キヨス領
キヨス領に入ったらしい。
気づかなかったが、街道横に赤色の杭が打ってあるそうで、それが境界なんだって。
まぁ、打ってあるのは街道沿いだけだそうで、結構曖昧らしいけど。
ここから街までは2時間くらいだそうな。
それにしても、街道の左右が林って言うか森って言うか、木が多い。
理由を聞いてみた。
「ここ、キヨス領は意地で出来た場所なんですよ」
「い、意地ですか?」
「ええ。昔貴族同士で言い合いが有ったそうです。
『お前の領内は海ばっかりだな!』『そういうお前は山ばっかりじゃないか!』
『俺の所は全部あるぜ』『『お前の所は平坦な所が無いじゃないか!』』って感じで」
「……はぁ。それで?」
「当時の領主のキヨス様が、売り言葉に買い言葉で『じゃ、じゃあ、平坦な所に街を作ってやるよ!見てろ!』と」
「子供ですか? それで?」
「領内で一番平坦な所が森だったようですね。
森の真ん中を開拓して街にしました。幸い海も近かったので、浜を削って隣接させたそうです。
なので、街の周囲に森があるのですよ」
……なんともアホらしい話だ。
つまり街の周囲にドーナツのように森があるのか。
でドーナツの一部を食べたように、海があると。
すごく無駄な公共事業だと思う。雇用の促進には良いかもしれないが。
「しかし、この場所は領内の中心に近かったので、便利になったんです。
ここからアチコチに街道を伸ばされたので」
中心から枝葉を広げたのか。
確かに便利かも知れないな。
「そのお陰で、街は未だに発展を続けています」
「あぁ、中継地点になってるからですね」
「そうです。当時職のない者やスラムの者を雇って働かせたので、治安も良くなったという事ですよ」
偶然なんだろうけどね。
そのお陰で盗賊になる者がいなくなったのはありがたいな。
そんな話をしながら進んでると、異変があった。
街道の先に馬車が止まっているのだ。
周囲には座り込んだり寝転がっている人達が見える。
商人は馬車を止め、護衛の人に様子を確認させてる。
少しすると、護衛の一人が帰ってきた。
そして、驚きの報告をされたのだ。
「どうやら、盗賊に襲われたようです」
「なんと、盗賊ですか。それで状況は?」
「死者はどちらにも無し。ただ、馬車を壊され、現金のみ盗って行ったそうです」
んん? 変な話だな。
普通皆殺しにして、全てを持って逃げるんじゃないの?
ラノベではそういうパターンだったと思う。
それに、盗賊はいないって話じゃなかったっけ?!
あっ、治安が良いとしか聞いてないかも。
どんなに治安が良くても、犯罪者はいなくならないからね。
最近出来たばかりの盗賊団かもな。
「とにかく、周囲の確認を。まだ盗賊が居るかもしれません」
「はっ。現在団長が確認に行っています」
「そうですか。ああ、戻ってきましたね。どうでした?」
「周囲に人影はありません。安全です」
「判りました。ではあちらの治療をお願いします。馬車は直りそうですか?」
「無理っぽいですね。車軸が壊されています」
車軸? あぁ、車輪が繋がってるやつか。
それが壊されたのなら、車輪が付けられないね。
わざわざ壊さなくても、馬車ごと持って逃げれば良いだろうに。
荷物になって逃げるのに支障があるから止めたのかな?
「商人さん、どうするんです?」
「あぁ、タクヤさん。あの方達を治療し、このまま街まで連れて行きますよ」
「壊された馬車は?」
「置いて行きます。中身は諦めて貰いましょう。
運が良ければ、街から兵士が来た時に回収してもらえますよ」
まぁ、人命が大事だわね。
しかし、フラグ的な事を俺が考えた途端に盗賊の被害者に出会うとは。
お、俺のせいじゃないよね?
次話は26日の17時に投稿します。




