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OTOGI WORLD   作者: SMB
* trace of the cat to laugh at *
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彼女との生活


初めてやって来た日から、少し日が経った頃。

誰もいない他人の部屋で、レイルはゴロゴロと寛いでいた。


目の前にあるゴムボール。

レイルにとってジャストサイズのものだった。

それを両手で抱え込み、戯れている。

こうしていると楽しいと感じてしまい、いつの間にか夢中になっていた。


レイル「って、こんなキャラじゃねぇだろ、俺!!!」


ボールの丸い誘惑に負けてしまっていた。

それを手で乱暴にはね退け、部屋の扉に駆けていく。


レイル「にゃ〜〜!!!開かね〜〜〜っ!!!」


閉まった扉にはめられたガラスを、カリカリと引っ掻いた。

こんな姿では、目の前の扉を開ける事すら出来ない。


なんて惨めなんだ...

と、考えた時だった。


レイル「...元に戻れねぇのかな?」


窓の方まで移動する。

自分の肉球を見つめながら、指をウニウニと動かしてみた。


レイル「....いける」


なんだか、そんな気がする。

試しに、マナの力を集中させるように力んでみた。


レイル「にゃ!?」


突如、視線の位置が変わった。

体が大きくなる。

効果音はなかったが、どうやら元の姿に戻ったらしい。


体のあちこちに怪我の痕が残っていたが、痛みは感じない。


レイル「よしっ、逃げよう」


このままここで暮らすのも悪くないが、やはり自分は野良猫だ。

縛られたくない願望もあり、そう思い立つ。


ガチャっ....


レイルの耳が、即座に反応する。

玄関の方から音がしたのだ。


レイル「やべっ!!!」


咄嗟に力んでしまった。

その瞬間、また猫の姿になってしまう。


ドアの隙間から廊下の明かりが漏れた。

近付いてくる足音と共に部屋に入ってきたのは、この部屋の住人である海希だった。


レイルは高鳴る胸を押さえながら、悟られないようにと、ジッとカーテンだけを見つめていた。


海希「まだ懐かないか〜....」


あ、あぶねぇ。


危うく、姿を見られるところだった。

いや、見られて困るような事でもないが、なんだか駄目なような気がした。


そもそも、レイルがここから逃走するのに邪魔をされるかもしれないのだ。


海希「コロ〜、ご飯買ってきたよ。お腹空いているわよね?」


レイル「コロじゃねぇからな!」


と、名前に反応してしまう。

チラリと目を向けると、キャットフードが並べられている。

乾燥した、丸くて茶色いもの。

その光景に愕然とした。


海希「は〜い、どうぞ」


レイル「えぇ...魚が食べたい」


もしくは、前に食べさせて貰った鶏肉。

しかし、その声は彼女に届かない。

仕方なく、それを口にする事にした。


自分が食事している間も、海希は体を撫ぜてくれる。

知らない人間に体を触られるのは嫌いだが、不思議な事に嫌な気分にならない。

彼女の手は、とても優しい。


海希「あんたって、私の事嫌いなの?」


嫌いではない。

最初は警戒したが、食べ物を与えてくれるのだから、嫌いにはならない。


レイルは気にせずご飯にありついていた。


海希「こんなに良くしてるのに...ありがたく思いなさいよね」


わしわしと頭を撫でられる。

少し乱暴だったが、やはり嫌な気にはならない。


海希「そんなに冷たいと、なんだか悲しくなっちゃうわね」


冷たい態度を取っている気はないが、好かれたいとも思わなかった。

でも、彼女の匂いはとても懐かしく感じる。

優しくて暖かくて、とても良い匂い。


なんで、こんなに安心するんだろ。


レイル自身にも、その答えは分からなかった。






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