表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
征空の海鷲  作者: j
1944 出動せよ、瑞鶴戦闘機隊
PR
37/52

激闘マリアナ沖海戦 3

 しばらくの間敵は来ずに索敵機だけが空に舞うもやはり敵艦隊は発見できなかった。


 紅色に真っ赤な景色が広がる時間帯となり、瑞鶴から発艦した彩雲偵察機が脚をだし着艦体勢に入り大きなエンジン音を鳴らしながらゆっくり甲板に進入したその時、機体が急に斜めりそのまま片方の主翼諸共甲板に激突!前代未聞の事故である。ゆっくりなスピードだったので大事には至らなかった。私も心配になったので艦橋との衝突寸前と言う距離に停止した彩雲の搭乗員の救出に当たった。

 乗組員の頭から血が流れている。操縦士の怪我が特に酷く粉砕したガラスが頬を刺していて、まだ幼いくらいの顔をした女性パイロットは泣きべそかいて自力で脱出。


 この時一時間後に敵機数機が甲板掃射をするも戦死者はなく、瑞鶴に百発以上の弾痕を残して消え去っていった。だが攻撃を受けたからにはすぐに反撃せねばならないと大至急甲板に飛行機が並べられ、各機が発進を開始した。


 高度7000m。睡魔がどこからとやってきて私は悪魔に魂を吸われるかのように意識が遠のけて、「隊長!」と言う鼎の一喝に私は覚醒したかのように目を覚ました。搭乗員の恐ろしい部分は連続的出撃に休憩が取れずその場居眠りしてしまうことだ。

 私自身今回が初めてなので飛行機乗りのしてはいけないことにしぶしぶ反省しながら自分の頬を引っ張った。

 そうだ、チョコレートは目覚めの効果があるぞ!

 カフェインと言う成分が微量ながら入っていると言う噂なので私は座席下に保管した弁当をあけ、アルミホイルに包まれたチョコレートを口いっぱいに頬張る。


 美味い!!しかしコーヒーの味も少しする。

 戦友曰く、「ドイツ製のショカコーラという軍用チョコ」とどこから仕入れたか分からないけどとりあえずウマイ。そんな事もあれ全部食べ終えたとき、鼻から生温いものが流れ出て手袋で擦る。機内のライトで照らすと血が滲んでいた。鼻血である。

 ははあ・・。大量食いは良くないんだな。

 鼻に詰めるものもないので白いマフラーで口を覆う。


 彗星爆撃機10機、天山雷撃機10機、爆戦が10機、そして制空機を勤める零戦が20機が横一列の編隊を組み敵機動艦隊を求め空を飛んでいた。『彩雲偵察機敵艦発見。我に追いつくグラマンなし。南西に位置す』の入電と共に南を向いていたコンパスを修正し西へ機体を向け回るエンジンの音だけがこの夕日に響き渡る。

 日も暮れて薄く青黒い空間が広がり始め各機の姿が次第に見づらくなり、青い炎が短く伸びる艦上機の排気炎、水平翼から豆電球のように照らされる航空灯だけが頼りになり今まで経験してこなかった環境が今から始まろうとしていた。あの1941年の真珠湾攻撃、早朝の暗さではなく漆黒の闇が時間と共に迫ろうとしていた。


 夜間戦闘・・。一度もやったことはない。この状態、夜襲に慣れた人間ならまた話は別だろう。

 不意に撃たれる恐怖が今までにない以上に精神を蝕み極度の緊張に私は呼吸がおかしくなりそうだ。

 その時だった。完全に闇に包まれたマリアナ海の洋上に不自然に動く物体がすぐ右下、高度500m下にあり私は操縦桿を左右に敵機発見のバンクを通達。私を含む制空隊はすぐさま急降下しおよそ6機のうち最後尾の1機に薄く光る赤紫色の光学照準機に狙い入れ、銃炎で光る中に混じる曳光弾が生き物のように伸び敵機はたちまち鮮やかな炎を発火し、それを引っ張りながら編隊から崩れていった。撃墜である。しかし敵もやられる身ではない、視界も非常に悪い中で正確な射撃をし制空機の1機が爆砕した。周りを見渡すも敵がまったく見えない!

「これはまずいかもね・・」

 機体を操り、周りも見ても機影はどれも零戦ばかりで敵という形が見えずに次第にイラつきが沸いてきて次第には「制空隊は離脱しろ!邪魔だ!」と無線で一旦離れさせ私1機相手にする。だがこれには私自身の戦術である。

 敵戦闘機が私を取り囲み、四方八方と夜に描く赤い弾丸を線にし容赦なく撃ちまくってくる。相手の銃火にぱっと光る黄色いフラッシュに「突撃!」と指示したとき、霰のように降り注ぐ零戦の機銃弾が敵機の機体をボロ布雑巾のように成果て花火のように空中で爆発した。このままやっていれば私は死んでいたのかもしれないという気持ちのせいなのか手が細かく震える。

 自分は拒否しても体は正直者だから・・。


 全速力で攻撃隊を追うとあっけなく見つけ、何も無かったかのように浮いている。時間帯は19時近くでほぼ全体が真っ暗になっていた所、高度7000mからゆるく高度を落としていくと大きな綿飴の雲の底からわずかばかり小さな箱舟が見えた。ああ、奇襲か・・。安らかな天の光源が攻撃隊の見守るように小さく差し込んでくる。

『雷撃隊高度10m、現在敵の対空砲火を受けず。投下せよ』

 天山雷撃隊の無線に雲から顔をだした3隻の空母。小さな炎を吐き今頃対空砲を撃ちは放つも時すでに遅し。高度4000m、同高度で急降下爆撃をする彗星は弾幕を一直線に潜り抜け、敵戦闘機が居ないことを確認し我々も後に機首を海面向けて落とした。回転する速度計はすでに560km/hをきっており零戦は無理な高速に耐えられないのか今にも翼が折れるのではないかというくらいに軋む音が鳴っていた。スロットルを絞り少しばかりエンジンの動力を緩めさせ、機銃掃射の標的にする空母を目視で見計らった。ちょうど光学照準機1個分上に母艦が1隻、紅蓮の炎を舞い上がらせ炎上している。左手で機銃発射の杷柄を握り、引き金を指で倒した時、紐のように飛び出る曳光弾が流れていく。撃ち続けに敵艦との距離が迫ると発射された弾丸が甲板に跳ね返り空目掛けて一直線に消えていった。


 投弾し終えた彗星艦上機は離脱を開始し、3艦のうち2隻の空母が炎上していて攻撃を終えた友軍機を後に私は残る燃料をありったけ使うつもりで彼らを見届けようとする。もう1隻は飛行甲板に小さな5の爆弾跡を残している。

 鮮やかな色に染まる海面に油が浮いている。黒煙も立ち込めるなかに集結する駆逐艦や巡洋艦、そして補給艦が人員救助にあたりはじめていた。搭乗員や水兵達は水に浸される空母から必死離れているのを見て私は何だか申し訳ないような気持ちがした。


 この時増槽燃料はすでに放棄してあったので私は帰りの燃料分を使いアメリカ機動部隊を見届けながらその空域から離脱した。

 瑞鶴に戻るとき、私を歓迎するかのように甲板端にされたランタンが明るい黄色い灯火が無数にも繋がっていて、夜間着艦に対する不安も消え安心感が沸いた。


 速度160km/hを保ち、着陸フラップを展開。しかし風の抵抗で機首が下がっていくのでスロットルをオープンし機体を安定させた。

 よし、このまま行けば大丈夫。

 身を機体から乗り上げラダーを脚、機体の上下左右は腕と一心同体になり零戦は瑞鶴の甲板に見事着艦、着艦フックの反動で前に押し倒されそうになったが周りに集まってくる戦友達の歓喜の声にそんな事は気にしなかった。


「中隊長が帰ってきた!逝ったかと思いました!」

「バカ!私がこんな事で死ぬわけ――」

 遊言混じりながら機体から降りたときだ。視界が揺れて身体が重たい。上手く歩けないまま冷たい飛行甲板に倒れ、聴覚から通じるざわめきと視覚から見る黒いブーツが一面私の中に写った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ