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征空の海鷲  作者: j
1942 ようこそ、地獄の南方へ
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襲来

 高度3000m。

 周りを見張ると光の針が目に刺さった。

 4機で並ぶB25、自機から300m下、3時方向。


『美貴!何やっている!』

 はっと我に戻ると無意識に敵を眺めていた。

 操縦桿を握り右にガクっと倒し機体を滑らせ、先頭に飛ぶ1番機のB25を照準いっぱいに入れ込み、零戦に乗っけられた機銃の火砲を開いた。

 それと同時に、B25からの後部機銃は一斉に向けられながら撃たれる。


 敵の腹を抜け操縦桿をまた自分の引っ張り機首を天に向け、また新たな一撃を加えようとする。

 翼の付け根から黒い尾を引いている。

 20mmで墜とせる!

 宙に半回転し90度降下、双発のB25に20mm火砲から赤の捩れ紐のような弾丸が撃たれる。

 ジュラルミンの破片を飛ばすと閃光と一緒に炎を生み出しながらジャングルへと消えていく。

『上手いぞ、その調子だ』


 ユウコはあっという間に2機を撃墜していた。何たる鬼神。

 鷲の如く、敵を狩る姿は無駄の動きがまったく無いベテランに等しいくらい。

 残る1機は黒い物体を落下させ、旋回しようとしたそのとき、鼻の長い農緑の戦闘機が目の前で通り過ぎ、B25へ真っ先に降下!

 B25は瞬く間に火の海と化し空中で爆発し火の玉となった。


 例の陸軍の戦闘機は私のすぐ近くに寄る。細い機首に目を輝かせていた。

 きっと速いだろうなぁ・・。


 着陸後、すぐに海軍の哨戒機が飛び、冷水を一杯飲んだ後にユウコと共にドイツ製のBMW R75バイクで陸軍航空隊のココポ飛行場(海軍では南飛行場と読んだり)に着くと、立派で新品同然の鼻長戦闘機と大きな砲身が天に向けられた高射砲が堂々と聳え立っていた。

「うわあすごい」と口を溢すと「はは、まだ小さいほうだよ。特にこの高射砲陣地はね」とユウコは笑うように言った。

特に?気になる点だけどまぁいいや・・。

 海軍は艦船の高角砲もあるから陸軍には負けないぞ。


 ラバウル飛行場は東西南北と存在している。

 その中の北と南は陸軍、西、東は海軍が所有していてる。

「お!ユウコ少尉だ!」

 と一斉に数人の若い男性パイロット達が駆け寄りご無沙汰や、色々と挨拶を交わしていると、空で見た女性が歩いて近づいていくる。

「やあ。海軍の子」

 と陸軍敬礼しながら笑顔満載にしながら挨拶をくれた。

 階級も高そうだったので、背筋伸ばし、海軍敬礼。

「赤城美貴一等兵曹です!」と私は大きな声で名前、階級を言った。

「ははは」と大きく髪を揺らして大笑い。


「そんなに堅くならないで。リラックスリラックス」

 ここはそんなに厳しくなさそうかな・・。


 と、ここで髭を生やし、如何にも厳しそうな面をした陸軍将官がこちらを数秒睨んだ後にまたどこかへ去って行った。

 ユウコの案内と共に陸軍の基地の中を色々見てみると海軍とはさほど変わらないような感じがするけど掩蔽壕などの施設関連は立派な出来。

 指揮所内に案内されると研究本らしきものを渡されたので、

「これは何ですか?」と奈緒子さんに問うと、

「敵機研究本。今まで戦った戦闘機、最近見た戦闘機を絵や写真にしてここにまとめてるの。最近だとこのP-51C、P-47・・。あとF6F、SB2C・・」

 ページをめくり色々教えてくれる。 

 特にF6Fと言う戦闘機、鉛筆でわずか一行のメモに目が行く。

"軽戦闘機を上回る性能・・"とだけ書いてある・・。

 何だろう、残念だなぁ・・。

 他はこと細かく書いてあるけどこれだけ少し。

「これは先日来たばっかり。まだ研究中だからね」

 二人と共に指揮所を後に。

 大きな戦車が数両と小さな戦車が数両、まるで親子の背のように密林の中に隠されている。

 しばらく歩き回り木陰の下で地べた。軽い休憩である。

 ユウコは将官の呼び出しでいないので空の陸兵さんと二人っきり。


「どう?乾パンと金平糖。お腹空いたでしょ?」

 グーっと腹は鳴いた。体は正直である。

「お言葉に甘えて・・」と言いながら缶に入った乾パンを口に一つ入れ込み噛み砕く。

 味はいたってパンの味。そのままパンを固くしただけ。


 しばらくは持ちそうだ。


「私は東条奈緒子・・。陸軍中尉、よろしくね。あっ前にも言ったね。ん・・?」

 指をさしたところに目が走る。

 広々滑走路に緑のテントと戦闘機が目の前に、プロペラが激しく回転していた。

 その風力と共にテントは突風にのった布のように大きく吹き飛ばされ、砂埃も同じ様に舞った。

「へん!バーカ!参謀は内地に帰れ!」


 笑いと共に混じった飛行場になると、プンプンした陸軍将官が顔真っ赤にユウコの背を捕まえようと走る。

 鬼ごっこのような感じだ。

 これに思わず私も軽く吹いてしまった。

「相変わらず、ユウコのイタズラは懲りないねえ」

「ああ言う無能上官に対してのイタズラはいつもの事だから・・。あ、真似しちゃダメだよ?」


 さすがに私はしないと、「は、はあ」と済ませ怒鳴り声と笑い声の渦になる陸軍飛行場を後に、私はラバウル東飛行場へと戻るのであった。


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