5 改めて、激闘
渾身の力を込めてサカナシの喉に思いっきり体当たりをした。体当たりというか頭突きというか。一直線に飛んできて、まるで杭を打つかのような突き攻撃だった。というか、そのまま刺さった。
「ぎっ!?」
サカナシの喉には小さな龍が体の半分ほど突き刺さるという異様な光景になっていた。サカナシは痛みのあまり暴れまわる。
ラオの頭突きは実はかなり強い。昔天上界でチョウカと追いかけっこで遊んでいて、一番硬い山と言われる金山に突き刺さり抜けなくなった。暴れまわってようやく頭が抜けた頃には山の形がすっかり変わっていたくらいだ。
ただし、ラオも激痛なのであまりやらないようにはしていた。サカナシの鱗は硬い、突破できるわけないと思っていた。実際やっていたら頭が砕けていただろう。本当にたまたま、鱗と鱗の重なり合う僅かな隙間に頭がはまったのだ。体が大きすぎるが故に鱗の大きさも一枚一枚は特大だ。龍の中では体が小さいラオにとって功を奏した。
サカナシの喉にひっかかっているラオは叫ぶ。
「チョウカ! 生きてるかー!」
その声はサカナシの骨を伝いサカナシにも嫌でも聞こえてくる。
「やかましいわあ!」
そしてサカナシの声もまた、喉にいるラオには特大に響いてくるのだった。
「うるっせえ響くわ! 黙ってろ!」
「……が」
奥の方、おそらくサカナシの胃の方から声が聞こえた。よかったチョウカだ、と思った瞬間。
「死ねえええええええ!」
特大の叫び声とともに凄まじい音がした。どうやら胃の中で雷を使ったらしい。加勢は間に合わない、と思っていると食道を伝ってラオにも雷が飛んでくる。
「俺にも当たるってば!」
慌ててラオも雷を使い向かってきた雷を相殺する。するとチョウカはラオの雷の存在に気づいたらしい、雷を二つ操って胃の中へと雷が戻って行く。
「クソがあああ!」
叫びとともにべぎべぎ! と嫌な音が響く。それと同時に。
「ぎゃあああああああ!」
サカナシの悲鳴が響いた。先程よりも酷く暴れてのたうち回っているようだ。
(あ、これ胃が破裂したくさい)
胃ではなく腹の肉をブチやぶって大穴を開けていることをラオはまだ知らない。
すぐに穴が元通りに塞がって来たのを見てチョウカは急いで外に這い出す。サカナシの体液まみれで気持ち悪い、大きく舌打ちをした。暴れまわるサカナシに掴まり続けるのは容易ではない、どうするかと思っていると目に入ったのは。
「いや何でだよ!?」
サカナシの喉元に突き刺さったラオだった。まるで棘が刺さっているようにも見えてしまう。ビチビチと暴れているので、どうやら突き刺さったまま抜けないらしい。
(さっき瞬時に傷が回復していった。ってことは、まわりの肉が締め付けて抜けないのか!)
このままではラオの体が真っ二つにちぎれる。その可能性を思いついた瞬間全身の血がさっと下がる気分だった。サカナシの体を器用に走り抜けてラオの尻尾を掴む。
「千切れんなよラオ!」
そう叫ぶと渾身の力を込めてラオを引っ張った。しかし意外にもびくともしない。肉の向こう側から「いてててて!」と聞こえるような聞こえないような。
「くそったれええ!」
背負い投げをするように肩にラオの体を乗せ、今持っている力の全てを出し切る形で思いっきりラオを引っ張った。
その力にサカナシが大きく揺れる。筋肉で覆われている体のほうはともかく、喉元という自分ではどうしようもない部分に引っ張る力が加わったのだ。引っ張られるままに頭がのけぞる。
(引っ張ってるだけじゃダメか!)
瞬時にそう判断し、ラオを離すと一気にサカナシの口元まで移動した。
「おい、虫歯があるぜ!」
そう叫ぶと同時にサカナシの歯を一本、思いっきり蹴飛ばしてへし折る。もはや歯が折れた位では悲鳴もあげないが、怒りに触れたのは確かだ。そんなことお構いなしに口の中に入ると再び食道を滑り落ちた。
「よお」
「はあ!?」
突き刺さったラオに挨拶をするとラオは目を丸くする。それもそうだ、こんなところにきたのはもちろんとんでもないものを抱えているからだ。その先に落ちていかないようラオの頭に掴まりにっこりと笑う。
「ちぃっと待ってな」
「あ、嫌な予感!」
気合いと共にラオの頭の真横、サカナシの肉に先ほど折ったサカナシの歯を突き刺した。そして無理やり隙間を作ると。
「歯ぁ食いしばっとけよ石頭!」
「無茶苦茶!」
ラオの頭を掴んだまま逆立ちをする。そして、弧を描くように思いっきり蹴り飛ばした。
バゴン!
蹴りとともにスポーンとラオが外に放り出される。そして穴が閉じる前にチョウカも外に出た。ラオに掴まり改めて周囲を見渡す。
「いい感じに平らになったな」
サカナシが暴れたため周囲にあった山などは吹き飛んでいる。
(キノクニ様だと騒いでいた奴らも消し飛んだなこりゃ。ラオを見られてたからまあいいか)




