グリフォン
ついに福太郎が戦います
「キッーー!!」
グリフォンが甲高い声をあげ福太郎を威嚇してくる
(…確か…グリフォン!鳥じゃなかったのか!……どうする?逃げれるのか?)
福太郎は時速100キロ以上の速度で移動が出来る、普通なら追い付けるものではない
しかし相手はグリフォンだ
もちろん福太郎はグリフォンがどれ程の速度を出せるのか知らない
孫が見ていた映画を一緒に見ており、それに出てきたのを覚えいただけだ。名前が出てきただけ奇跡に近い
しかしグリフォンの半身、鷲が100キロ以上で飛行できる事は知っていた
姿形はかなり違っている為、同じに考えるのは違うかも知れない。しかしここは異世界、それ以上の速度を出せる可能性すらあるのだ。
福太郎は動けずグリフォンを見つめる。
そして不思議な事にグリフォンも動かない
「キーー!!キィーー!!」
巣の前から動かず威嚇の声を上げる、ただそれのみに留まっていた
まるで何かを背に守るように
戦い勝つ事はおろか撤退する事すらも不可能、しかし逃げる事は出来ないし、しない
だからこそグリフォンは自分に出来る最大限の抵抗として威嚇の声を上げているのだ
これ以上近づけば命を懸ける、と
そんな覚悟をさせるほどの圧力を福太郎は放っていた
もちろん福太郎はそれに気付いていない、与えられた力に未だ自覚が無いのだ
しかしそれでも、必死な思いは伝わった
「すまない!君の縄張りに入ったことは謝る!君に害意がある訳ではないんだ!」
下手に動くと更に警戒される、そう考え全く動かず語り懸ける
別に言葉が伝わるとは思っていない、それでも言うべきだと思ったのだ
そしてここでも自覚していない力の一端が表れる
グリフォンが少し警戒を緩めたのだ
羽を広げ今にも飛びかからんばかりであったが、今は羽を納めている
(おや?伝わった?)
ならばと言葉を続ける
「昨日ここに来たばかりで色々ルールを知らないんだ、警戒させてしまってすまない。卵の殻が欲しかったんだ」
卵、と言葉がでた瞬間にグリフォンに再び緊張が走ったが殻と聞きそれも解いた
するとグリフォンは体を反転させ、首のみでこちらを見る
まるで着いてこいと言うように
そしてそれは福太郎にちゃん伝わっている
声無き精霊とも話せるように、言葉無き獣とも話せるように
意思ある者との対話を可能にする力
それが与えられた愛の一つ
それによりグリフォンの警戒を解くことに成功していた
というより警戒を解く以外にグリフォンに選択肢は無かった
でなければ殺されてしまう
福太郎にその気がなくてもそう思わせるだけの力があるのだ
こうしてグリフォン側からすればほぼ強制的に和解を成立させられていた
戦いませんでした