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OTOGI WORLD   作者: SMB
* the future to choose it *
70/92

12時過ぎの魔法


中庭に出ると、心地よい風が私の髪を撫ぜた。


アルコールで熱を持った私の体に浸透してくるように、とても柔らかく吹き抜ける。


城の庭はとても広い。

たくさんの花が咲き誇る城の広い花壇。

生垣の隙間にある花の形をした外灯が、赤や黄色、青や緑と、色鮮やかに明かりを点す。


芝生を進んでいくと、その先には小さな噴水があった。

その前にあった真っ白なベンチ。

ここにあるべくしてあったようなベンチに、ゆっくりと腰を下ろした。


見上げれば、夜空が広がっている。

私が住んでいた世界なんかより、星がとても綺麗に見えていた。

星に詳しい訳でもないが、嫌いな訳でもない。

チカチカと小さく光る星に、私は目を細めた。


海希「何やってんだろ...」


誰もいない庭園で、心の声がポツリと出てしまっていた。


さっきまでの食い気と元気はどこにいったんだろう。

私自身が、そう思う。


1人になれば、考えてしまう。


私の本当のお父さんとお母さん。

もう覚えていないけれど、きっと可愛がって育ててくれた。

優しい両親。

絵に描いたような家族だった。


そんな親から貰った名前を、どうして捨ててしまったんだろう。

私にとっても、とても大事な名前だった筈なのに。


私は最低だ。

最低で、頭が悪くて弱い。

誰かに裁かれることも無く、こうやってずっと生きていくのだろうか。


足枷は、自分で外せない。

重過ぎて、前にも後ろにも進めない。

その重さで、溢れてくる罪の意識に沈み、溺れてしまいそうになる。


城の中から、バイオリンの音が漏れていた。

ここまで聞こえる音色は、やはり素晴らしいものだった。


こんなに素敵な音楽を聴いているのに、それでも気分は最低で。

耳に入ってくるこの音も、目に入るこの綺麗な夜空も。

それに、着飾った綺麗なドレスもピンヒールも。

全てが、虚しく感じてしまう。


なんだか、頭がぼーっとする。

少し、お酒を飲み過ぎたかもしれない。

体の熱だって、なかなか冷めやしない。


視線を足元に落とし、溜息を漏した。


何も考えたくないと思ってしまうのは、私がエマだった時からの悪い癖だろう。

なんだかんだで、また逃げたいとどこかで感じてしまっている。

まだ能力が使えたなら、私はまた使っていたかもしれない。


なんども繰り返す自己嫌悪。

私は本当に馬鹿な人間だ。



海希「......?」


コツコツと、靴が地面を叩く音。

その音が、少しずつ近付いて来る。


足元に落としていた視界の中に、紳士用の靴を履いた男の足が入り込んだ。


男「こんな所でお1人ですか?」


男は言った。

私は、顔も上げずに男に答える。


海希「風に当たっているの」


バイオリンの音と、噴水の水の流れる音だけが私と男を包む。

2人だけの、不思議な空間だった。


男「女性が1人でいるなんて、ここは物騒だからあまりお勧めしないな。それに、あなたみたいな素敵な女性なら、尚更心配になる」


海希「物騒...それは言えてるわね。あなたみたいな人に、こうやって絡まれちゃってるもの」


あえて皮肉った。

絡まれているのは、今に始まった事ではない。

もう随分と前から絡まれ続いている。

おまけに、危ない事にもたくさん巻き込まれた。


私が言うと、男はクスッと笑った。


男「思わず声を掛けてみたくなって。迷惑だったかな?」


海希「...いいえ。迷惑なんかじゃない」


むしろ、救われた気分だった。

彼がここに居て、1人きりにならなくて安心する。

彼は、いつだってそうだ。


男「なら、俺と一曲踊ってくれませんか?」


その一言に、顔を上げた。


黒いスーツ姿の男。

その目元を黒色のマスクが隠していた。

白い手袋をはめた手が、ゆっくりと私に差し出された。


海希「良いわよ」


手を取り、ゆっくりと立ち上がる。

回された手が、優しく腰に添えられた。


見よう見まねでダンスを踊る。

聞こえてくるバイオリンの音に体を預け、彼は私を誘うようにゆっくりとステップを踏む。


海希「意外に上手いのね」


ダンスなんて未経験で下手な私を、自然に誘導してくれる。

こんなに上手だったとは意外だ。


男「俺は器用だから、練習しなくても踊れるんだ。それに、格好悪いところは見せられない。とくに好きな人の前ではね」


海希「少しくらいは、そう言うところも見せて欲しいと思っているのよ?」


格好悪いところなんて、たくさん見てきている。

それ以上に、格好良いところも。

それでも、私が知らない彼の姿はまだまだたくさんあるだろう。

これからだって、たくさん見せて欲しいし、見ていきたいと思う。


男「それは難しいな。男って言うのは、色々とプライドがあるから」


海希「プライドなんて捨てれば良いのに...ついでにそのマスクも外したら?似合ってないし、その喋り方も不自然過ぎる」


ひょこひょこと動く猫耳。

私がそう言うと、彼はまた笑った。


男「似合ってると思ったんだけど、そりゃ残念」


目元を隠すマスクを外した。

珍しいオッドアイに、私が映っているのが見える。


前髪をアップにさせ、いつもとは少し違うレイル。

落ち着いた大人の雰囲気に、私の頬が綻んだ。


海希「いつから来ていたの?」


それでもダンスは続ける。

レイルと踊るのは、嫌にならない。

むしろ、このままでいたいとさえ思った。


レイル「う〜ん、少し前かな。たまたま、アマキが出て行くのを見かけたからさ、追いかけて来た」


ずっと見られていたら、波乱が待っていただろう。

これまでの事が、レイルに見られていなくて良かったとしみじみ思う。


海希「もう少し、早く来てくれれば良かったのに」


レイル「俺は行きたくないって言ったろ?本当、あんたって俺の言う事を聞いてくれないよな」


海希「私は行かないなんて一言も言ってないでしょ」


それでも、レイルは来てくれた。

本人には言わないが、それがとても嬉しい。

こうやって、ダンスの相手までしてくれている。


レイル「どっかの男に絡まれたりしてない?ムカつく奴がいるなら、俺が今すぐにでも撃ち込んでくるけど」


海希「舞踏会なんだから、そう言うのはやめないさいよ」


現に、既に面倒くさい奴らに絡まれているのだから笑えない。

何があっても言えない。


レイル「なら良いけど...俺も最初からあんたと来ていれば良かったかな」


海希「どうして?」


レイル「だって、いつも以上に綺麗なアマキをエスコート出来るんだ。それ、凄く似合ってるぜ」


お酒のせいなのかレイルのせいなのか、頬がさらに熱くなった理由は分からない。


レイルだって、凄く似合っている。

とても格好良い。

素直に言えないのは、私が素直じゃないからだ。


海希「レイルって、舞踏会には去年も来ていたんでしょ?誰かと踊ったりしなかったの?」


こんなに上手にダンスを踊れるなら、きっと相手も喜ぶだろう。

それに、なんだか慣れている気もする。


レイル「もしかして、俺の女関係が気になるのか?」


海希「違うわよ」


気にならない事もない。

もしも誰かと踊ったのなら、どんな子が相手だったのだろうと、なんとなく気になった。


私と違って、素直で可愛くてレイルの事を大事に思う子。

どんなに辛い事にぶつかっても、決してそこから逃げようとしない子。

私とは正反対の子が、彼にはお似合いだと思う。


レイル「心配しなくてもそんな子はいない。去年はドロシーが...って、なんか思い出したくないな」


ピーターと同じ反応だった。

やはり、何かあったのだろう。

今年の舞踏会は、無事に終わる事を祈るしかない。


海希「...ふ〜ん、案外モテないのね。この間は美女にキスされてたのに」


私は知っている。

イザベラに王妃様。

彼は、その頬に2人からのキスを受けているのだ。


レイル「あ、あんなのキスなんて言わないだろ?!あれは無し無し!それに俺はあんたじゃないと...」


何を考えているのか。

あんなに慌てて否定していたのに、急に我に返ったように落ち着きを取り戻した。

その表情には、薄い笑みを浮かべている。


レイル「...もしかして、妬いてんの?」


そう言われ、ムッとしてしまう。

なんだか、今の私はおかしい。

何故なら、レイルの言っている事が当たっているかもしれないからだ。


海希「妬いてるって言ったら?」


レイル「そりゃ嬉しいよ。もっと妬かせたくなる」


楽しそうに笑っている。


とても迷惑だ。

こんな変態猫に変な気持ちにさせられるなんて...

これ以上、彼と一緒に居ればおかしくなってしまう。


海希「私、帰るからね」


変な気持ちのまま、私は切り出した。


私らしくない。

お酒のせいなのかもしれない。

こちらもムキになっていた。


レイル「またその話かよ?俺は認めないって言っただろ」


海希「それでも帰るの。レイルの意見は聞いてない」


これは監禁罪だ。

この世界に監禁されている。

私の世界でなら罪に出来るのに。


海希「レイルの能力が必要なの。お願い」


レイル「嫌だ。俺はアマキとここに居たい」


海希「少し能力を借りるだけでしょ?それに、また帰ってくるわ」


レイル「どうやって帰ってくるんだよ。そんな能力もないのに、帰ってなんか来られない」


レイルの言った通りだ。

ここに帰ってくる事なんて出来ないのは分かっている。

それでも、帰らなければならない。


これは、やはり監禁罪だ。

監禁と言うより、軟禁。

こんな犯罪を野放しにしているこの世界は、やっぱり野蛮で私には住みにくい場所。


けれど、こんな私を許してくれた世界。

彼もまた、私には甘過ぎて毒になってしまう。


海希「...私、キスしたわよ」


突然の告白。

黙っていようと思っていた事だった。

けれど、私自身が酔っている事もあり、多少気は強くなっていた。

私を軟禁するこの男に、腹が立ったのだ。


レイル「え?」


海希「レイル以外の人とキスをしたの」


人ではない。

正確に言えば、犬....ではなくて狼だ。

縫いぐるみのような、可愛らしいもの。


とは言っても、キスなんて今更の話だった。


レイル「へぇ...それで?俺を妬かせたいのか?それとも、そいつを殺させたい訳?」


これにはもう慣れた。

それに、今はそんなに怖くない。

酔っ払いに怖いものなんてないのだ。


海希「どちらでもないかな」


こちらも強気だった。


怒らせたいのだ。

怒らせて、私なんて嫌いになればいい。

こんな私よりも、もっと良い子はたくさんいる。

こんな最低な女は嫌われるべきだ。


レイル「誰なんだ?」


レイルの声が、さらに低くなる。

気が付けば、瞳孔が開いていた。

いつもとは違い、冷たい怒りを感じた。


海希「?」


レイル「相手は誰かって訊いてるんだ」


海希「そんな事を聞いてどうするの?」


レイル「もちろん殺す」


彼は即答する。


聞かなくても答えは分かっていた。

こんな会話をしながら、まだ緩やかなダンスは続いている。


海希「私、彼に助けられたのよ?」


危ない目に遭わされた事の方が多いのは、あえて言わない。

それに、さっきも危なかった。

それを知られれば、彼はレイルに間違いなくヘッドショットを狙われるだろう。


レイル「じゃぁ、半殺しにまけとく」


海希「ほとんど同じじゃない」


あの狼の能力は、自己治癒だ。

半殺しにしたところで、すぐにケロリとしているだろう。

狙うなら、確実に心臓だ。


海希「どうしてレイルは、そんなに私の事が好きなの?」


猫は気に入った場所への執着心が強いと聞いた事があるが、それは人に対してもそうなのだろうか。

そうだとしても、擬人化するとなかなかのものに感じる。

そこまで執着されるほど、私は可愛くもなければ良い性格の持ち主でもない。

ましてや、過去にレイルの記憶を奪ったのだから。


レイル「理由なんてそんなのよく分からない。でも、アマキの近くにいると安心する。暖かいし柔らかいし、それに良い匂いもするしさ。ずっと側に居たいんだ」


海希「そんなの、私以外にもその辺にいるでしょ」


たまたま猫を拾ったのが私だからだ。

唯やありさが見付けていれば、レイルは同じ理由で彼女達を好きになるに違いない。

そう思うと、なんだか複雑な気持ちになった。


レイル「それは違う!前にも言ったろ?懐かしい気がするって」


エマの事を、身体のどこかで覚えていたのか。

確かに、エマだった私でないと心を開かなかった可能性もある。


レイル「ずっと会いたかった相手に会えた気がする感じ...これって、ある意味運命だよな」


それは、女の子が言いそうな台詞だ。

嬉しそうに笑うレイルを見て、力が抜けてしまった。

まるで子供のようだ。


レイル「だから、あんたに手を出した奴は絶対に許さない。息の根を止めるね」


海希「あんたね...私にレイル以外の好きな人がいたらどうするのよ?」


ならば、私の好きな人が殺されてしまうのだろうか。

なら、私は確実にレイルを許さない。

一生恨んでいるだろうし、好きになる事なんてない。


レイル「好きな奴...いるのか?」


レイルの口調が、急に弱々しくなった。

さっきまでとは違う、震えたような声。

また強引な事を言ってくるのかと思いきや、いきなり何なんだ。


レイル「他に好きな奴がいるのなら...俺は...」


レイルの動きが止まった。

自然に、ステップを踏んでいた私の脚も止まる。


私を見つめる二色の虹彩が揺れていた。

離れていくレイルの手。

私の手に、彼の温もりがだけが取り残された。


海希「...レイル?」


耳が寂しげに、シュンっと垂れていた。

困ったように、目を泳がせている。

レイルは戸惑っているようだった。


レイルとのダンスは終わってしまったのに、バイオリンの美しい旋律は緩やかに流れている。


レイル「俺は....どうすれば良いんだ...?」


彼らしくもない。

それでも好きだ、俺に振り向かせる、などと言いそうなものを言ってこない。

決して、そんな言葉を求めていた訳じゃない。

けれど、なんだか調子が狂う。


レイル「俺はあんたの事が好きだ。でもあんたは別の誰かを好きで...そいつもあんたの事が好きなら、俺はきっとあんたを幸せには出来ない」


レイルの悲哀の色が混じる目が、私を見つめた。

綺麗な瞳なのに、どうしてこんなに悲しそうな目をしているんだろう。

彼の瞳に映る私が、心配そうな眼差しを向けているのが見えた。


レイル「...アマキは、元の世界に好きな奴がいるから帰りたいのか?」


シュンと静まり返る彼の姿は、まさしく可愛らしい猫に近いものがあった。

さっきまで、殺すだの半殺しだのと恐ろしい言葉を口にしていたのに、子猫のように小さくなっている。


その姿に、キュンと胸が熱くなった。


本当にズルい生き物だ。

自分もこの手に弱い女だとは思っていなかったが、相手がレイルで良かったと思った。

いや、彼じゃなければ、自分もこんな気持ちにならなかったと思う。


海希「そうね。お父さんとお母さんも好きだし、友達も大事だと思ってる。好きな人に心配は掛けたくない」


この気持ちは分かって欲しい。

決して、ここが嫌いな訳じゃない。


むしろ好きだ。

レイルがいて、ピーターやドロシーもいる。

おかしなおとぎの国は夢のようで、夢じゃない世界。

とても怖い所だけど、嫌いにはなれない。

許されるなら、また来たいとも思う。


レイル「そっか....そうだよな」


寂しそうに笑う猫は、私の胸を締め付けさせる。

いつも馬鹿みたいに笑って、理不尽な事に怒っている彼が。

レイルに、そんな顔をして欲しくない。


レイル「...分かった。なら、アマキをちゃんと届けてあげる」


ずっと待っていた言葉なのに、レイルの口から直接聞くと複雑な気分になった。


もう、会えなくなってしまう。

私をいつも助けてくれた、優しくて可愛い猫。

たとえその姿がコロじゃなくても、彼は私が大事にしていた猫だ。


猫と言うよりも、彼は男で。

こんな気持ちを抱いてしまって良いのかも分からない。

けれど、やっぱり私の中で彼は大事な人。


エマが彼を想っていたように、だ。


レイル「今度、一緒にユグドラシルまで行こう。俺はいつでも大丈夫だからさ、あんたの準備が整うまで....」


海希「レイル」


レイルの言葉を遮った。

それ以上は聞きたくない。

これも、逃げと同じなのかもしれない。


それでも、私の体は自然に動いていた。

彼に、そんな顔をして欲しくなかったから。

どんな時でも、笑っていて欲しい。


彼の唇に、自分の唇を優しく重ねた。

私より背の高い彼に届くように、精一杯背伸びをして。

私の中で疼く、このもどかしい気持ちの答え。


思い出すのは、鏡の城で見た映像。

レイルがイタズラだと言って、エマにキスをした時だ。


ゆっくりと離れてから、目を開ける。

二色の目と視線がぶつかった。

そして、私は彼に優しく笑い掛けた。


海希「...あなたが、好き」


そのキスで、魔法に掛かってしまったかのように。

私の口から、素直に出た甘い言葉。


お酒を飲んだせいか、大胆な事をしているのは自覚していた。

いつもの私なら、こんな事はしない。

私は、本当に馬鹿な女だ。


不器用で素直じゃない私には、これが精一杯だった。

せめてこれ以上、卑怯で可愛くない女にならないように、"嫌いじゃない"ではなく、"好き"だと伝えた。


エマも、そう伝えるべきだったのだ。

でも、この気持ちはエマのものではなくて、稲川海希のものでもない。

これは、今の"私"の気持ちだから。


彼は権力のある王子様ではなく、爽やかな王子様でもない。

でも、私も可愛いお姫様でもなく、心優しいお姫様でもない。


どんな話よりもメルヘンで、笑ってしまうようなお話。

だから、こんなおとぎ話があっても良いと思った。


レイル「...もう一回」


ガシッと肩を掴まれた。

一瞬、何を言われたのか分からなくて耳を疑った。

さっきまで大人しかったレイルの瞳に、既に悲しみの色はない。


海希「はっ!?」


私を引き寄せようとするレイルに、彼の胸あたりを両手で押さえながら抵抗した。

彼の顔が近付いてくる。


海希「ちょ...!!やめないさいよ!?」


レイル「もう一回!やっぱりアマキって、俺の事が好きなんだろ?抵抗する意味が分からないんだけど」


海希「意味が分からないのはあんたの態度よ!」


レイル「何言ってんだよ。ずっと我慢してたんだ、こんなんじゃ全然足りないに決まってんだろ」


こいつ...!!!


調子に乗っている。

さっきまでのしんみりした空気はどこへ行ったんだ。

げんなりだ。

やっぱりこいつは変態猫で、可愛くない。


海希「イタズラよ、イタズラ!!あんたを驚かせただけ!」


レイル「いいや、今のは本気だった!なんで嫌がるんだよ。それとも、そういう無理やりされるのが好きなのか?それならいくらでも付合ってあげるけど」


海希「馬鹿じゃないの?!この〜っ!!変態変態変態猫〜〜〜っ!!!」


レイル「恥ずかしがるなって!わっ、こら!!暴れるな!!!」


と、私はレイルの耳をすかさず掴んでいた。


弱点は既に分かっている。

彼は、私に怪我をさせるほど乱暴な事はしない。


それと、耳が弱点なのだ。

この弱点さえおさえておけば、彼を飼いならす事は容易い。


ちなみに、応用編はロイゼだ。

彼を攻略したいのなら、この点は確実におさえておくべきだろう。


こうして、長い夜が更けていく。

舞踏会が終わった翌日に、二日酔いに襲われたのは言うまでもない。


もちろん、ジャックは私以上に苦しんだであろう。





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