穴だらけの作戦
護衛の中の一番強い人が手紙を持って出掛けていった。
あの人なら盗賊が束でかかってきても突破出来るそうな。
優しい人だったのになぁ。豹変するのだろうか?
的には容赦ない、みたいな?
本当に強い人程、優しいのかな?
さて戻ってくるまでは暇なのだが、暇と言うとまた商人に何かさせられそうだ。
なので何かをしたいと思う。
街中は危険なので、朝に街を出て夕方に戻るのが理想。
って事で、作戦を練ってみた。
「おや、トイレですか?」
「いえ。ちょっとダンジョンがあるって話を聞いたので行ってみようかと」
「今出掛けるのは危険だと思いますけど?」
「宿に閉じこもってたり、街中をウロウロする方が危険だと思いまして」
「ほほぅ、それは何故?」
「そういう外から来た人間らしからぬ行動をしたら怪しいじゃないですか。
特に領主から手紙がくる程、目を付けられてる訳ですし。
だから普段通りしてますってアピールですよ」
「なるほど。しかし、何故ダンジョン?」
「狩人ですし、レベルも上げたいですからね」
どうよ、この上手い言い訳。
これなら反対されないだろ。
「……貴方は役者では?」
「うっ…………あっ、ああ、狩人は今度やる役の中の話でした!
そ、それでですね、役作りの為に見聞を広めるのも大事なんですよ!
実際のダンジョンも経験したいですし!
レベルは高くても困りませんしね!! ですよね!!」
「そうでしたか。ここのダンジョンは3階までは初心者向けらしいので、確かに向いているかもしれませんね」
「でしょう! そんなに危険も無さそうですし、ほら、タヌキも居ますし!
って事で行ってきます!!」
ヤベー、そうだった。
今は職種を役者にしてるんだったわ。
気をつけないとなぁ。
何か、どっちでもみたいな職種は無いのかなぁ。
あれば取得して変更したい。
後、取得した職種を消したい。
具体的に言えば、ストーカーを消したい!
はい、やってきました、ダンジョンです。
やっとダンジョンらしいダンジョンです。
タ○リさんが喜びそうな断層のある山の壁面に穴が開いてます。
鍾乳洞って感じでしょうか?
と言うか、ダンジョンって知らなかったら、ただの洞穴にしか見えない。
たいまつも無いしさ。
まぁ、最初の街にあったダンジョンもただの穴だったけど。
商人の話では3階までは初心者でもOKって感じだったね。
早速たいまつに火を点けて、潜入開始。
大きさは直径3mくらいの洞穴だな。天井には鍾乳石が下がってる。
音は無い。いや、俺の歩く音と、水が落ちる音くらいだ。
喋ると反響しそうだな。
そんな事を考えながら歩いていたら、先行していたタヌキが止まった。
「どうした?」
「この先に何か居ます」
「何かって何?」
「たいまつが明るくて、夜目が使いにくいんですよ」
「あっ、そうなの? じゃあ消すわ。正体が判ったら、また点けるからな?」
「お願いします」
たいまつを消すと、入り口の明かりが遠くに見えるだけとなった。
ふ、不安だ。早く正体を見極めて欲しい。
「ど、どうだ?」
「たいまつの明かりを消したら、興味を無くしたように離れて行きました。
何だったかは判りませんでしたが、モンスターだったと思います」
「え~、たいまつの明かりに反応するのかよ。
じゃあ進めないじゃんか」
「止めますか?」
「う~ん、気持ちは止めたいけど、ここまで来て帰るのはなぁ……。
とりあえず、夜目を頼りに進んでみるか」
「判りました。でもどうします?」
「ここは合体だ!」
「ええっ?! 獣姦ですか?!」
「アホか!! 俺がタヌキを抱いて進むって事だよ!!」
「判ってますって。ジョークですよ」
「ボケにボケで返すなよ」
タヌキを抱えながら進んだら、あっけなく地下に降りる道を発見出来た。
その間、モンスターは1匹も出てこなかった。
やっぱりたいまつか~。
よく考えたら、安全を考慮して行動したけど、戦闘してないので経験値が貯まらないんじゃ……。
次話は5日の17時に投稿します。




