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2Eギフテッド 最大の困難だと思っていた入学式

私はマンモス校の入学式は、娘にとって最大の困難になる思っていた。入学式の前の夜、娘は言った。


「明日は人がいっぱいいるからこわい」


正直に言えてるな、と思った。それだけで少し、安心した。


娘は変化に弱い。知らない場所、知らない人、読めない空気、そういうものが重なると、体ごと崩れてしまう子だった。


児発に通い始めた時も、しばらく不安定になった。人混みも苦手で、大型の商業施設でもよく荒れた。


だから入学という、人生で一番大きな変化を前に、親の私はずっと身構えていた。


でも娘は、思ったより大丈夫だった。

入学前の放課後等デイサービスも2日で慣れた。春休みの大型商業施設の雑踏でも、荒れなかった。マンモス校の入学式でも、堂々としていた。


入学式という非日常の緊張感が、娘の脳をちょうどよく働かせたのかもしれない。昨夜眠れない中で書いた前の記事で触れた、ドーパミンの話がここに繋がる。


けれど、式中は大丈夫だとしても、児童だけでなく保護者も詰め込まれたギュウギュウ詰めの通常学級で、娘は必ず荒れるだろうと見積もっていた。


何が変わったのか、正直よくわからない。私が何かしたわけじゃない。強いて言うなら、春休みを、好きに生きさせた。それだけだ。


自己調整の力は、急に上がるものなのだろうか。否、水面下でずっと積み上がっていたものが、ある日突然、外から見えるようになったのだろう。


児発での行き渋りも、施設での癇癪も、もしかしたら全部、折り合いを練習していた時間だったのかもしれない。


春休みの自由は、その積み上がったものが定着する余白になったのかもしれない。詰め込まれていないゆったりとした時間の中で、娘の中で何かが静かに統合されたのだろうか…


もう一つ、思い当たる事がある。

入学式の今日は通常学級で過ごした。大人数、知らない顔、読めない空気。以前の娘なら、それだけで崩れていたかもしれない。


今日は娘に余裕があった。それは、明日からは少人数の支援学級に通う事がわかっていたからだと思う。


「今日だけ耐えれば、明日からは支援学級」


その見通しが、あの場を乗り越える安心になっていたのだと思う。自分が支援学級に行く理由を、娘はしっかりと理解していた。


自己調整と、環境の設計。どちらが先かはわからない。でも娘が育ったのと同時に、娘が自分で育つ構造もそこにあった。その両方が重なって、最大の困難の頂を、娘はヒョイッと越えた。


変化に強くなった、という言い方もできるのかもしれない。でも私の感覚では、少し違う。

変化が平気になったのではなく、変化の中で、自分を保つやり方を見つけただけなのだと思う。


怖さが消えたわけではない。不安がなくなったわけでもない。ただ、それを抱えたままでも、前に進めるようになった。


それは克服と呼ぶにはあまりに静かな変化で、けれども確かに、以前とは違った。


子どもの成長は、外からは見えない事も多い。何も変わっていないように見える時間の中で、見えない所で形を変え続けている。そしてある日、ふとした場面で、我が子が一回り大きくなっているのに気が付くのだ。


入学式は、その一つだったのかもしれない。


けれど、荒れなかったからと言って、大丈夫だったわけではない。


通学の途中では、通っていた幼稚園の前で足が止まった。ホームルームの間、先生のお話を聞かず、机の上の配布物をずっと触っていた。


幼稚園が一緒だったお友達とクラスが離れた事が悲しくて、淋しげな顔もした。緊張や不安で、下校まで険しかった娘の顔。


でも帰り際、その子にやっと会えた。笑顔で記念写真を撮り、手を繋ぎ、別れ道まで一緒に帰った。娘の表情が、やっと柔らかくなった。


帰宅後、娘はもう明日を楽しみにしていた。私を急かして配布物に名前を書かせ、自分で持ち物を準備した。


完璧な一日ではなかった。けれど娘は、その日を自分の足で歩ききった。


頑張れたと言ってしまえば、それまでなのかもしれない。でも本当は、頑張ったというより、自分なりのやり方で、世界と折り合いをつけただけなのだと思う。


それは特別なことではないのかもしれない。けれど娘にとっては、確かに越えてきた一歩だった。


私はたぶん、その一歩を忘れない。


入学式を終えたこの夜、娘はいつも通り、大好きなYouTubeを見てゲラゲラ笑っている。最大の困難だと思っていたのに、すんなり通過していた。その笑い声を聞きながら、私は娘の隣で、少し泣きそうになっている。



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