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V.C.T リアライザー   作者: しょきぬと
14/21

宣戦布告

 屋敷のある頂上から一度最下層のシェルターまで約八百メートルを三分で到達し、その後地下の専用トンネルをノクトゲートまで二分で移動する。


 ノクトゲートのドックの一角にランドシップ整備を行う為の格納庫、その最奥に、既に型遅れとなった過去のパーツを保存した倉庫がある。

 その倉庫の内部が地下へと下降し、入れ替わる様にエレベーターが上昇。

 これがワグサム家の直通エレベーター、この存在を知る者はワグサムの家の者、そして、この直通エレベーターの点検整備を請け負うモスト家の者だけである。


「なかなか快適な乗り心地だったわね」


「これが君とのデートだったなら良かったのにな」


「貴方って本当にオンとオフの差がすごいわね」


「力を抜く時はちゃんと抜く、これが出来るか出来ないかが重責を負う資質の有無だと私は思うよ」


「貴方の場合は確かにそれが大正解なんでしょうね」


 アシマとニムスは格納庫の裏口から外に出る。


「あと五分か、結局何が起こってるのかはわからんが…」


「カイムには声をかけたのかしら…」


「カイムは入隊してから固くなり過ぎたからな…理由無く逃走を呼び掛けても応じるとは思えんが…」


「完全に家との関わりも希薄になってしまいましたから」


「カイムは私に負けぬ様にと考えている様にも見えるからな…カイムは経験さえ積めば必ず私よりも優れた指導者になる、焦る必要など無いのだが…」


 長男カイムは入隊の際にワグサム家との連絡を制限して以降、その家名に恥じない様奮起していた、偉大過ぎる父親、必然周囲の目は期待に満ちる。

 その期待の大きさ故、必要以上に家と自分を切り離して考えるようになったのかもしれない。


「む…来たようだ」


 アシマの目に現在使われているのランドシップなら一機のデバニウムオルタネーターを二機搭載し、推進ブレードを通常の二枚から六枚に増設した、新型ランドシップが映る。


「全く、親バカだが…デバニウム工学史上最高の頭脳を持つ言われるのも無理はないな」


 この世界では飛行機よりも先に水陸両用のランドシップが普及、高い山々も、デバニア鉱産出の為に削岩機の進化が応用され、トンネル開通が容易に行われる点、そして、何より石油という資源がこの世界には存在しなかった故にか、ガソリンエンジンが存在せず、プロペラ推進の飛行船のような物しか存在し無かった

 そんな中ベリアは、ランドシップの滞空しながら進む特性を改良し、現在ではまだデバニウム濃度の高い地域限定ではあるが、それでも縦横無尽に空を駆けるランドシップの開発に成功、デバンドのみならず、世界中がその功績を称えた。


「父上母上!ご無事で何よりです!こちらからどうぞ!」


 中からサモアが姿を現し、二人を乗船させる。

 まだ試作段階とはいえ、まずは防衛軍用に開発されているこの機体の内部は、快適なシートなどが用意されているわけでは無いが、十二人程が乗り込めるくらいの広さがあった。


「サモア、まず聞こう、余程の事態なのであろう」


「はい、私にも何が何やらさっぱりですが、私の見た事全て偽りなく申し上げます」


 サモアはアシマに、突然やってきた姿形、声、立ち居振る舞いの何もかもが違う男を、何故か皆が当然の様にアシマだと認識し、従い出した事を説明する。


「確かに何が何やらさっぱりだが、その男が総司令部直通エレベーターを探していたと言う事か」


「はい…当然見つからず、通常のエレベーターで総司令部を目指したようですが、父上に…いや、このデバンドに害をなす者である事は明白でしょう」


「サモア、カイムはやはり…?」


「母上…申し訳ございません、私はおろか、ベリア兄さんですらコンタクト取れませんでした…」


 サモアはそう言って頭を下げる、ニムスは「全くあの子は」と言って悲しそうな表情を浮かべる。


「ただ、私の見解ではありますが、おそらくあの男は自らを父上…総司令だと認識している者に危害を加える様子はありませんでした、ですからカイム兄さんも…」


「なるほど、カイムは私の事を父親というよりも総司令として見ている、か」


「恐らくですが…」


「ふむ…その男の目的は間違いなく防衛軍そのものだな、軍を使って何をするつもりか知らんが、碌な事では無いだろう…」


「父上、碌な事どころが、とんでもない事が起きそうですよ」


 操縦席のベリアがアシマを呼び、総司令部から発信されている放送を指差す

 ベリアの指差したモニターには、アシマには見慣れた総司令室、そこにはサモアの言う通り、見た事もない軍服を着た男ナウラ、そして、その周りに従う様に将校が整列していた。


『独立都市デバンドの諸君、ご機嫌いかがだろうか、さて、突然ではあるが、これより我々デバンド防衛軍は、デバンドに対して、宣戦布告を行う!』


「誰だ…この男は…デバンド防衛軍がデバンドに宣戦布告…?」


 流石にアシマも驚愕を顔に貼り付け、冷や汗を流す。


『目的は…今の所ない、せいぜい恐怖してくれ』


 その台詞を最後に放送は終わり、船内に動揺が走った頃、モストの街の上層にあるベリアのラボと直結して造られた、新型ランドシップ用の格納庫に到着した。


「とりあえず、私のラボに行こう、あそこは並大抵の攻撃では揺るがないし、試作兵器もある」


「そうだな…しかし、あの放送を見た他の者達は私を見るとどうなるんだ…?」


 一先ずこの場にいる面々は、自らをアシマだと認識している、そして放送に映った男、ナウラに関しては誰も見た事が無いと言う、いたって当たり前の認識だ。


「将校達まで付き従っていた…理解不能だ」


「研究員に見つかるとどういう反応が返ってくるかわからない、父上はとりあえず顔を出来るだけ伏せたておきましょう」


 そういってサモアは自らの軍帽をアシマに渡し、一向は船を降りる。


「あ!ベリア様!さ、さっきの放送は一体…!」


「エーシウム君か、すまない、私にも何が起きているのかわからないんだ、とにかくシェルターに避難したまえ


 格納庫で作業をしていた、ベリアの部下も、突然の宣戦布告放送を受け動揺している。


「わ、わかりました、ところでベリア様、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「!!」


 エーシウムのその言葉にワグサム家の一向に衝撃が走る。


「すまない!エーシウム君!すぐ私のラボに!」


「え?え??べ、ベリア様!?」


 駆け出すベリアに手を取られてエーシウムはおろおろおしながらもついて行く


「あ、あのベリア様…?」


 ラボに駆け込んだ一向、一人紛れたエーシウムはまたしても何があったのか戸惑っている。


「エーシウムさん、でいいのかな?突然申し訳ない」


 アシマは深く被っていた軍帽を取って頭を下げる。


「へ…?ア…アシマ様ァァァァァ!!?」


 エーシウムはひっくり返らんばかりにのけぞった。

 

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