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聖獣の庭、あるいは忘却曲線  作者: 蒼乃モネ
第五章 砂漠の薔薇、昔噺は砂に眠る
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第19話 詩人の語り・王都の内情について

 セインベルクは、今や国軍と化したローヴェラス騎士団によって成り立っていると言っても過言ではない。王政は、形骸化した。

 なぜって、王が病床に伏しているのさ。もう長くないと噂されている。

 次なる王と目されていたのが、セシリア・ハイネル王子だ。若くしてたいそう聡明で、美しい。

 僕のような流れ者にまでお声掛けくださるのだ。同じ場所に留まろうとしない僕が、王家に仕えると決めたのも、それが由縁。

 しかし、ケイト王子から聞き及んでいるかもしれないが、セシリア様までも倒れられた。表向きには、脳の病とされている。しかし、医師もお手上げ状態。

 おしゃべり好きの宮廷貴族たちの間では、王位継承をめぐる陰謀説も流れている。我が国の此度の混乱は、彼らが助長している。王という圧倒的統率者のいないなかでは、既存の兵士の士気はだだ下がりだ。

 丸腰の元老院たちは、泣く泣くローヴェラス騎士団に国の守護を丸投げしているのさ。権限もどんどん騎士団に掌握されている。

 上流階級の者はみな、自分たちの立場を守ることに必死なのさ。次期国王候補として最も有力なセシリア様の回復にかけるか、早々に見切りをつけ、他の継承権のある者に肩入れするか。

 数名いるにはいるが、どうもぱっとしない。その点、ケイト王子は醜い争いからはさっさと身を引いて、文官として特別な地位を得ている。賢いと思うよ。将来は、事務次官殿かもしれないね。

 おっと、政治の話は僕の専門外だ。聞き流してくれたまえ。


 しかし、軍部—例の騎士団の支配などかわいいものさ。野望などたかが知れている。金と権限を増大させ、組織拡大を目指すのだろう。やっていることは王国と変わらない。

 さらに気味の悪い動きが別にあるのだ。

 すべての糸を引いているのは、王都中に巨大ネットワークを築く第三者たちと聞く。目的がわからない分、不気味だ。彼らがどの程度の勢力であり、いつから我らがセインベルクに居着いたのかはわからない。今のところ、新手の信仰集団だといわれる。

 謎が謎を呼んでいるのだ。つい最近まで国民として普通の暮らしを営み、溶け込み、そうして突如として名乗りを上げたのだから。

 しかし、まぁ、僕が知っているだけでも粒ぞろいに有能な者ばかりだ。

 王宮で職に就いている者のなかにもいる。

 そして、だ。奇妙なことに、その者たちは次々と魔獣使いに志願し始めた。

 彼らは、騎士団にも多数入り込んでいるのだ。騎士団は、力ある者を拒まない。


 彼らのことについて、聞きたいと?

 そうだな、身体的特徴と言えば、みな身体のどこかに火傷の跡を負っている。それはタトゥーのように模様を描きながら刻み込まれ、僕はそれを不承にも美しいとさえ思ってしまった。

 それを彼らは自分たちが単一民族である証だと断言するのだ。

 しかし、それはあまりにも現実味がない。どうして歴史書に記述のない彼らが突然現れたのかという説明がつかないからね。

 そこで、先ほどの信仰集団説を採用するならば、何やら危険な入信の儀式でもとり行われているのではなかろうかと。それならば、つじつまが合うからね。本当だとしたら、狂気の沙汰としか思えないのだけれど。


 ああ、彼らが自称するコミュニティの名?

 ―たしか、「オレガノの民」と言ったよ。

 

 ああ、ロゼ君どうしたんだい。急に飛び起きたりして。安静にしていなくちゃならないよ。

 おや、ハーク君もおかしな顔をしているね。何か思うところでもあったのかい。

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