乱れの気配
「あぎゃ――ぱ」
つぶれた赤は・混沌の始まり。
■島の西・港町、ベリー■
■少し荒くれものが多い町■
■しかし活気はとてもあり■
■一年に一度、海上レースが行われる■
「ほー、今日も大量だなー!」
「んだなー、さっさと港に帰還しよー」
一隻の小型船が、エンジン音を響かせながら港に帰還してくる。
甲板に載せた大きな網には、大量の魚が見えた。
船によって弾けた海面が、まるで凱旋の祝福のようにその周囲を彩る。
「帰ったら、一杯どうよ。はー今回は特につかれたよなぁ」
「いいなー。少し気候が荒れてるせいかよぉ、どうにも魚のキレがよくないしなぁ」
意気揚々と海を行く甲板上の漁師二人は、その視界に故郷を収め。
空を行く大量の鳥も、一緒に帰るような軌道を描く。
「いつ見ても、いいもんだー」
「んだんだ~。ははは」
浮かぶ夕陽は赤く――。
■侵食スル■
「ばきゅーん」
炸裂した弾丸が・船体をぶち抜いた。
「うわああああ!?」
「ああああッ!?」
悲鳴が・炎が飛び散り、船は急停止を余儀なくされる。
「なにがッ」
爆発を起こし、燃え上がる炎。
それは非日常へといざなう・異常の合図。
「あああ!? 一体なんだぁ!?」
悲鳴。
「おい! 大丈夫か!?」
パニックになる船上の雰囲気は一変し、陰り始める。
■現在は■
「!?」
その時、操縦室から出ようとした漁師の一人は前方の人影を見た。
それは海の上にぽつんと立っていた。
魔導かなにかか? 異常の原因はあれか? 早く逃げなければ!
次々と思考が連鎖する漁師たちは、自身の精神を蝕む気配を強く感じている。
(海上にッ!? 少女!?)
人影の正体は、露出の多い服を着た金色の瞳を持つ少女。
「どうもー」
■現在は・スローラ村に・乱れが訪れた時と同刻■
「待てないので・さようなら」
少女が持った短銃から、破滅の弾丸が放たれる。
●■▲
■島の東の小さな町・イース■
■小さな町ではあるが治安よく■
■人々は笑い合いながら日々を過ごす■
■特にリンゴがカチ■
「ああああああ!?」
「なんだよ、あれはッ!?」
町に広がる悲鳴は、その勢いを時と共に増していく。
イースを突然襲ったのは、異形な見た目を持つモンスターの大群。
町中で何人かのナイトが応戦しているが、かなりの苦戦を強いられている。次々と精神の限界が訪れ、戦えるものたちが戦線離脱していく。
「モンスター!?」
「見たことのないっ、気味が悪いッ」
町の中心をつらぬく大通りを駆ける多数の町人たちを、異形の乱れが追いかける。
■カチ・カチ・カチ■
■カチ■
「うああ!?」
大通りで転倒した一人の男性。
早く立ち上がろうとするが。
■カチ・カチ■
「おあッ」
急激に襲ってくる吐き気とめまい。
それは、モンスターが近づくほどに強くなっていく。
恐怖で体は動かず。
■カチカチカチカチカチ――■
●■▲
■島の北東【守護の町】・フェルト■
高い壁に囲まれた町である、フェルトの東門。
■この町は、多数のソルジャーが存在する為に守護の町と呼称される■
■単純な数だけならば、どの町よりも多い■
■理由は町に存在する儀式場■
「止まれ!! 貴様ら!!」
「これ以上先には進ませんぞ! 異物め!!」
盾が描かれた巨大な門(高さ十五メートル以上)の前に、【ソルジャー】の部隊が集結していた。
彼らの表情が緊迫感を伝えてくる。
「気を引き締めろ!! 敵はッ」
彼らの前方から近付いてくる異物は・三。
その三者が放つ乱れの気配は、モンスターとは比にならないものであった。
「――爪か指か? 目カ?」
一人は細長い体格の、黒髪眼帯男。
右手に包帯が巻かれ、左手の中指が欠けている。
そのおどろおどろしい気配は、相対するソルジャーたちの意志を削っていく。
「良い門だなー。壊し甲斐があル。ハハは」
隣を歩く屈強な体格の金髪男は、大きな斧を肩に担いで、ずしんと地面を揺らす。
まとう衣服は腰布のみで、強靭な肉体を余さず披露。
ギラギラと光る闘争心は、決して尽きることなく増幅していく。
「……だれも・いない」
三人組の紅一点。
様々な色が混ざった長髪を生やした女性が、長剣を片手に×●■。
「×●■●」
■速■
■斬■
■×●■●×●■●×●■●×●■●×●■●×●■●hshそじゃじゃspっぱぉおlsぱlmじょs;あl■
●■▲
「ハハハ、相手にならないナァ」
「ひ、やめへ」
島を襲う混沌たちは、容赦なく破壊を進めていく。
大量の異物を引き連れ、町を侵攻。
この鉄壁の町ですら例外ではない。
「――わりともろイ。ガッカリ」
真っ二つに切り裂かれた巨大門は倒れ。
消えない屍を残しながら、破壊を行っていく魔の軍勢。
「早く行くぞ。何人かさらウ」
「またバラすのか。【キルシュ】を誘って」
「あいつが好きなのは悲鳴だ。少し趣向が違うガァ。まあそういうコラボもいいナァ」
島の強者たちを屠って、その手をどこに伸ばすのか。
乱れの軍団は、己の狂気を広げるかのように傍若無人・唯我独尊。
平穏を惜しみもなく壊していく。
「そういやあいつも、今回の作戦に参加してるんだったな」
■防壁を沿うように、二人の男は通りを進む■
■その周囲では連続音が発生■
「ふぅ。本当に退屈だ……それで?」
びゅんびゅんと。
鳴る武器。
「わがまま言ったらしい・ゾ。弱いくせに」
彼らは【殺し合い】ながら、会話していた。
「【混迷の太陽】は何人来ている?」
「把握しておけ。五人だ」
「あははは、オレ記憶力ないからなぁ。昨日の夕飯も今日の昼めしも覚えてない」
笑いながら眼帯男は、己の右腕を仲間の男に叩きつけようと動かす。
その勢いは殺気にあふれていて、まるで容赦というものがない。
「遊んだのは覚えているくせに」
対応する金髪男は、持っている斧でそれを防いだ。その動きの機敏さは、野生の獣を想起させる。
彼は豪快に笑う。
仲間がしてきた攻撃にまるで動じず、負けじと殺気を返す。
「ああ、覚えているよ」
防がれた右腕から紫電がほとばしり、周囲に広がっていく。
「最後の顔も・躍動する命も・広げたなにもかモ」
■炸裂した電光は・町の建造物を多数吹き飛ばし・防壁を抉り・大きな傷跡を残した■
「やっぱり楽しいよなァ。【こっち】の方ガ」
■二人の乱れはどんどん破壊を広げていく■
■フェルトはこの日、乱れに飲まれて――■
「おや?」
「――」
現れた乱れに対抗するは、島の頂点に輝く星。
彼は二人の破壊者の前に立ちふさがった。そのたたずまいは堂々としていて、自信の強さが表れている。
するどい眼光は、普段の彼を知る者ならおどろくような気迫。
「こりゃあ、調子に乗ってる場合じゃないな」
その男の名は、スターライト・ファイターの一人・スミス。
服の上からでも分かる屈強な肉体を持ち、洗練された闘志は熟練の戦士の証。
「めっちゃ服はだけてんなー」
「強イ。あの人には及ばないガ」
「調子に乗ってやがるな。異物ども」
星同士の相対。
彼らの間に満ちる空気は、この世界において最強クラスのもの。
どちらも譲らない気迫がぶつかり合い、町の雰囲気を一変させようとしていた。
「気に入らないぜ」
彼らはにらみ合いながら、相手の出方をうかがう。
「踏破◆斬撃◆烈風◆踏破」
最初に動いたのは輝ける星。
星・スミスからつむがれる言葉は、その力を増していく。
彼の就職者としての属性は・【魔導兵】。魔導を使うことに特化した職業。
高レベルの魔導と体術を組み合わせた戦闘を得意とし、魔導兵としては破格の肉弾戦の強さを持っていた。
「【承認】」
「おいおい」
「これってもしかしテ」
乱れたちは、その輝きの意味を知っている。
さすがの彼らも、それに対して注視せざるを得ない。
「◆斬風烈破◆」
■星と星の対決は・頂点の輝き■
■戦闘の余波はどこまでも重々しく響き、やがて決着はついた■
●■▲
■???■
「反応はいくつだ?」
「現在、三です」
「フェルトに向かわせた【星】は」
「現在、交戦中のようです」
■大きなモニターが輝く部屋の中■
「……そうか」
「ですが、きちんと対応できてはいます。【特殊部隊】」
モニターの前に座る女性が、神妙な表情で告げる。
他にもモニター前に座る人影があり。
その全員がなにかに急かされるように、せわしなく動いている。
「異物に相対するために選出した者達だ。そうでなくては困る」
凛とした声の男性は、女性の後ろでモニターをにらむ。
その瞳に宿る炎は宿敵に対するそれだ。
「奴等、どうやってこの島に……」
その目には、脅威に対する敵意がある。
いまだかつてないかもしれない危機を、強く感じ取っているがゆえ。
「早急に……さらなる人員を確保しなければな。多いに越したことはない」
「そうですね。しかし、あの乱れに耐えられる者はそんなに多くないでしょう」
モニターに映された地図上で点滅する赤い光は、今なお脅威の存在を示す。
ぎょろぎょろと、そんな音が聞こえてきそうなほどに、ここにいる者たちはその赤き光を注視していた。
「む、スローラ村の反応が」
島の南で点滅していた光が消えた。
「ここには確か」
「メリー達が行きましたね」
「……」
スローラ村を見つめながら、男性は思案。
「早いな、対処が」
「……ええ」
「まるで、特殊部隊以外が対処したかのような」
「ああ――奴ら、悪辣王の異物たちを」
【島を襲った乱れは・脅威を知らしめた】
【四つの町が滅ばされ】
「強いナー」
【星は堕ちた】
「結構、やばかったゼ」
【混迷の太陽は・その姿を隠す】
【また、◆●―】・。・「^!!?】
●■▲
【後に発見された彼の遺体は、直視に堪えない状態だった】
【発見者であるソルジャーの男性は、精神的ショックで休職中】
【発見現場には、血痕が付着した道具が多数転がっていて――】
●■▲
■乱れの序章・閉■
■そして■
■ナマケモノの時間・開幕■
「……」
仰向けに寝転がりながら、平常運転の怠け者は新聞を開いていた。
場所は彼の部屋・時刻は昼。
なぜか部屋のベッドにはヒナが寝ているが、わりといつものことなので彼は気にしていない。いつの間にか枕がなくなっていても、気にしない。ようになった。
もう彼女の変態性にいちいち反応していたらつかれそう、なので。
しかし、自分が寝たい時に寝床を占領されるのは勘弁してほしい。なんかやたらといい匂いがして、逆に寝れなくなるし。
「ほーう」
クライスは記事を見て一声。
気の抜けた声だが、彼はそれなりにシリアス。
なんせ新聞の内容が。
「島に謎のモンスター」
以前、この村を襲った存在と関りあるのだから。
「なんだろな」
島内のいくつかの町が、モンスターによる侵攻を受けたという内容記事。襲撃者の中には、就職者と思われる存在もいたとか。
四つの町が破壊されたという内容は、この島の歴史においてもかなりの大事件だろう。
町を襲ったという脅威について、彼は少し考える。
自分が捕らえた、あの少女と同種だろうか?と。
「ううーん」
新聞を放り投げ、部屋の中をローリング思考。
「うーん」
ごろごろと転がりながら、己の脳内を高速回転させているのかもしれない。
「うおお」
その速度が最高潮に達し。
「寝よ」
思考停止して、眠りに落ちた。
明日から本気出す。
部屋の中に、二人の寝息が静かに響く。




