第二十二話 心霊体験
中学時代の悪友、永士。
俺と永士は、サッカー部の顧問と大喧嘩をした事もあり、その後、ゴリよしにあの世へ連れて行かれそうになるほど怒られた事もあった。
高校に入ってからも、永士とは時々電話で近況を話す仲だった。
俺たちが中学生の頃、大昔から先輩たちが使っていた「タバコスポット」があった。
大きな石碑があり、学校側から見ると裏側に隠れられる。
すぐ横には自転車置き場と駄菓子屋があり、俺たちにとっては憩いの場所だった。
そんなある日、永士から電話がかかってきた。
電話越しでも分かるほど、様子がおかしい。
まるで青ざめているような声だった。
実は、永士は昔から異常なほど霊感が強いと言っていた。
一人で土手でタバコを吸っていると、煙がぐるぐると自分に巻き付いてきたり、竹藪で人形のようなものに追いかけられたり。
部屋に置いてあったヘルメットの中に顔が見えた事もあるらしい。
とにかく、不思議な体験には事欠かなかった。
その日の電話も、そんな話だった。
いつもの憩いの場で、一人タバコを吸っていた永士。
何かむしゃくしゃしていたのか、近くにあったプランターを蹴り、壊してしまった。
その時、軽く足をぶつけたという。
そして、その日の深夜。
丑三つ時。
足の痛みで目を覚ました永士は、金縛りにあっていた。
なんとか顔だけを動かし、足元を見る。
すると、そこには日本兵の姿をした男がいた。
男は、銃のストックで永士の足を叩いていた。
昼間、ぶつけた場所と同じところを。
永士の話では、その男は夜通し足を叩き続けていたという。
俺も仲間も、誰一人知らなかった。
タバコを吸い、たまり場にしていたあの場所。
自転車置き場やバス停のある、ただの憩いの場だと思っていた場所。
あの石碑は、慰霊碑だった。
この土地から戦地へ赴き、命を落とした人たちを慰めるための場所。
鎮魂の場だったのだ。
永士は壊したプランターをできる限り元に戻し、手を合わせて謝った。
後日、話を聞いた俺も、
「永士を許してやってください」
そう言って、慰霊碑に手を合わせた。
永士の足には、その時できたアザが残ったという。
本当のところは分からない。
ただ、知らなかったとはいえ、亡くなった人を粗末に扱ってはいけない。
俺たちにとっては、そんな教訓を残した出来事だった。




