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ドルヲタ男子高生、アイドル運営はじめました!  作者: フミヅキ
第二章 新人アイドルと愉快な仲間たちと僕
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新人アイドルと愉快な仲間たちと僕②

 軽音楽部が部室として使っている第二音楽室――ではなく、柊木さんと白樺さんと僕はその隣に併設されている第二音楽準備室を訪ねた。第二音楽室の方にいる軽音楽部員たちはおしゃべりに興じているようなのだが、狭い準備室に一人でいる男子生徒はエレキギターを抱えて何かのフレーズを繰り返し奏でていた。スツールに座る彼は、僕たちに気付いて顔を上げる。


「あれ、寒三郎じゃん。何? そっちの二人は誰だよ?」


 サイドの髪を刈り上げた髪を金色に染めた僕のクラスメイトは、三白眼で僕たちを睨んだ。

 柊木さんはニコニコしているが、白樺さんは少し怖がっている。とはいえ、彼の目付きが悪いのは生まれつきで、別に本人としては他者を威嚇するつもりはないと以前僕に話してくれたことがあった。


「この人は僕のクラスメイトの蘇鉄匠汰くん。軽音楽部に入ってるんだ。こちらは二年F組の柊木琉瑠夏さんと白樺美空さん」

「ふーん」


 匠汰くんは二人を一瞥すると、すぐに興味を失ったようにエレキギターに視線を戻す。


「で、俺に何の用だよ?」


 片手で弦を押さえ、片手に握ったピックで弦を弾く匠汰くんに、僕は言う。


「僕はこの柊木琉瑠夏さんをアイドルとしてデビューさせたいと考えてる。匠汰くん、曲を作ってくれないかな?」


 彼はチラリと僕を見てから、再びギターに視線を戻してフレーズの練習を続けた。


「アイドルの曲作れとか笑える! 興味ねえな」

「どうしてもダメ?」

「なんで俺がそんなことしなきゃいけねえわけ? しかも、なにこの頭軽そうな女? こんな女のために曲作るとか、勘弁してほしいんだけど」


 僕たちをシャットアウトするような冷たい声音の匠汰くんに、僕や柊木さんより先に白樺さんが反応した。


「頭軽そうって何? ルゥちゃんは優秀なのよ! 集中力には少し問題があるかもしれないけど、記憶力とか計算力とかはすごいもの! テストだって成績上位なのよ!」

「なにムキになってんの?」


 薄ら笑いを浮かべながらギターを爪弾く匠汰くん。アンプを通していないエレキギターが乾いた音をたてる。


 白樺さんは不満の表情を浮かべながら僕の腕を掴んだ。


「こんな人に曲を頼むつもりなの、椿くん!」

「いや……でも、僕は匠汰くんには作曲の才能あると思ってるから……。白樺さん、去年の文化祭で軽音部のライブ見に行った?」

「え? えーと……?」

「みーたん、ルゥと行ったよぉ! 夕方夕方~!」


 柊木さんの言葉に、白樺さんは記憶を探るように首を傾げる。


「そういえば行った気がするわ」

「じゃあ、覚えてるかな? 軽音楽部の人たち、ほとんどカバーバンドだったけど、一人だけオリジナル曲をやってた人」

「ああ……たしかギターボーカルで……一人だけでステージに立ってた人?」

「それが匠汰くん! ギター以外は彼自身で全部打ち込みの音を用意していったんだよ。もちろん、作詞作曲も匠汰くん」

「へえ、知らなかったわ。でも……なんだか外見はすごく地味な人だったような気がするけど?」


 しげしげと現状の匠汰くんを見つめる白樺さんの視線から、匠汰くんは逃げるように視線を外した。


「あの時はまだ髪染めてなかったんだよ! しかも、俺の曲、全然ウケなかったしな」

「ねえ、みーたん。ルゥはショータくんの音楽楽しかったな~!」


 柊木さんは匠汰くんとまだ普通に話すきっかけが掴めないようで、白樺さんに向かって音楽の感想を言った。だが、それを聞いた匠汰くんの目がキラリと光る。


「マジ? 俺の曲よかった? 校内でそんな感想くれたの今まで寒三郎だけだった」


 僕と匠汰くんが話すようになったのも、あのライブを見て僕が「オリジナル曲かっこよかったよ」と感想を伝えたのがキッカケだった。それからは匠汰くんが時々ライブハウスのイベントに出演する時に見に行くこともある。


「みーたん、みーたん? みーたん!」


 まだまだ話がしづらいらしい柊木さんは、もどかしそうに白樺さんの腕を揺する。


「たしかに曲は素敵だと思ったわ。あれ、全部あなたが作った曲なの? すごいのね」


 白樺さんが柊木さんの言葉を代弁するように言うと、匠汰くんは「ふふん」と得意げに笑ってふんぞり返る。


「当然! 俺はじきにプロになって音楽で有名になる男だからな!」

「でも、一緒にやってくれる人がいないんだよね?」


 僕の言葉に匠汰くんは苦虫を噛み潰したような顔になる。


「うっせぇなあ。俺はプロ志向なの! 俺のレベルについてこれない奴はいらないってだけ! 軽音部の奴ら、アレをカバーしたいとかコレをカバーしたいとか、ぬるすぎんだよ! 俺のライブはサポートの人に来てもらってるから十分だしな!」

「そうだよね。匠汰くんは本格派だもん」

「そう。わかりゃあいいのよ」


 僕は落ち着いてきた匠汰くんの雰囲気を窺いつつ、再びお願い事を切り出してみる。


「そんなプロ志向の匠汰くんの活動の足掛かりの一つとして、僕たちに曲を書いてくれない?」

「やだ。なんでこの俺がアイドルごときのために動かなきゃならないんだよ」


 さすがにこの言葉には僕もムッとした。


「ねえ、匠汰くん、アイドルだからって侮ってもらうのは困るよ。アイドルにはアイドルの表現文化があって、それはとても興味深いものだと僕は思っているし、他に劣るものではないとも思ってる」


 僕は念のためプリントアウトしておいた紙を匠汰くんに渡す。メジャーどころから地下まで各種のアイドルに楽曲提供したバンドやミュージシャンをまとめた資料だ。僕もそれほど音楽に詳しいわけではないから知らないミュージシャンが多いけど、逆に匠汰くんならピンとくるかもしれない。


「結構、色々なバンドさんやミュージシャンがアイドルに楽曲を作ってるんだよ。それで名前を広めた人もいるし」


 匠汰くんは少し興味を持ってくれたようだ。エレキギターをスタンドに戻し、僕が渡した紙を爪先で弾きながらしげしげと見つめている。


「それに楽曲を提供するアーティスト側としても面白いチャレンジだと思うんだ。アイドルというフィルターを通して自分の曲を表現するっていうのも、なかなか得難い経験だと思うんだよね」

「ふーん……。まあ、そんなに言うなら作ってやってもいいぜ」

「本当!? やったぁ!」


 僕は思わずガッツポーズをとった。でも、匠汰くんは三白眼で僕たちを睨むように見つめながら、不敵にニヤリと笑う。


「ただし……俺の曲は高ぇぜ? 俺は自分の能力を安く売るつもりはないからな」

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