散る者
ガダルカナルの戦いは長引きそうで帰還した直後、すぐに兵舎に戻って私はベッドの中で睡眠をした。
当然だ。
こんな長距離飛行、馬鹿げてる。
あんな島に何百隻との艦船を集結させて上陸する敵も狂っているよ・・!
私も狂っている・・私も・・。
翌日。
ラエの航空隊は数少ない戦闘機、爆撃機でスタンリー山脈を越えてポートモレスビーの敵航空基地を爆撃するもやっぱり物量で負けて、何の成果も残せなかったと私は飛行隊長が愚痴って聞いたのを指揮所で聞いた。
物量で負けるって・・。
壊しても壊しても補充されるから・・。
今日もガダルカナル島攻撃に向けて、搭乗員割が書き出されて私の記入も含まれていた。小隊長の(^)と言う記号を頭文字に・・。
現上空はガダルカナル島。
空から見て何の変哲もない緑の島。
でも水面を引っ張る白線がよーくみえていた。
地上に降りれば過酷な環境を持っての戦いがある。
できれば降りたくない・・。
零戦10機、陸上攻撃機5機と今回は少ない編成で同じ様に物資投下と輸送艦打破を行った後、旋回しラバウルへと来た進行方向へと機首を向けて青い海を眺めた。
今日も敵機なし・・。
無駄な燃料に体力・・。なんだか馬鹿馬鹿しくてしょうがない・・。
爆撃機乗りならこの仕事、とても遣り甲斐があるだろうけど戦闘機のりとしてはそうでもない。
突然、鼎が中隊の先頭に入り込み翼を振ってバンクした。
敵機!きたな!
全体的に知らせると零戦隊たちは敵機に気づき一目散に散っていく。
操縦桿を急旋回して、機体を旋回させると物体がすばやく落ちていった。
「あっ!」
黒い尾を引いた零戦があった。私の3番機だ。
敵機に食らいつかれてる!
後方から狙おうとする敵に一斉に機銃発射機を押し倒した。
すさまじい振動に、曳光弾が敵機の垂直尾翼に吸われていきパッと炎を吹き出しながら墜落していく。
護衛するはずの一式陸攻を後回しに、私は3番機に近づいた。
3番機は顔をだして「燃料タンクをやられた」と手で指し「私はもう駄目です」と顔を振った。
エンジンはラバウルまで行けるくらい勢いよく回っていたが銀の胴体につく黒い燃料が漏れている。
「馬鹿・・!自爆なんて許さないぞ!」
いくら持つだろうか。どうしても私は死人を出したくない。
この大空戦を抜けてでも彼をラバウルに帰らせたい。
後ろから突然何かが光って後ろを振り向くと、濃緑の零戦三二型、2番機の鼎が後方についていた。
敵機を撃墜したんだ。
「私と一緒に戻るぞ」と手真似で伝えるが3番機は「戦います」と手で言う。
燃料を噴出しているのに戦うなんて馬鹿なことを・・!
小隊長の使命で犠牲者は出したくないが、彼はまた「戦う」と言い、私はその頑固に負けて「わかった」とハンドサインを送った。
小さく頷いた。果たしてこれは本当に良かったのだろうか・・。
鼎は私に近づき「彼を守ります」と手で伝え、小さく私は頷いた。
敵と味方が争いあう波のに突っ込む。
敵と味方は夢中になる。
視界に胴体が大きい、敵機が入ってくるとすぐさま20mm機関砲を撃ち込むと、一瞬にして敵機は粉々に爆砕した。幸いにも当たり所が良かったのだろうか。
しかし後ろから大きな赤い紐が放射状に飛び、操縦桿を素早く左に倒し急旋回。
「鼎と3番機は大丈夫?」と思い後方を見渡した。
3番機が敵機を追っ払っていた。あの無茶な機体で。
鼎は3番機後方についてこれを援護していた。
しかし大空戦はあっという間に終わった。
この時1機撃墜で終わり敵は一目散に去っていっていく。
少し肩の力が抜ける。3番機を失わずに済むと。
零戦隊はこのままラバウルに帰還しようとし、ガダルカナル島を背にしてニューギニア島に向けて飛行機を飛ばした。
しばらく飛行して夕方の頃。
正午過ぎにラバウルを飛びだったので辺りはすっかり茜色に染まっていた。
真横に居るはずの3番機が居ない・・。後ろを振り向くと、3番機のエンジン周りが悪くなったのを目にした。
スロットルを絞り彼の真横へ。
「もうすぐだ、がんばれ」
目の前に見える掌サイズのニューブリテン島が見えた時、轟音と機銃音が混じった様な音がすぐ近くで起きた。
目の前でバンクを振る2番機鼎。
あっ!
突然の出来事に私は唖然とする。
なんと3番機は翼の付け根ねから火を噴出しそれを引っ張りながら飛行をしている。
意識はあるのか、腕を曲げながらグーのこぶしを見せ付けた途端、曳光弾混じる敵弾が彼の真上から降り注ぎ、3番機零戦は瞬く間にボロ布のような姿へと変わり赤い海へと一気に急降下吸い込まれていく。
そんな・・山本・・!
胸に針が刺さる。とても痛い。
私が予科練で叩かれた精神棒より・・!
熱い涙をこぼし3番機を撃った敵を追撃した。
お前か!山本を殺したのは!
あの殺気が伝わる。敵機は上昇すると私も機首を上げ光学照準機の十字を敵の姿を入れ込み、機銃発射機を倒そうとしたときだ。
黒猫ノーズアート平然と入れて、日本軍撃墜数がよっぽどあるのか機体が赤く見える。
血を吸う猫め・・!
あいつが彼を殺したという事実にますます悔しさと憎しみが、抑えきれず20mm機関砲、7.7mm機銃に怨みを込めてぶっ放した。
顔が見える。
彼は笑っていた。
『小隊長!危険です!』
私は鼎の声に我に戻るとラバウル飛行場から遠く離れていて、無意識に地獄猫を追っていた。
もう敵の姿は無かった。
『隊長・・』
鼎の微かな声。しかし彼女は泣いていた。
私もだ。
声も出ない私は赤い夕光を浴びラバウル飛行場へと戻へと戻る。




