表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異国の扉の海の日の  作者: うず
18/18

18:たとえば、あなたがいるだけで

「コーラ!DD!無事だったか!」

 部屋に入ってきたコーラとDDを、セインは二人まとめて抱きしめた。

「来てくれてありがと、セイン」

「心配かけてごめんね」

 少し大袈裟かとも思いながら、DDは体をセインにすりよせた。コーラも盛大にぐりぐりと頭をセインに押し付けている。あとから入ってきたジン・ルファスとカノメ・カジカの目もある。やりすぎくらいがちょうどいいか。

「どこにいたんだ」

 大きな声で問うセインの意図を汲んで、DDは逡巡しているポーズをとる。

「うん…」

「どうした?」

 心配そうに眉をひそめたセインがDDの顔をのぞきこむ。

「大丈夫だ。何か理由があってここから離れたんだろう?事情があってとった行動をとがめることはない」

 聞きなれたセインの声に、思いがけず目の裏が赤く染まりかけて、DDは慌ててうつむいた。

 本当は、不安だったのだ。

 最善を選んだつもりでも、予期せぬ結果を招く可能性はあった。

 その責任も全部自分が負うつもりではいた。覚悟はしていた。それなのに、頼れる相手が現れた途端、糸が切れてしまいそうになる。

 国を離れた時に決めたじゃないか。ここで子どもに戻るわけにはいかない。

 一度強く瞼を閉じる。そして答えようとしたとき、

「もう、私が限界だったの」

 隣のコーラがセインにすがりついた。

「ここにいたくないって、どこかに連れてってって、DDにお願いしたの」

 瞳を潤ませて訴える。

「そうか」

 セインはコーラの髪を左手で撫でて、その頭頂部に小さなキスを落とす。それから、DDの腰に回している右手に軽く力を込めてDDの注意を引いて目を合わせると、口の端をぎゅっと広げた。DDの大好きな、目じりの皺が現れる。

 目が笑っていた。いたずらっぽい光を宿して。

 それだけで、気持ちがぐうううんと上向くのを感じる。我ながら単純だと思いながら、DDもえへへと笑った。体に回された太い腕が、何よりも自分を安心させてくれる。

 大切なのは今とこれから。たらればには意味がない。自分たちの行動が、今この現在をつくっているのだから。

「結果オーライか?」

 少し離れたところにいるジン・ルファスとカノメ・カジカには聞こえないような声でセインがささやき、DDはこくりと頷いた。

「この国に伝手ができた。信頼できる人も見つけた」

 少し背伸びして、セインの耳元でささやく。それから踵を元に戻して、きっぱりと言った。

「どこにいたかは、人の迷惑になるから言えない。でも、気分転換にはなったし、それに」

 部屋の入り口で立ち止まったままのジン・ルファスとカノメ・カジカに向かって言う。

「あの人たちが環境の改善を担保してくれたからね」

 セインの前で念を押す。別に疑っているわけではないけれど、言ったことは守ってもらわないと。

「そうか」

 目尻を下げて笑みを浮かべたセインが優しくて格好良くて、DDはもう一度えへへと笑う。そんなDDをコーラが笑った。

「その顔。デレデレしすぎじゃない?」

「いいんだよ、DDはこれで。可愛いだろ?」

 そう言ってセインはDDに回した腕に力をこめると、またコーラの頭のてっぺんに唇を寄せた。

「大丈夫、コーラも同じくらい可愛いから」

「そんなこと言って。騙されないんだからね」

 わざとらしく身をくねらすコーラがおかしくて、DDは素で笑った。いつもの気の置けないやり取りがDDの顔を輝かせる。

「ルファスさん、カジカさん」

 ひとしきりいちゃいちゃしたあと、セインは立ち尽くすジンとカジカに声をかけた。背筋を伸ばして胸を張ったセインからは、今までと違った引き締まった空気が流れ出て、対峙する二人の表情がにわかに緊張する。

「大事な子たちが無事に帰ってきました。それが一番大切なことです。DDたちがどこにいたかは詮索しないでやってください。いいですか?」

 口調は丁寧だが、有無を言わせる有余はなかった。

「わかりました」

 ジンも堅い声で答える。

「今回のことは、これで終了ということで」

 コーラとDDを抱え込んで、ジンは宣言した。

「はい」

「あなた方は改善してくださると言った。それを信じて私は明日戻ります。国へは特に報告はしません。二人は無事で、ことさらに取り立てるべき問題はなかったと」

「…ありがとうございます」

「コーラとDDをくれぐれもよろしくお願いします。もちろんアールのことも」

「間違いなく、お引き受けします」

 ジンの答えを聞いて、セインはまた、二人をぎゅっと抱きしめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ