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征空の海鷲  作者: j
1944 出動せよ、瑞鶴戦闘機隊
34/52

マリアナに向けて

 青黒い夜空の下、遠く見える星屑が小さく輝き、満月の光は夜道を照らし、私と帽子を顔で隠した従兵と一緒に横須賀軍港近くの砂浜を歩いていた。

「忠さんは以前どこに配属されたんですか?」

 鋭い目つきの瞳は輝かしながら「私は空母の機銃員として配属されました」と海のほうに身体を向けて言った。

「美貴さん。とても鮮やかな海ですね」

「そうですね・・」

 すると従兵は拳を強く握り、

「仲間の声が聞こえる・・!あの時、俺がヘマをしなければ。あいつはこんな事に」

「俺が甲板に弾薬を運ばなければあいつは撃たれずに済んだ・・!ミッドウェー海戦の時・・」

 気の毒に思う。私はどう答えれば良いかわからなかった。

「申し訳ないです突然・・変な事を」

「あ、うん。大丈夫だから、忠さん。でも自分を責めてはいけないです。仲間も見守ってるかもしれませんし・・生きて生きて戦い抜きましょう」

 怒りの顔を和らげた。小さな気持ちが彼に伝わったのだろうか・・。


 内地の温泉や旅行のひと時を楽しみあっという間に時期が過ぎ6月に突入。

 私が召集された答えは海軍総力でマリアナに突入しアメリカ機動部隊を叩き、防衛権を死守するものだと徒兵に教えられ、当てはまる単語に私は胸を高鳴らせ血潮が全身から沸きあがる。


 ラバウルに居た間の日本海軍はズタズタにやられていたらしくこの一戦で何とか戦いを有利に持ち運ぶと言うのだが・・。上手くいくのだろうか。

  ユウコはサイパン島の防衛のため空挺で援軍を送られる羽目になり一足速くこの内地から去っていってしまい奈緒子さんも同じに。

 徒兵に着かれた航空搭乗員は数が多く、守られている理由は体調面、内地に潜むスパイからの防護の為であった。

 しかし面白いことにそれで恋する人も多くないだとか・・。ふふ。


 我々の主力機動部隊は瑞鶴と翔鶴の大型艦2隻、特殊空母艦の大鳳、第二艦隊、空母隼鷹、飛鷹、龍鳳等・・。

 そして第一航空艦隊にミッドウェー海戦以来損傷した赤城、加賀、飛龍も参戦。残る数少ないベテランパイロット達がここに集まった。

 確かにミッドウェーでは敵空母を撃沈したと言う話は聞いたが・・、お約束の物量には負けてしまい、戦線も負け続けていた・・。


  横須賀から出向され、小笠原諸島で合流後にマリアナに向かい敵空母を叩く。

 ドッグから歓声高く上げられる声に我々もこの力で答えなければならない試練が待っている!


 ――大本営

「我々陸軍もあ号作戦に参加したい」

 数日前の大本営会議である。カーキ色の陸軍の衣類を来た陸軍将校の言葉に、ある海軍の将官が答える。

「空母は持っているかね?それに上陸する揚陸も、我々はマリアナ諸島の機動部隊を叩いての支援ですから」

「空母は無くとも、強襲揚陸艦ならある。そこから飛行機も飛ばせる・・。」と陸軍将校は口を寄せてつぶやいた。


「ほほう。ぜひお目にかかりたいものですな・・。さて、我々は敵の距離範囲外で敵を叩く戦法を取る意見があるのだが異議は」

「ある」大きく右手を伸ばした海軍少将が、

「アメリカ海軍には最新鋭のレーダー、VT弾という近接炸裂弾が備えられていて敵空母に行ったとしても爆撃隊がやられる。それに単純な戦法では駄目なのだ」

「まず第一航空艦隊が敵の囮となり、それに釣られている間に叩けば良い。だが問題の対空だ」

「もはやここは総力戦あるのみ・・。決死の覚悟で突っ込んで爆弾を切り離すほかは無いか?」


「ところでグアムとマリアナ諸島が占領、戦っていると言うのに海軍総力で突っ込んでもいいのかね?」

「基本小島が多く敵が欲しがるのは、テニアン、サイパン、グアムの三つです。正直諸島の個々は軍事的に不必要な地域です・・」


 彼らが悩む戦法は如何に・・。


<>

 ――1944年6月18日

『護るも攻むるも鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる 浮かべるその城日の本の 皇国の四方を護るべし』

 全速力、海の上を駆け走る瑞鶴甲板上では懐かしい潮の香りに、細波同士がぶつかって小山のように様に弾かれる海。あのラバウルの地が脳裏に蘇ってくる。

 水平線は明るい水色。私は千切れ雲を眺めていた。

 実はさっきまで彗星艦上攻撃機、天山、および零戦が敵機動部隊索敵のために発進した為、少なからず搭乗員の姿と水兵の姿はちらほら見えていた。


 しかし索敵に出撃させてくれないとは本当に悔しい!私は一目、敵機動艦隊の大部隊を見てみたいのに!

「隊長・・」

 どこか懐かしい声が聞こえて、私は後ろを振り向くと艦橋下に救命衣、緑のベルトを身につけ青い束髪を風に乗らした鼎が立っていた。

「鼎!」

「半年振りでしょうか!」

「ああ!」


 私は彼女のラバウルに関しての事を聞いてみると、260部隊の人間の少数戦死しており1944年に入って以来から米軍機襲来はこないも同然になりオーストラリア軍からの襲撃が頻繁となったらしい。

 勿論ラバウル航空隊もその名にかけて夜間空襲を行ったが戦果はそれほどでもない。

「知ってますか・・?あの彗星達のパイロット」

「ん?」

 鼎は急に不安そうな顔をし、

「彼ら達、飛行技術は習得したけど爆撃と雷撃訓練をまともに受けてないの」

 何だその事か・・。

「飛行技術だけでも十分立派なパイロットだ。爆撃が出来なくても彼らは還って来る」

 確かに爆撃と雷撃は心配だ。

 例えば急降下爆撃で機体が持てる速度とかそういったのと。



  しかし暗い話ばかりではなく明るい話をしているうちに、遠く聞こえる飛行機の音に私達は振り向くと機影が見えてきた。

 雛鳥が操る彗星はまだふらふらしていて、今にもどこか横転するんじゃないかと心配そうに私は見守る。


 着艦体勢に入る。安全のため艦橋の影に居ると、一番機、最初はタイヤの擦れる音と一緒に、機体は上へ小さく跳ねあがり着艦成功。

 その他、鼎が心配になっている面、彼ら達はそれを裏切るかのように上手にフックに引っ掛け着艦していたので、安心した。


 どこかと肩が解れる。

 しかしこうしている間にも敵は我々を探し続けているのだ。


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