第一章 出会い ―森が結んだ、はじまりの糸―第二話 発見
第2話です!
木の根元に、誰かが倒れている。
「――っ!」
駆け寄ると、それは見知らぬ青年だった。旅装束は土埃にまみれ、頬はこけ、唇は乾いてひび割れている。
かすかに上下する胸だけが、彼がまだ息をしていることを教えてくれた。
着ているものの端々には、長い距離を旅してきたことを物語る擦り切れた跡がある。
腰に下げた剣も、手入れをする余裕すらなかったのか、鞘には土がこびりついていた。
「しっかりして……! ねえ、聞こえる?」
呼びかけても反応はない。
フルーテは迷わず腰の水筒を取り出したが、青年の意識は完全に落ちていて、
自力で飲める状態ではなかった。
手首に触れると、脈は弱々しく、けれど確かに続いている。
――このままでは、間に合わない。
森の奥、こんな場所に旅人が迷い込むこと自体、滅多にない。
頭の片隅でそう思いながらも、今はそれを考えている余裕はなかった。
フルーテの手は迷いなく動いていた。頭の中では既に、次に何をすべきかを
組み立てている。長年この森で怪我人や弱った生き物の手当てをしてきた経験が、今、彼女の体を動かし
ていた。
一瞬の迷いを振り切るように、フルーテは水筒の水を自分の口に含むと、青年の唇にそっと自分の唇を重
ねた。
冷たい水がゆっくりと彼の喉へ流れていくのを確かめながら、何度もそれを繰り返す。
喉が微かに動き、水を飲み込んでいるのがわかると、フルーテは小さく安堵の息をついた。
持っていた傷薬も同じようにして飲ませ、あとはただ祈るように彼の顔を見つめ続けた。
日差しが少しずつ角度を変え、木漏れ日が青年の顔の上を静かに這っていく。
フルーテは自分の上着を脱いで丸め、彼の頭の下に敷いた。
それからも根気強く、少しずつ水を含ませては彼の様子を窺う、というのを繰り返した。
どれくらい経った頃だろうか。長いようで短いような、そのわずかな時間がひどく長く感じられた。青年
のまぶたが、かすかに震えた。
「……っ、ここ、は……」
かすれた声だった。ゆっくりと開かれた目が、覗き込んでいたフルーテの顔をとらえる。
焦点の定まらない瞳が、少しずつ彼女の姿を映していくのがわかった。
「よかった……目、覚めたのね」
フルーテは短くそう言うと、詰めていた息を吐き出した。安堵のあまり、声が少し震えていた。
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