怪しい手紙
夕方。
昼寝から目を覚ましボーっとしてたら、タヌキが商人さんと共に帰ってきた。
「少々、マズい事になりました」
「えっ? 何が?!」
「いや、悪い事では無いのですけどね」
「そう言われても不安でしかないですよ! なんなんです?!」
「どうやったのかは判りませんが、私達が調べてる事を領主に知られました」
「は、はぁ。それがマズい事ですか? 安全の為ですよね? 領主にも損は無いでしょうに」
「使いの方が来られて、この手紙を渡されましたよ。まあ読んでみてください」
その手紙の内容をかいつまんで言えばこういう事だ。
・独自で調べようとしている事には感謝する
・だが、その行為は危険と言わざるを得ない
・他の地域の商人、しかも他の領主も懇意にしている商人に危ない事はして欲しくない
・不甲斐ない領主だが、私に免じて止めてもらいたい
つまりは、危険だから止めろって事か。
人の心配の出来る良い領主だ。
でもな~、なんか引っかかる。
「これ、なんか気になりませんか?」
「いえ、別に。どうかしましたか?」
あ~、こっちの世界は貴族社会だもんな。
あまり貴族のやる事に疑問を持たないのかも?
日本人だと、気にしないからなぁ。
貴族? あぁ、なんか昔は居たらしいね。政治家よりも偉いの?
って感じ。俺だけか?
「何か判るのであれば、教えてもらえますか?」
「いや、ただの憶測って言うか、何か変って言うか、違和感があるって言うか……」
「構いません。何です?」
「えっとですね、さっきも言ったようにですね、勝手に調べても領主にも損は無いと思うんですよ。
それをわざわざ手紙で止めさせるって、どうなんだろう?って思ったんです」
「勝手に調べる事によって、調べてる事が露見するのを恐れたのだと思います。
私達が見つかる分には問題無いですが、もし潜入捜査でもしてるなら危険になりますから。
後手紙ですが、呼び出せば盗賊か内通者に怪しまれるからでしょう」
「あ~、なるほど。でも、その場合、『潜入捜査をしているから止めろ』と書けば良くないですか?」
「それこそ、この手紙が盗賊側に渡ったら大問題ですよ?」
内容で察しろってか?
「一番気になってるのは、何で兵士の上の人じゃなくて、領主が直々に?って所ですかね」
「使える人間がいない、もしくは怪しいんじゃないでしょうか?」
「う~ん……そうかも知れないけど…………」
「まだ気になりますか?」
「……いやね、商人さんが調べてる事を誰かが領主さんに知らせた訳じゃないですか。
だったらその人は信用出来る人って事じゃないですか?
で、その人が商人さんに伝えたら良くないかな~って。
手紙を持ってきた人は、そんな感じの人でした?」
「いえ、ただのメイドでしたね。
所作を見ても武芸に秀でているようには見えませんでした」
所作を見て判るんかい。凄いな。
じゃあ俺なんか見たら、ヘボいなって判るんだろうな。
悪かったね、ヘボくて!
「ただのメイドに持たせるのは危険じゃないですか?」
「……確かに言われてみればそうですね」
「だから、誰かが領主さんに進言してるんじゃないかと思うんですよ。
商人さんが捜査してる。止めさせた方が良い。って」
「つまり、その進言してる人が内通者ではないか?と言いたいのですね」
「そう! それです! 調べられてマズいのは内通者と盗賊だけですよね!」
人と会話してると考えがまとまってくるな。
そうだよ、領主と近い人が内通者の可能性があるんだよ。
それなら領主が出す指示も先に聞けるだろうし。
まぁ、本当に潜入捜査してる人が居るなら手紙の通りなんだけどさ。
潜入捜査するくらいなら、さっさと攻めそうなんだよね。
だってさ、領主って偉いんでしょ?
アジトを襲撃して、もし間違いでも握りつぶせそうじゃん。
ラノベの貴族ってそれくらいの力があったよな。
だから怪しい所を全部調べた方が早いだろ。
それをさせないように、誰かが進言してるんじゃないかな?
「しかし……それをどうやって見つけるのです?
領主に直接話しが出来れば良いですが、無理ですよ?」
「そうですね……。いや、何とかなるかも知れませんよ?」
上手く行けば可能だと思う。
ここの領主は騙されるほど良い人っぽいし、何とかなるんじゃないか?
要は内通者を発見して捕まえれば良いんだし。
ついでに言えば、この場合、俺は表に出なくて済む。
つまり逆恨みされないって事だ。
恨まれるのは商人さんになるのかな。
悪いけど、受けてくださいよ、ヘッヘッヘ。
「なんか、悪い顔をしてますよ? 貴方の方が悪役みたいですね」
失礼な!
次話は3日の17時に投稿します。




