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「……ふぅ」


大きく深呼吸し、気持ちを落ち着けるように体内に新しい空気を吸いこんだ。


「私に考えがある。時間がないわ、私の指示に従いなさいっ!」


ウェンディはここにきて、今までの人生で最も声を張り上げた。




***

  



「マルグ、あなたあの魔物からスピードで逃げきれる自信は?」


そう問いかけられてマルグは問題ないとすぐに返事をする。


「いい、一度しか言わないわ。マルグと私であの魔物の気を引くわ。その間にホセ達はすぐにあの馬車をロランダの街に誘導しなさい。そして、ハンス達は馬車とホセたちが待ちに入ったらすぐにはね橋をあげ門と町中の水路をとじるの。いい?」


そう言って、ウェンディは無我夢中で次々と指示を出す。


「そして、ナム。これが一番重要よ。あなたたちは、水門にすぐに向かって。合図をするからそしたらすぐに水門を開きなさい」



 

説明をしている間にも馬車は以前魔物に追われ、ロランダの街へと迫っていた。





***



「さあ、行くぜウェンディ」


その身が離れないように、マルグとウェンディの身体を紐で結ぶ。


「絶対に振り落とさないでね。頼むわよ」



そう言葉を交わし、ウェンディを背負ったマルグは、魔物から逃げる馬車の反対方向から魔物へと近づく。




 

『ブオンッ』




ある程度の距離まで近づくと、ウェンディの放った風魔法の空気の塊が魔物へと命中した。

魔物は反射的にその衝撃の方向へと目を向ける。


やはり、ウェンディの放つ魔法ではあの魔物に傷1つすら与えられなかった。

その結果に頭がマイナスの思考になるのを振り切るようにウェンディは声を張り上げた。


「さあ、こっちに来なさいっ」


もう一発同じ空気の塊が命中し、魔物は馬車を追う足を一度とめ、体制をウェンディたちの方へと向き直った。


 

「さあ、追いかけっこといこうじゃないか!」


マルグはそう叫び、ロランダの街とは反対方向へと走り出した。






***



「お前ら、こっちだっ!!!!」


魔物の追尾から逃れた馬車の前に、ホセたちが割り込み誘導する。


「はやくっ!!」


街門の上から、ハンスが大声で呼びかける。

馬車がとホセ達が街に入ったことを確認し、ロランダの街の住人たちは力いっぱい桟橋を引き上げた。

 


戦禍でも倒壊することはなかった城壁が今一度ロランダの住人たちを守るために門が閉じられた。







***




「合図はまだか?」


既に水門へと辿りついたナムは、合図を今か今かと待ち続ける。

合図を待つことしかできない自分たちが歯がゆく拳を強く握りしめる。


高台にある水門から見えるのは、門が閉じられた城塞都市のロランダと、巨大な魔物をある一定のポイントまでおびき寄せるため、未だ魔物を引き付けるマルグとウェンディだった。


















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