第11話 魔王杯の前日、それぞれ、それぞれです。
ー王宮 牢屋ー
うすぐらい牢屋に 石段をコツ、コツ、と降りてくる音が響く
看守と宰相が三太郎の入っている牢屋の前に来て
看守 「中のヤツ出ろ 釈放だ!」と言って牢屋の鍵を開ける。
宰相 「王様がお待ちだ ついて来い」
三太郎 「はい」と言って牢屋を出る。
三太郎のとなりの牢屋に入っていたのはボーンヘッドのアサジエ
アサジエ「看守さん 私はまだでしょうか?」
「面会や差し入れは来てませんか?」
「ねぇ看守さん」
宰相 三太郎 看守 が無言でアサジエの牢屋の前を歩いていく
ー王宮 謁見の間ー
王様と三太郎のみ 宰相も一緒にということだったが王様が断り
廊下で聞き耳を立てている宰相
王様 「三太郎 牢屋から出すの遅くなって すまなかった」
三太郎 「いえ大丈夫です 2度目なので」
王様 「2度目?」
三太郎 「いえ 気にしないで下さい」
(危ねぇ 転生してきたのが牢屋だったなんて 言えねぇし)
王様 「正直に言う あの恐ろしい兵器 お前は何に使うつもりだ?」
三太郎 「使いません いえ、使いわしますが脅しまでです」
「あくまでも巨人族の代わりの抑止力として」
王様 「三太郎 信じて良いのだな」
三太郎は頷く
廊下で聞き耳をたててる宰相
宰相 「2度目? 兵器? 抑止力? 何の話してんだ???」
三太郎が扉を開けると ボコ と言う音とともに倒れる宰相
三太郎 「大丈夫ですか?」
宰相 「大丈夫だ!」と言って何事もなかったように消えていく宰相。
ー王宮前広場ー
人々は翌日の「魔王杯」の話題でもちきりだった。
チキン自称伯爵は王宮前広場で屋台を出している。ひとだかりの山
魔王杯の賭けの胴元となり一儲けを企んでいる。
チキン 「さあさあ!明日の魔王杯 一儲け したいヤツは、集まるザンショ!」
「人類勝利に賭ければ1.2倍!魔王軍勝利なら5倍ザンショ!」
「魔王軍の方が下馬評では強いが、わたしも人間 期待を込めて人類を本命にしたザンショ」
(魔王軍が勝てば、その時は人類は全滅。払い戻す必要もないザンショ!)
(なんて、おいしい賭けザンショ)
市民A 「おれは人類に有り金全部」
チキン 「はいザンショ 有り金全部で銀貨3枚?」
市民B 「じゃ、おれも人類に銀貨5枚」
チキン 「はいザンショ」
チキン 「魔王軍に賭ける奴いねーザンショ! 大儲けするチャンスザンショ!」
市民C 「おれも人類に金貨1枚」
チキン 「はいザンショ」
チキン 「これじゃ賭けにならないザンショ」
「オッズを変えるザンショ 人類勝利に賭ければ1.1倍!魔王軍勝利なら なんと10倍ザンショ!」
市民D 「それでも人類に銀貨10枚」
市民E 「おれも人類に銀貨8枚」
チャリンチャリンと お金が飛び交う。
ー王宮 兵士用室内練習場ー
体育館のような空間
マリアがひとり 黙々と練習している。一太刀ごとに汗が飛び
三太郎がマリアを見つけ(相変わらずキレイだな……)
三太郎 「マリアちゃん これ……」
マリアは三太郎のもとに走って来て、ビシッ!バシッ!と往復ビンタ
マリア 「だから ちゃん と言うな!」
「ここでは誰に聞かれるかわからん 恥ずかしいではないか」
三太郎は頬に手を当てて「あの これプレゼントです」と袋を渡す。
マリア 「なんだこれは?」
三太郎 「王様に聞いたよ 明日大切な試合があるんでしょ」
「おれが持っていても宝の持ち腐れだから 街に来るついでに持ってきた」
「対抗戦なんて、王道少年マンガみたいだね」
マリア 「なんだ? その王道少年マンガとは???」
三太郎 「友情・努力・勝利だよ! 頑張って!」
マリア 「???」
マリアは袋を開け 中を見るとお宝のS級武器の3倍高速剣
マリアは剣を持ってみる「長いのに軽い しかも綺麗な剣だな」
そして剣をおもむろに振ってみる「なんだこの剣は、もの凄いしなり」
何度か振ってみる(早い!3倍高速剣という話だが、いつもの剣より軽いため 3倍以上出ている 腕が勝手に動かされているようだ)
「うむ、ありがたくもらっておく」
三太郎 「それでさ……代わりといっちゃなんだけど、大トリをちょっと貸してもらいたいんだけど」
マリア 「貸すのはいいが、三太郎殿 ひとりで乗れるのか?」
三太郎 「とりあえず 急がないとならないから 死に物狂いでしがみつくよ」
マリア 「そうかわかった。 この剣の礼に、私の大トリを貸し出そう」
ー王宮の裏門ー
大トリに乗る三太郎
三太郎 「明日、応援に間に合うかわからないから とにかく、がんばってね」
「じゃ借りていくね マリアちゃん」
マリアが大トリの尻をバシッと叩くと、勢いよく走り出し
三太郎 「うわわわわわわわわわわ……」
出発から死に物狂いで、大トリにしがみつき消えていく三太郎
マリア 「ありがとう三太郎殿 明日は全力を尽くして頑張ってみせる」
ー王宮 騎士団長室ー
騎士団長はボードの前に立ち チョークを使い 書き込んでは消し
あーでもない、こーでもない と、一人 部屋で作戦を練るのであった。
ー冒険者ギルドの裏 修練場ー
ところせましと 弓矢の的、リング、サンドバック、バーベル等が転がっている。
荒くれ者達が使っているだけに汚い。
数人の冒険者が汗を流す その中に上半身裸のエースがいる。
エースは日課となる練習を黙々とこなし
練習の合間に大ジョッキーで山羊乳を飲む 口の周りに山羊乳のあとがくっきり
エース 「ふ……明日の俺は今日の俺より強い。だが、明後日の俺には敵わない」
エース練習を止めて「ん! すると明後日の俺はどんだけ強いのだ?」
エース 「よし!明後日の俺よりも強くなってやる!」と言って練習を再開する。
まわりの冒険者(何考えてるんだか……)と冷たい目線
ーイースト・ドラゴンズ・バレーから近くの山にある温泉 夕暮れー
木々が赤くなり 今まさに日が沈もうとしている。
ギルドマスターは温泉につかって体のケアーに努めていた。
ギルマス「はぁ~、極楽極楽 温泉でお酒は最高だぜ!」と言って酒を飲む
「エースのヤツも来りゃ良いのに。いまさら練習したところで何も変わらない」
「試合前日は 練習より体のメンテナンス 当日100%の力を出せるようにしないと」
「あいつは抜くところは抜くという そういうところも勉強しないとダメだね!ハハハ」
湯から上がる時に足を滑らせ、ヒザを打つ
ギルマス「あててて……ヒザがー 俺のヒザがーーー!」
ーボーンヘッドのアジト 夜ー
テーブルがあり 椅子に足をクロスにして座るアクジョ 向かいにショウワがすでに席についている
ドアからアサジエが入って来て席に座る。
アサジエ「アクジョ様 出所祝いでもしてくれるんですか?」
アクジョ「もう私も30 この際、冒険者を辞めて国に帰ろうと思う」
アサジエ(確か40才 近かったハズだけど……)
アクジョ「勝手で悪いが、今日を持ってボーンヘッドは解散する!」
アサジエ「え!!! アクジョ様!!!」と言ってアクジョにしがみつき大泣き
アクジョの服が涙と鼻水ででベタベタになっていく
アクジョも涙を流しながら「ホントしょうがないねぇ」
二人から少し離れ ショウワは寂しいが、ひとりだちの時だと思い。
ショウワ「昔 お二人に助けてもらって 今、自分はここにいます」
アサジエ「あー、あれ 本当は俺達がミスして……」
アクジョ「バカ それ言うんじゃないよ!」
・・・実際はアクジョとアサジエがミスし たまたまショウワは巻き込まれただけで 助けたワケではなかった・・・
アクジョはショウワの方を見て、不器用に笑う。
「ショウワ あんたは私達と違って本物だ!」
「すぐにCやBランクぐらいの冒険者になれるだろう がんばんな」
ショウワ「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
部屋を後にし、ドアを閉める。
部屋からは二人の鳴き声が漏れる。
ショウワはドアの前に立ち 目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
ー王宮 王の部屋ー
王様がタンスを開き、何点か出し 全身鏡の前で 自分の体にパンツを当てながら
口笛を吹きご機嫌そうに明日のパンツを選んでいるところだった。
王様 「明日は決戦……パンツも決戦用にせねばなるまい」
「必勝を祈願して白かな……赤かな……それとも紅白 迷うな〜」
ー魔王城 牢屋ー
月明かりが牢屋の中に入る。風の唸り、狼の遠吠えが聞こえる。
牢屋の中には人間の骨やネズミの死骸が落ちていて 悪臭が立ち込める。
その中にフラワー神父 牢屋の前に見張りが立ったままスヤスヤと寝ている。
神父 「ちゃんと話し合いましょう」
「戦いに何の意味があるのですか?」
「話し合えばわかり合えます」
見張り 「ハイ わかりました ドラ・ズ・・ムニャムニャ」と寝言でつぶやく。
神父 「おぉ、わかってくれるのですか……」
「神様は見てくれていますよ……」
見張りが寝ているとも知らず フラワー神父は一晩中説法をし続けるのであった。
こうして人類と魔王軍、運命を賭けた大決戦の前日 それぞれがそれぞれの想いを胸に眠れぬ夜を過ごすのだった。
お読みいただきありがとうございます。
次回は、魔王杯です。
第12話は、来週の月曜日05/11 20:00 公開予定です。よろしくお願いします。




