受けられたらいいなーと思ってるんだけど」

「椿くん、そんな人の当てがあるの?」

「うーん……。実は僕はその人とはしゃべったことはないんだけど、お噂はかねがね……みたいな感じかな。賛否両論あるかもしれないけど、学内でダンスと言ったら『あの人』しかいないと思うんだよね」

「賛否両論? 学内……? ま、まさか、椿くんが頼もうとしてる人って……!」


 驚愕に目を見開く白樺さん。だけど、柊木さんはピンと来ていないのか、不思議そうな顔で首を傾げている。


「とにかく話を聞いてみるだけでも価値があるんじゃないかな。だってダンスのことだったら『あの人』が一番詳しいだろうから」


 それについては白樺さんも異論はないようだった。僕が早速その人と話をしに行こうとすると、白樺さんは不安から、柊木さんは好奇心に目を輝かせながら僕についてくることになった。

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