日本人だもん、お決まりだよね。
宿で朝飯を頼んだら、まさかの納豆登場。
この世界、納豆なんかあるんだなぁ。
いや、好きなんだけどさ。困る。
だって、ご飯じゃないんだもん。パンだよ、パン。
醤油もある、ネギもある、カラシもある。
でもご飯が無い……。
ヒドくないか?
いや、米は絶対にあるはずだ!
あの神様が米無しなんかするはずがない!
え~と、確かラノベだと……家畜の飼料か、誰も見向きもしない雑草扱いだったような。
よし、探そう。
家畜の飼料なら何処かに売ってるだろうし、農家に聞けば良い。
雑草なら……タヌキが知ってるか?
「なぁ、米って知ってるか?」
「米ですか? 知りませんね」
「あぁ、すまん。えっと、稲だ」
「稲?」
「え~、植物でさ、多分だけど、湿地帯に生えてる草かな。
まっすぐ伸びて、種が出来ると茶色くなって垂れ下がってくる」
田んぼをイメージしたら湿地帯かな~と。
実際はどうなんだろ? 元々はどんな所に生えていたのかな?
こういう時って、知識チートの人が羨ましいな。
「う~ん、見た事無いですね。
と言うか、あまり湿地帯に行った事が無いので」
「そうか~」
「それをどうするんです?」
「食べるんだよ。美味いんだ」
「へ~、そうなんですか。じゃあ探します?」
「そのつもりだ」
「でも、出かけないつもりじゃなかったですか?」
「うっ! で、でも……米は大事なんだ!!」
「別に自分が出ないって決めた訳じゃないので、良いんですけどね」
今日1日くらいは大丈夫だろ。
思い出したら食べたくなったんだからしょうがないだろ。
「じゃあ、行くぞ!」
「はい。で、湿地帯に行くんですか?」
「いや、まずは市場かな」
「あぁ、売ってるんですね?」
「さあ? 売ってたら良いな~と思っただけだよ」
宿屋の主人に市場の場所を聞いて出発。
案外近くだったので助かった。
「賑わってますね」
「本当だなぁ。盗賊が出るとは思えないな」
「盗賊が出るなら流通に影響しますからね。そうなったらここまで賑わってないでしょうし」
頭良さそうに言うなよ、タヌキのくせに。
俺がバカっぽく思えるだろ。
内容は同じなのに。
見て回ろうとしたら、普通に2軒目で売っていた。
……あっけなく発見してしまった。
しかもちゃんと人間の食用として売ってるし。
沢山買いたいが、荷物になるので5kgだけにしておいた。
ついでに賑わってる事情も聞いてみるかな。
「繁盛してますね」
「まあな。荷は入ってくるからな」
「えっ? 入荷するんですか?」
「ん? あぁ、盗賊の件を知ってるのか」
「ええ。来る時に襲われた人達を助けましたので」
「あれはお前さん達だったのか」
「ええ。それで何でなんですか?」
「入荷はするんだよ。何故か盗賊は入ってくる者達は襲わないらしい。
出て行く者達が狙われてるらしいぞ」
出て行く人達限定?
何故だ? 盗賊にそういう決まりがある?
それとも出て行く人の方が襲い易い何かがあるのか?
「だから、仕入れた物もこの街で売るしかないって事さ。
それでこの賑わいよ。食料品なんかは持ってても腐るだけだからな。
値段を下げても売ってしまいたいのさ」
そりゃそうか。
よっぽど優秀な護衛を雇わないと出られないだろう。
まぁ、盗賊の規模とか知らないから憶測だけどさ。
昼は米を炊いてもらい、納豆と一緒に食べた。
やっぱりこれだよね~。
あっ、卵も売ってたので、卵かけご飯も食べた。
余りはおにぎりに……と思ってたらタヌキに食われた。
また買いに行こう。
次話は30日の17時に投稿します。




