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OTOGI WORLD   作者: SMB
* trace of the cat to laugh at *
83/92

彼女からのもてなし


女の名前は、どうやら”イナガワ アマキ”と言うらしい。


馬鹿みたいに自己紹介してくれた女の名前から読み取れるのは、自分の知らない世界の人間らしく、そしてここが、全く別の世界だという事だった。


今レイルがいるのは、彼女の住むアパート。

傷を負った彼は、海希に連れ込まれていた。

そして、何故か手厚い看護を受けている。



海希「ご飯食べる?」


目の前に置かれた水の入った器と鶏肉。

鶏肉に至っては、彼女の手の上に乗せられている。


レイル「....毒は入ってないだろうな?」


レイルにとって、知らない世界の知らない人間だった。

名前で相手の事をなんとなく把握したが、警戒するのは怠らない。

自分の知り合いにだって、平気で毒入りのお菓子を勧めてくる奴だっているのだから、この女だって例外ではなかった。


海希「うーん、食欲ないのかな...」


食欲の問題じゃない。

お前の人間性の問題なんだよ。


と、レイルは彼女に疑いの眼差しを向け続けている。

その視線を逸らす事はない。


簡単には心を開いたりはしない。

それが、猫の性と言うものだ。


海希「食べないなら、私が食べるからね」


と、彼女はそれを小さくちぎって口にした。

もぐもぐと、口を小刻みに動かしている。


レイル「た、食べないなんて言ってないだろ!」


お腹は空いている。

ただ、お前の人間性を確かめているんだ。


が、レイルの声は相手に届かない。


海希「うん、美味しい」


レイル「〜〜っ!!!」


彼女は、とても美味しそうに食べていた。

わざわざ毒味をしてくれたので、どうやら相手は自分が警戒するほど悪い人間ではないようだ。

毒が入っていない事は確認したので、彼女の手元にある残りに鼻を近付けた。


海希「待ってね、今あげるから」


再び、手の上に乗せられる。

少し鼻を近付け匂いを確認する。

そして、それをがむしゃらに食べた。


レイル「...うまい」


手に付いた鶏の味も、綺麗に舐めとった。

それでも、まだ空腹は満たされない。


レイルは彼女を見上げた。


レイル「もっと食べたい」


何故か、海希の頬が赤くなる。

レイルの言葉が伝わったのか、急いで次の鶏肉を手の上に用意してくれた。


レイル「なかなかイケるな。凄くうまい」


満足すると、目の前の水を飲んだ。

舌を使って、水を舐めとる。

喉も渇いていたので、とても生き返る気分だった。


海希「あぁ...可愛い...!!!」


突然大声を出され少し驚いたが、彼女は自分の頭を優しく撫でてくれた。


とても暖かい。

自然に瞼が重くなる。


気持ち良い....


何故だか、落ち着く。

とても安心するのだ。


その気持ち良さに、レイルはその場で体を丸め瞼を閉じた。


海希「あ、名前決めてあげなくちゃ」


彼女は彼女で、どうやら夕食にありつくようだった。

うっすらと耳に入る海希の声。

彼女の声も、懐かしく感じる気がする。


海希「タマ...だとありきたりだよね...」


レイル「...そんなダサイ名前を付けて貰わなくても、俺にはちゃんとした名前があるっての」


ちらりと彼女に目をやる。


彼女もレイルを眺めていた。

レイルの事を観察しているようだ。

そして深く考え込む様子で、突然、パッと閃いたように言った。


海希「....コロ、で良いか」


レイル「にゃに!?」


全然良くねぇだろ!!!

センス悪過ぎじゃねぇか!!!!


全く必要のない名前を付けられてしまい、レイルは肩を落とした。


この女には、センスがない。

センスが無さ過ぎる、と。




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