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全てを守りたい御曹司VS女神オーディン(妹)

 妹の制圧破壊前進とは、世界一の椅子を市場に出す際の販売戦略として八王子に助言したモノらしく、簡単に言うと『圧倒的な財力で世界市場を混乱させる』というむちゃくちゃなモノだった。

 はっきり言って俺が思う横綱相撲の参考にはならない。

 まったくとんでもない妹だ。どこでむちゃくちゃな知能を身に付けたのかわからんが、世界各国の政治家や企業家が妹を朝日ケ丘大学高等部に幽閉してほしいというのは正解だったのかもしれない。このまま妹が間違った方向に成長し、社会に出て父さんと手を取り合うような事があったら、八王子会長でもお手上げ状態になる可能性がある。

 こんな事を考えても意味はないな。

 とりあえず、怪我の功名と言えばいいのか、『暴漢でも襲える』と思っていた反新垣派は制圧破壊前進に危機感を覚えて身を潜めた。その裏では、枡田や麻生を筆頭に部活連や委員会が一般生徒のアフターフォローをしつつ、反新垣派とは喧嘩両成敗として休戦協定を継続する話し合いがされていた。

 最優秀者の八王子が不貞腐れて自主停学しているのはいただけないが、学校は抗争の火種は燻ってはいるものの平和そのものだ。

 嵐の前の静けさでなければいいのだが。


 そして今日、妹と一条の停学期間は終わり、2人が登校してくる。


 俺は同じ轍を踏まないように、妹が登校してくるのを確認するため、玄関前にいる。

 まだかまだかと赤門を見ていると、数人、数十人と新入生達が門の前に溜まり出した。

 何事だ?

 通行の邪魔になるだろ。と思っていると、一条が赤門前に溜まる新入生達の隙間を欠伸をしながら通り抜けて来た。

 妹はどうしたんだ?

 一条、護衛なら妹と一緒に登校して来ないと……むっ?


 赤門前に巨馬が現れて、そのまま門を通過した。


 西洋甲冑を装備した革命家八王子沙織が巨馬を誘導するように手綱を握り、こちらへ歩いて来ている。

 更に、門の前に溜まっていた新入生や見えない位置にいた2年や3年は巨馬の背後に隊列を作りながら進軍してくる。

 八王子、次は何をやらかす気だ。

 俺がコツコツと積み上げて信頼を得てきた2年や3年を妹という存在だけで手懐けたとでも言いたいのか?

 そんなことより一条だけでなく八王子までも妹と一緒にいないとは……んっ? あの三角帽子はなんだ? 巨馬に誰か乗っているな。

 妹……か?

 青色の雨合羽みたいな服を着た女の子が一条に何やら言っているが……妹なのか?

 ………………。

 …………。

 ……。

 妹がわけのわからない格好で巨馬に乗っている!!!!


 な、な、な、なんだアレは!?

 なにがあったんだ!?


「むっ、アレは……神々や人間の敵、ヨツンヘイムに住むと言われる巨人族!!」


 ヨツンヘイム?

 巨人族?

 なんだソレは!?


「我が物顔でミッドガルドをうろつく巨人族め! 女神オーディンがぶん殴ってやる!」


 妹は何を言ってるんだ!?


 一条はため息を吐きながら俺の前に来ると、


「おい、巨人族のダンナ。相手してやれよ」

「な、なんだアレは。何が、あったんだ。ま、まさか、頭突きでおかしくなったのか!」

「違う違う。おかしいのは元からだから、1週間前に帝王であり以下省略なお嬢様にはまともな設定がねえって言ったんだ。中身がねえって言ったつもりだったんだがなあ……帝王から神格化してオーディンになっちまった」


 おかしいのは元から?


「と、とりあえず、俺はやられたらいいのか?」

「やられたら更に調子にのって悪化するだろ。厨二の治療法は現実を教えるしかねえよ」


 ——————

 ————

 ——


 妹は八王子に抱っこされながら巨馬から下りる。

 写真を撮っておきたい衝動はあるが、写真という証拠が残るモノを撮ってはいけない状況だ。


 銃刀法違反。


 妹は二股の槍、八王子はロングソードを平然と持ち歩いている。

 堂々と持ち歩いてるから真剣ではないだろう。だが、形状が武器なら持ち歩いてはならない。目的がある場合でも、鞘に納めて袋に入れないと持ち歩いてはならない。


「筋肉オヤジ、頭突きの借りはお前の筋肉だ!!」


 妹が二股の槍を向けてきた。

 どうやら警察署で頭突きしたから仕返ししたいようだ。


「炭酸が抜けた炭酸飲料のような極甘閣下は剣の錆にしてくれますわ」


 八王子が鞘からロングソードを抜いて正眼に構えた。

 やはり反省の色は皆無。昨日の抗争は頭の隅にも残っていないだろう。


「「覚悟!!!!」」


 ……むっ?

 2人は花菱さんに稽古してもらっているはずなのに、手にある武器を使い慣れていないぞ。


 妹の二股の槍が俺の胸に当たり、八王子のロングソードが右腕に当たる。

 ………………おい。

 …………おい!

 ……おい!?

 真剣ではないか!!?


 何を持ち歩いてるんだ!

 俺は空菱さんの気配がある屋上へ振り向くと、


(空菱さん、何を持ち歩かしているんですか!?)


 心の中の声を目で訴える。


(…………)


 空菱さん。やれやれ、と言いたげにため息を吐かないでください!


(空菱さんではダメだ。花菱さん……!)


 巨馬の横にいる花菱さんに目で訴える。

 こんなものです、と微笑ましい顔をする前にこんな物を持ち歩かせないでください!


 妹と八王子は真剣が筋肉に通用しないのを理解していない。2人は頭に疑問符を浮かべると、モタモタしながら俺から距離を空ける。

 俺は横にいる一条に目をやり、


「い、一条……真剣なのだが?」

「真剣だなあ。おう、ダンナ、銃刀法違反者がまた来たぞお」


 妹と八王子は屁っ放り腰で真剣を振り回し、筋肉にペチペチと当ててくる。


「一条……」

「なんだあ?」

「2人は銃刀法違反を知らないのか?」

「日常生活で銃や刀を見てるからなあ。一般常識はねえんだろ。そもそも一般常識でいたら死んでるつう話だあ」


 一般常識でいたら死んでいる。

 そのとおりだ。

 不便に思ってしまうが、妹が一般常識で生活していたら暗殺者に殺される。

 そのとおりなのだ。

 そのとおりなのだ、が……。


 筋肉解放!!!!


 妹が腹にペチと突き当てた二股の槍の切っ先を腹筋で挟み込む。


「ドリル、今だ!!」

「はい」


 八王子が胸にペチンと当ててきたロングソードを胸筋で挟む。


「「…………」」

「満足したか?」

「「??????」」

「遊びは終わりだ」

「ドリル、グングニルが抜けないぞ!」

「エクスカリバーも抜けませんわ」


 妹と八王子はまだやる気のようだ。

 しかたない。

 胸筋に力を込めて挟んであるロングソードをメキメキと鳴らす。


「一般社会には銃刀法違反という法律がある。銃はもちろん刃物を持ち歩いてはならない」

「ドリル、抜けないから刺しこめ!」

「エクスカリバーがメキメキと鳴ってますわ」

「本当だ! メキメキ鳴ってる! だが、想定内!」


 まだやる気のようだ。

 しかたない。

 俺は二股の槍とロングソードを挟めたまま、柄を握る妹と八王子を引きずり、学校旗を飾る旗ポールへ向かう。

 今週末に取り替える予定の旗ポール。

 このまま銃刀法違反を放置するより、2、3日学校旗を飾れない方が校長の毛根にも優しいだろう。

 この2人が悪影響を生み、学校へ真剣を持ち込むという非常識が常習化したら、それこそ学校内が荒廃した世界になる。


 俺は旗ポールを握り、親指を立てる。


「没収だ」

「グングニル、筋肉に風穴を開けろ! 封印解……」


 ポグン。


「ドリル。なんか変な音しなかったか?」

「コレですわ」


 八王子は俺がへし曲げた旗ポールを指差す。

 妹よ。旗ポールの中は空洞になっているからポグンという変な音が鳴ったんだ。


「……な、なにこれ?」

「旗ポールだ。今週末に俺が解体し業者が新品にする予定だったから、器物破損ではない」

「…………」

「槍と剣を没収か折られるかを選べ」

「…………〜」


 妹が逃げた!?

 入学式の時もだが、どんな体勢からでも初速からトップスピードを出す逃げ足の速さはすさまじいモノがあるな。

 父さん譲りの頑丈な体質でないと筋肉は断裂するし、関節同士がピストンのように反発して骨折しているところだ。

 むっ?

 いつの間にか八王子もいなくなっている。

 2人は花菱さんから闘う武術よりも生き延びる方法を稽古してもらっているんだな。


「一条。2人には、生徒会室で反省文を書いたら返してやると言っといてくれ」

「あの2人は反省つう言葉を知らねえんじゃねえか?」


 あり得る。


「とりあえず頼む」

「生徒会室に置いてあると言っとくからよお、来たら捕まえて反省文を書かせろ」

「そうだな」

「それとよお、ダンナ。あの調子だと高確率で授業をサボるだろうから、教室の前で見張っとけえ。もしかしたら遊べるかもしんねえぞお」

「遊べる?」

「とりあえずよお、お嬢様は俺の雇い主だからダンナの味方はしねえからなあ」



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