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留年生は留年生の留年生!/夢は現実になれば正夢だけど、現実が夢になったなら、それはわたしの夢だ。  作者: 有知春秋
【二章•帝王であり百獣の王を兼業する傍ら総督も兼任しているお嬢様な新垣唯衣】
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ぼっちになりたいお嬢様と三種のウサギ

 

 ホワイトアスパラの成長観察DVDはわたしとドリルに恐怖と感動を与えてくれた。

 なんか農家さんが難しい事いっぱい言ってたけど、ホワイトアスパラはグリーンアスパラと同じ種類みたいだ。——驚愕。


 今は朝の9時。場所はイケメン店員さんがいる喫茶店【RABBIT-EAR】。

 わたしは窓から朝日ケ丘大学高等部の正門が見える最奥席にいる。

 窓際の席ならどこからでも正門は見えるのだが、癒しの時間でもあるコーヒータイムに、わたしの前を庶民に横切られると不快なので、最奥席にいます。


 昨日来た時は気にしてなかったけど、店名のラビット•イヤーってウサギの耳って意味でいいのかな。たぶんそうだね。

 店内をよく見ると、ウサギが4脚を支えている木製テーブル、枠組みされた壁にも木彫りのウサギがいる。いや、いるというよりある、だな。うおっ、スゲェ! 天井からぶら下がるランプがウサギのガラス細工になってる!

 昨日に気づかなかったのは、わたしに女子力が無いから?

 いや、正門前の光景に焦燥していたから気づかなかったんだ。


 さてと、学校は8時ぐらいからだったな。

 遅刻というより、お嬢様的に今日はオフだ。

 9時にモーニングは終了するし、そろそろ……


「店員さん。オリジナルブレンドのブラックコーヒーお願いします」


 8時頃に来店し、モーニングのトーストとコーヒー1杯で1時間居座り、大量のシュガーとミルクを消費した。

 お客さんとしての礼儀として、店内に居座り続けるならラビット•イヤーに貢献しないとならない。席の少ないお店だから尚更。

 庶民のように飲み放題で元を取ろうとしたり、コーヒー1杯で居座り続けるような行為はお嬢様なわたしはしない。そんな下賎な行為をするぐらいなら、お店を買います。


「オリジナルブレンドですね。かしこまりました」


 イケメンですなぁ。

 昔、ドリルがどS教育係に隠して持ってきた少女漫画に登場していたイケメンみたいだ。

 学生時代はイケメン四天王とか呼ばれていたんじゃないですか〜。この女泣かせ!


 でも残念。わたしはあなたに惚れません。


 家族を考えただけで吐き気がするお嬢様なわたしは、恋人や友人と考えだけで背筋にゾッと寒気がして嫌悪しますから。


 イケメンを見るのは芸術観賞と同じなのですよ。


 そして、お嬢様なわたしが認めるイケメンとは、遺伝から得た顔に頼らず、日々精進しているイケメンになる。

 例えるなら、サラブレッドのように洗練された芸術作品。それがお嬢様なわたしが認めるイケメン。

 どS教育係仕込みのお嬢様なわたしの洞察力は、五百円玉を3億円と評価するドリルのような節穴ではないのだ。

 そのわたしから見てラビット•イヤーの店員さんは、イケメン四天王と呼ぶに相応しい。残りの3人はいませんけどね。


「お待たせいたしました。オリジナルブレンドです」


 イケメン店員さんはコーヒーカップをテーブルに置くと、続けてウサギ型の陶器を三つ置く。1つ1つの大きさは掌ぐらい。普通のウサギ、垂れ耳のウサギ、耳が短いウサギの三種類。

 この三種のウサギはなんだ?

 三種の神器みたいのかな?


「こちらは?」

「普通のウサギにはシュガー、垂れ耳のウサギにはミルク、耳が短いウサギにはハチミツが入っております。お客様がまた来ていただけるように『専用器』を用意させていただきました」

「…………」


 ブシャァァァァァ!

 このイケメンたらもぉぉぉぉ!!!!

 こ、こ、心の中のわたしが出してるのは鼻血じゃないんだからね!

 わ、わ、わ、わたしはこんなんじゃ落ちないんだから!

 お嬢様なわたしはこんな安い陶器にときめかないんだから!


「申し訳ありません。ご迷惑でしたか?」


 ブハァ!

 その切ない表情、たまらん!!

 ま、まぁ、迷惑ではありませんよお!

 お店なりにお嬢様なわたしを庶民とは違う扱いにする努力をしてるんだから。

 本当に、お嬢様なわたしにだけ、三種のウサギを、用意したんならな!?


「いえ、迷惑ではありません。また足を運ぶ楽しみが増えました」

「ありがとうございます。それでしたら、次に来店されるまでに、三種のウサギの背中にある蓋部分、本来は入ってるモノを書くのですが『お客様の好きな名前』を入れておきますので、この紙に書いておいてください」


 お嬢様なわたし専用の三種のウサギでした。

 イケメンさん、疑って申し訳ありません!

 見た目から新品なんだから疑うなよわたし!


「ご丁寧に、ありがとうございます。しかし、名前……ですか」

「ごゆっくりお考えください」

「はい」

「それでは失礼します。何かありましたらお呼びください」


 たぶん、常連さんに専用器を提供するシステムなのだろう。

 だが!

 来店2回目で専用器を提供するお客さんはお嬢様なわたしぐらいだな。——予想。


 普通のウサギの口からシュガー! ——サラサラ。

 垂れ耳のウサギの口からミルク! ——チョロチョロ。

 耳が短いウサギの口からハチミツ! ——トロトロ。

 コレは楽しい!

 いつもより多く入れてしまう!


 この三種のウサギに名前か〜……。

 悩みますな〜。

 シュガー太郎、ミルク次郎、ハチミツ三郎。

 ネーミングセンス皆無。

 どうしようかな……


 わたしは何か良い名前がないかと店内を見回し、琴線に触れる物が無かったため、窓越しに外を見る。

 道路に信号、横断歩道に……あれ、電信柱がない。地面に埋めているのか。ん〜〜〜〜、刑務所みたいな高い壁、朝日ケ丘大学高等部の赤門、走る筋肉オヤジ、4階建ての校舎……屋上に誰かいるな。あっ、ウサギの名前閃いた! 普通のウサギが……んっ? 走る筋肉オヤジ?


 ………………

 …………

 ……

 げっ!!!!

 なんかこっちに来てる!

 まさかイケメンが通報した?!

 いや、ごゆっくりお考えてくださいって言ってたから違う。

 たまたまこっちに来てるだけか。

 いや。違う。迷わずラビット•イヤーに……



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