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気づけば身体が変わっている件:どうやら並行世界では一人の女性として生きているようです  作者: Kuzagi2XXXX
第2章 ウェルティアンナ王国 グリーティア学校
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34 「グリーティア学校探索」

***


ウェルティアンナ王国の宿舎から学校まで少し距離があった。そこに馬車が止まっていた。乗り込んだのはフィッシャン、ビウ、サイビアの三人。行き先はグリーティア学校。ビウのリクエストに応えての出発だった。


フィッシャンはビウのリクエストに少し戸惑いながらも断ろうとはしなかった。王国に戻ったばかりで、勝手に新入生を受け入れると宣言してしまった手前、その影響はすでに考えていた。でもあの子の特別な力は無視できないと思っていた。


「ビウ」という名前を最初に聞いたのは、第四位の権力者テンツ・グリフェラーの護衛の二人からだった。その後エルフの村でサイビアに詳しく聞いた。ボロンフィアの洞窟での出来事が、フィッシャンの中の疑問を固めた。エルフの村から転移場所までの旅の間、ゆっくり話す時間がなかった。今がその時だと思って、フィッシャンは口を開いた。


「聞いてもいいか」


「え!?私にですか、フィッシャン。何か聞きたいことがあるの」


「うん。せっかくだから今話しておこうと思って」


「フィッシャン先輩は魔法の天才だから、ビウ超越者様に聞きたいことがたくさんあるんだと思います。先輩が興味を持つことがあるんでしょうね」


「サイビアの言う通り。ところで天才という呼び方は自分にはあまり似合わない気がするんだけどな」


「フィッシャンの質問は受けるよ。でも私も一つ聞きたいことがあるんだけど。あのエルフの村のお風呂場で、私がスモーク・ヴォーティアを使えなかったのはなんで?」


「魔法が使えなかった、ということだね。相手の魔力を自分の魔力で打ち消してゼロにする、ヴォクセルという技だよ」


「ヴォクセル?」


「詳しく説明するよ。でも先に君のことを聞かせてほしい。魔法の力、魔法の技、ブレスレット——君はウェルティアンナ一族から魔法を学んだことがある? しかも君は全属性の基礎魔法を持っているようだけど」


フィッシャンが前傾みになって両手を組んだ。好奇心丸出しの様子にビウは少し体を震わせながら答えた。


「え!?私? フィッシャンが私に疑問を持ってるって、あの……どこから話せばいいかな」


「先月から自分で魔法の練習をしてきたんだけど、正式に魔法を教わったことはないの。魔法の仕組みをイメージして、形と範囲を決めて魔力を流し込んで形にする感じで覚えてきた。基礎魔法はそれなりに自信があったんだけど、すごい人に会ってから自分の基礎がまだ甘いってわかった。ブレスレットは……秘密」


「独学で、しかも基礎も固まっていない……」


フィッシャンが沈黙してからビウへと視線を向けた。その目つきが怖くてビウは少し震えた。怒っているのか、感心しているのか、読めない。ただ、両手を組んで指を動かすフィッシャンの様子から——


ビウが慌てて「フィッシャン殿下、申し訳ありませんでした」と言いかけた瞬間、フィッシャンが声を上げて笑い出した。


「あははは! 君には笑わせてもらえるな。最高だ」


そのとき確信した。グリーディット・ティアンナの笑い声が血筋を通じてフィッシャンに受け継がれているのだと。大きくて豪快なその笑い声は、グリーディットさんにそっくりだ。


笑いが収まったと思ったら、フィッシャンが手をビウの太ももに置いて、魅力的な笑顔をまっすぐ向けてきた。ビウはびっくりして顔を赤くして、視線を逸らした。


「笑わせてくれたご褒美だよ」


フィッシャンが太ももを撫でながら耳元に顔を寄せてきた。


「止めてください。止めてください。ビウ超越者様にはすでに心に決めた方がいます。フィッシャン先輩はこんな風にしてはいけません」


サイビアが体格と身長を活かしてフィッシャンをするりと押し退けた。


からかいは終わった。


「君に失礼なことをしてごめん、ビウ。さあ、リクエストに応える時間だよ」


馬車が止まった。目の前にあるのは——ウェルティアンナ王国のグリーティア学校だ。


(結局、欲しかった答えは出なかったですね、先輩)


サイビアは心の中でつぶやいてから、三人で校内へと入っていった。



グリーティア学校の門をくぐった瞬間、目に飛び込んでくるものに言葉を失った。


正面に大きな柱が立っていた。創立者グリーディット・ティアンナを称える石柱だ。これほど大きな柱が学校にあるとは思っていなかった。しかも石柱だけでなく、周囲一帯が贅沢な石畳に覆われていて、見たことのない並行世界の植物が彩りを添えていた。


この学校は種族で入学者を選ばない。グリーティア学校の生徒は人間だけではない。学校の最初の記録帳から、人間、亜人、エルフ、獣族、そして魔族まで受け入れてきた歴史がある。


ここではすべての者がグリーティアの生徒だ。目標は互いに磨き合い、前進し、平和を守ること。かつての五族戦争の悲劇を繰り返さないために。ケティフの元を去って、人間を傷つけることなく穏やかに暮らす道を選んだ魔族の一部もいた。そうした者たちの忍耐と誠実さを見てきたグリーディットが定めたルールがある——どんな特別な血筋であっても、貴族であっても、知識の神と謳われる者であっても、転生者であっても守護者の器であっても、ここにいる間はすべてグリーティアの生徒だということだ。


学校の第一区画を歩いていくと、多くの生徒がフィッシャンの方を向いていた。軽い挨拶が交わされてから扉の中へと入った。扉の向こうには複数の道が分岐していた。学科ごとに整然と分かれている。魔法、剣術、魔法道具、弓術、ポーション。各部屋の前には学科名が明確に記されたプレートがあった。一番広い部屋は弓術の部屋で、百人以上を収容できそうなほど広かった。


廊下を歩いていると、魔法学科の部屋から奇妙な音がして三人は立ち止まった。


部屋の中央に体格のいい青年が剣を持って立っていた。剣を体の正面で構えてから深く息を吸い、吐いた。


「ふぅ……」


その息遣いに合わせて、手に持った鉄の剣が光を帯び始めた。腕が震えるほどの力が込められていた。体の周りで風が渦を巻き始め、その風が剣に引き寄せられていく。


「守護の風よ、牙の刃を鍛えよ——ボレアス・ファング」


剣が風に包まれた。内側に薄く光が宿る。


「やっとだ!はぁ……はぁ……」


「何をそんなに息を切らしてるんだ。剣への魔力付与程度でそのざまか。弱すぎるだろ」


後ろに立っていた男が魔力で押して、青年を倒した。


「そんなつまらない技でも力を使い果たすなら、魔法使いになりたいなんて夢は捨てろ」


「トリクス!魔法を馬鹿にするな!」


「正直に言っただけだ。ダス、お前は頭に血が上りすぎて冷静じゃない」


青年は剣をぎゅっと握って左足を踏み出し、目の前の男へと飛びかかった。


「力が——使えないだと?」


瞬間、二人の腹に同時に拳が入った。それぞれビウとフィッシャンが飛び込んで抱き止めた。ただ、ビウに抱き止められた男は手を払って逃げようとした。


「グリーティアの者同士で争うのはよくないですよ」


サイビアが片方の青年を一撃で眠らせ、二人を保健室へと運んだ。


魔法学科の部屋を出てすぐの同じ廊下に、ベッドが並んだ大きな部屋があった。二人がそれぞれのベッドに寝かされた。しばらくするとヒーリングで二人が目覚めた。


「君たちにこんな姿を見せてしまって本当に申し訳ない」


フィッシャンが無表情のまま首を振った。


「大したことじゃないよ。感情をうまく制御できない人は誰でもいる」


右のベッドから声がした。トリクスだ。体を起こしながら言った。


「他人を挑発して馬鹿にするべきじゃない。グリーティアの者でしょう」


ビウが不満そうにトリクスへと向かって言った。その言葉がトリクスの中の何かのスイッチを押したようだった。


「ほう、ただの女のくせに何を言ってる」


トリクスが手を振り上げた。ビウを叩こうとしたその手を、フィッシャンが掴んだ。


「グリーティアの者を傷つけたらどれだけの罰を受けるか知っているな。お前はもうその罰を犯した。これ以上やれば、お前の名前はグリーティアから消える」


「いてぇな!」


トリクスが腕を振り解こうともがいてから部屋を走り出ていった。


「本当に申し訳ない。自分のせいで……フィッシャン殿下!?」


「目が覚めたか。体の具合は」


「どこか痛いところはありますか」


「フィッシャン殿下!申し訳ありません!処分でも晒し者にでも何でもしてください。最初に斬りかかろうとしたのは私です。ダスメル・オヴィ!本当に申し訳ありませんでした!」


「罪を雪げ、ということだよ」


ダスメルが顔を青くしながら深く頭を下げた。正直すぎるほどに真剣な様子だった。これはフィッシャンの言葉がけだ。もしサイビアが止めていなければお前はここを最後に見ることになっていたかもしれない、だから戻れ、という言葉を残してフィッシャンが部屋を出た。三人は魔法学科のラウンジへと向かった。



***


-ビウ視点-


少し驚いたけど、考えながら歩いていた通りの展開だった。教室の中で生徒が二人揉めていた。


魔法学科の部屋で、サイビアが狼の拳で揉め事を止めた。あの力強さは羨ましいと思ってしまった。でも今の自分の体力と体格では無理だ。


揉めていた二人の名前はダスメルとトリクスだとわかった。


トリクスが自分を叩こうとした。挑発したわけでも口論したわけでもなく、ただ注意しただけなのに手を上げようとするとは。フィッシャンがトリクスの手を止めてくれた。


自分はまだグリーティアの正式な生徒ではない。なのに初日から一人敵を作ってしまった。どうしたらいいだろう。謝りに行くべきか。何か持っていくか。穏やかに話しかけるか。ヒーリングで何か治してあげるか。あるいはあの件を埋め合わせるか。


まずい。この世界の人と仲よくしたいのに、怒らせてしまった。後から悪影響が出ないか心配だ。それでもフィッシャンが言っていた。グリーティアの内部で揉め事を起こした者は、規模を問わず同じ処分を受けると。それでも問題を繰り返す常習者がいると言ってため息をついた。そういう連中とはなるべく関わらないのが自分を守るためには一番だと。


グリーティアの最大の問題児が誰かは、生徒全員が知っているらしい。


トリクス・ゴテル・スィア——南の土地の貴族出身。本人はいくつもの問題を起こしながら、ここで生き続けていた。魔力で人を脅し、ルールを恐れることなく破り、不良グループを率い、女子生徒を傷つけることまでした。しかも学校の外でも同じように振る舞っていた。最も重い事件は、自分が手を付けた女子生徒に対して「お前は軽い女だ、俺には関係ない、処分してこい」と怒鳴って叩いたことだった。


そのことをダスメルという生徒が教えてくれた。その女子生徒は今は安全で、子どもも元気だという。


重い話はひとまず置いておこう。今やるべきことがある。レオフィア・ダシャー。あの人が言っていた。魔法学科にいると。


ところで魔法学科と学科の違いが何なのかも、フィッシャンからまだ詳しく聞いていない。もしかして学科ごとに学びの場が分かれているのかもしれない。魔法学科なら魔法を中心に学び、剣術や弓術は補助的に学ぶ形で。学科ごとに専用の教室があって、特定の科目だけ他の学科の教室を使うこともある、そんな仕組みかな。まるでライトノベルに出てくる学校みたいだ。そんなことを考えながら、フィッシャンが魔法学科のラウンジの扉を開けた。



***


扉を開けた瞬間、大きな書棚と魔法石の数々が目を迎えた。ここが書庫の全部ではないだろうと思いつつ、本以外のものに目を向けた。


召喚陣、杖、呪符のような紙、ポーション、魔法のアイテム、魔法石が付いた鎧。さすがは魔法学科のラウンジだ。魔法使いに役立つものが揃っている。つい興奮してしまった。


「それらは学校が長年管理してきた品だ。むやみに触るなよ」


長年管理してきた品と聞いて、もし傷つけたら何が起きるか想像してしまい、ぞっとした。


「えっと……サイビア、ビウ、私のアイテムが光った。少し席を外す」


「わかりましたよ先輩。ビウ超越者様、他にも見てみたい場所があれば案内しますよ」


これでサイビアと二人になった。どこから始めればいいか。


歩きながら考えた。試してみたいものがたくさんある。書棚に並んだ本のタイトル。読める言葉をたどると、「世界の大地の国々」「転生の器と守護者」「言葉の始まり」と読めた。それ以外は言葉が読み切れなかった。


そういえばサイビアはどこに——振り返ると、迷路のような書棚しかない。こんなに歩いてきていたのか。どうしよう。


まず右へ。続いて左へ。でも同じ本のタイトルが目の前に戻ってきた。迷子だ。


もう一度歩く。書棚に手をつきながら進んだ。分岐か行き止まりかを探して。左へ二回回ってから右と左を変えると、少し遠くに来た感覚がした。小さな希望が芽生えた。


でもその希望はすぐに消えた。前方が行き止まりだったから。レンガの壁。そしてまた別のレンガの壁。ため息をついて壁に背中をもたれかけた。


「えっ!?」


その壁がいきなり向きを変えた。前につんのめって倒れたまま、階段を転げ落ちた。まるで木から落ちた椰子の実みたいに何度もぐるぐると。


痛い!腕の袖と裾を折り返してみると、打撲だらけだ。ヒーリングで治した。


このまま階段を下りていこうと決めた。もしかしたら出口があるかもしれない。それに壁の向こうの元の位置は暗かった。隠し通路かもしれない。ブレスレットに頼ることにした。ブレスレットが光り、進みやすくなった。螺旋状に降りていく道を歩きながら、少しの希望を持った。道がどんどん深くなっていく。息が少し苦しくなってきた。でも諦めない。必ず出口を見つける。


「……」


下の方から声が聞こえた。小さいけれど確かに聞こえた。希望が再び燃え上がった。音を辿るように慎重に足を進めていった。


「楽しそうね……私もあんな風にできたらいいのに」


「えっ!?落ちた!落ちた!」


「誰なの!?」


何度か転がって床に着地した。硬い。目を開けて声のした方を見ると——


あれ、天井が見えると思ったのに違った。目の前にあったのは真っ白な空間ではなく、自分のものとは違う紫の小さな光と、赤い蝶結びが上の方に見えた瞬間、その赤い蝶結びが消えた。残ったのはレンガの天井とろうそくの光だけだった。

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