第11話 決戦
ある程度騒ぎが収束した都市中心部では、衛兵たちが右往左往する人々の誘導にあたっていた。
「ロゼ、ご無事で何よりです」
「あなたも、と言いたいところだけど、怪我がひどいわね」
「魔のものたちとは相性が悪いのです」
しばし共闘していた、これまた魔獣のラピスラズリをちらりと見た。
「それ、嫌味かしら?あなたの大事なロゼを囮にしたのは悪かったわよぅ」
この聖と魔の相反する召喚獣たちは、魔女の呼び起した巨大な魔獣相手になんとか奮闘していたのだが、拮抗状態が続いた。
そして、あるときにふっと消えてしまった。
「転移しただけだと思いますよ。魔女に呼び戻されたのでは」
「それ、ケイトたちが危ないかも。ハーク少年も一緒よ」
ラピスラズリは、背の翼を大きく広げ、ふわりと宙に舞った。
しかし、ふと思い留まったように、再び降り立つのだった。
アルフレッドはケイトたちが向かった方向に、首で促した。
「どちらにせよ、ケイト殿が呼び戻すのでは」
「もうそっちの力を使えるだけの余力が残ってないわ、あのこには」
そう言いつつ、ロゼの簡易的な手当てを受けるアルフレッドの隣に並んだ。
ロゼは、続いてラピスラズリの毛にこびりついた泥や血をふき取りながらつぶやいた。
「悲劇ね。貴女が言ってた、魔術の召喚は主人の生気を奪うっていうの」
「本来なら、召喚主はそれを承知で、その身と引き換えに力を得るのがお約束なのよぅ」
そういいながら、少しでも主人の力を浪費しないために目を閉じて大人しくしているのだった。
一息ついたロゼは、額の汗を拭う。
「アルフレッド、いまのあなたに行けとは言えないけれど。ハークは大丈夫かしら」
「今夜はお手並み拝見と参りましょう。貴女の騎士様が見込んだお弟子さんなのですから」
広場より場所はとんで、街のはずれ。
東の高台では、無理やりに召喚されたばかりの魔獣が、その巨体をよじらせてうめいていた。
つい先ほど、アルフレッド達から受けた傷は、確かに苦痛として魔獣の動きを鈍らせていた。
「許さないわ、許さないわ、簒奪者!」
マーティアは、魔獣をけしかけては、必死の形相で叫ぶのだった。
「ったく!どこから湧いてくるんだよ、あの気力は!」
ハークは、素早く鞘から剣を抜き、構えた。
「おい、おまえも!今の会話で聞きたいことは山ほどあるんだ!まだ倒れるんじゃないぞ」
少し前からケイトの覇気の薄れた様子に気づいてはいたのだった。
あれから片割れの召喚獣が、持続的に力を使っていたのが効いてきたのだろう、と。
「お前には関係のない話だ。たまたまこの街に居合わせたのが運の尽きだったな。せいぜい役に立て」
ケイトも大弓を構えるが、魔獣の首筋にばらばらと刺さったままの矢を見て、舌打ちした。
「聞け。奴は固い。俺の矢では、貫ききれないだろう。だが、足止めくらいにはなる」
「わかってる。俺があいつを仕留める」
ハークは、汗ばんで冷えた手で柄を握り直した。




