第7話「獅堂グレン、参戦」
銀河連邦設立から数週間、レンは各文明との調整に追われる日々を送っていた。
「零崎殿、辺境星系にて、機械文明の急襲があったとの報告です」
ヴェルミナが、緊迫した表情で報告する。
「急襲? 虫族連合の残党でしょうか」
「詳細は不明ですが、既に対応は完了しているとの一報が入っています」
「完了……? 誰が対応したんですか」
「それが……単独で敵を殲滅した人物がいる、とのことなのですが」
レンは、困惑しながらも、現地への視察を決めた。
到着したレンたちを待っていたのは、真っ二つに斬り伏せられた敵艦艇の残骸だった。
「これは……エネルギー兵器の痕跡がない。物理的な斬撃だけで、この装甲を?」
ガイウスが、驚愕の表情で装甲の断面を見つめる。
その時、瓦礫の山の上に、一つの人影が立ち上がった。
「獅堂グレン。剣一本で、隣の異世界の大陸を丸ごと獲った男だ」
長い黒髪を後ろで束ねた、着流しのような戦闘衣の青年が、あっさりと自己紹介をした。
「あなたが……」
「銀河中で噂になってる、“道具だけで宇宙を獲った”ってのは、お前か」
グレンは、レンを見据えながら、興味深そうな視線を向けた。
「い、いえ、その、俺は別に……強くなったのは道具であって、俺自身は」
「はっ」
グレンは短く笑った。
「剣一本で大陸を獲った俺と、道具を強化しただけの奴。同じ土俵に立てるわけがねえ――そう言おうとしたんだがな」
彼は、近くに転がっていたドローンの残骸に視線を落とした。まだ微かな出力反応が残っていることに、僅かに目を見開く。
「……こいつ、まだ動こうとしてやがる。命令もねえのに、勝手に“守ろう”としてる」
「なあ、道具野郎」
「れ、レンです」
「レン。お前の“強さ”ってのは、いったい何を強化してんだ? それを使う奴の“覚悟”まで、強化してんのか」
その問いに、誰もすぐには答えられなかった。
「まあいい。今日のところは様子見だ」
グレンは刀を肩に担ぎ、踵を返す。
「己の力で強くなった俺と、道具を信じて強くなったお前。どっちが“本物”か――いずれ白黒つけようや」
その背中が去った後、ヴェルミナが静かに呟いた。
「……厄介な人が現れましたね」
「ああ」
ガイウスが、刀傷だらけの装甲を見やりながら頷いた。
「レン、お前ならどう強化する? あの剣を」
レンは、しばらく黙り込んだ後、ぽつりと答えた。
「……多分、俺には強化できません。彼の剣は、彼自身がもう、限界を超えてるので」
この出会いを機に、獅堂グレンという、これまでとは全く異なる価値観を持つ強者が、レンの物語に、新たな彩りを加えていくこととなる。
(第8話へ続く)




