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縁の環  作者: 由耀
第2章 『花詠み』
12/18

EP12

 あの手紙から三か月が経った。

 わたくしの婚約者は世木 遼矢という、商家の次男に決まった。

 最初お父様は遼矢を毛嫌いしていたものの、次第に斬新なアイディアで利益を出す遼矢を認め、遼矢を自慢の婚約者と公言するようになった。


 そんな遼矢は逢瀬の度にわたくしに木春菊マーガレットを贈る。

 この花はわたくしに似ているからと。


 ――マーガレット。


 白くて小さく、一重咲きの清楚な花。

 希臘ギリシャ語で「真珠」を意味するマルガリーテスにちなみ、こう呼ぶ。別名は木春菊という。


 それまでのわたくしは深紅の薔薇か牡丹が好きだった。

 木春菊のような純白と黄色の花は、わたくしには似合わないと思っていた。

 ある時、執事の亨が教えてくれた。

 仏蘭西フランスの乙女は、この花を使った恋占いをするそうだ。


 わたくしは遼矢を思いながら花を手に取った。

 一枚、その花びらを散らしていく。


「愛している」


 また一枚。


「少し愛している」

「とても愛している」

「全然愛していない」


 この順番で、白い花びらを一枚ずつ散らす。

 胸を躍らせ、また散らして、わたくしの手は止まる。


「全然愛していない」


 花びらはここで止まり、わたくしはため息を漏らす。


「そんなはずはありませんわ!」


 結果に納得がいかず、わたくしはまた占いを始める。

 しかしそれでも「全然愛していない」で花びらが終わる。


 それは単なる偶然。

 だって遼矢はわたくしに木春菊を贈ったのだから。


 遼矢が以前廓通いをしていたことは、亨から聞いて知っている。

 その廓にお気に入りの遊女がいたことも、その遊女の身請けが別の男に決まったことも。


『遼矢様にとって、お嬢様こそが真実の愛だと気づかれたのでしょう』


 と、亨はわたくしの恋を応援してくれる。

 しかし真綿に包まれて育った、世間知らずなわたくしは。

 婚約者の美しい仮面に心躍らせ、ただ恋に恋をしただけだった。


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